コミックナタリー PowerPush - 夜麻みゆき「刻の大地」

懐かしの名作が未収録作も含めた愛蔵版に! 夜麻みゆきが原点と未来を語るインタビュー

水彩は描き直しできないのがプレッシャーです

──カラーのデジタル作画は慣れましたか? 夜麻先生のカラーと言えば、水彩のイメージが強いですが……。

水彩のほうが好きだという意見は多々いただきますね。でも描き直しできないというのがすごくプレッシャーだし、水彩は描くのに時間がかかるんです。機会があれば描きたいなとは思うんですけど、よほどのことがない限り水彩はチャレンジしないかなあと思います。やはり腕も衰えましたし。

同人誌「REVERY EARTH ILLUSTRATION BOOK2」より。

──そうですか? 最近、同人誌に水彩で描かれていたウリックのカットは美しかったですけど……。

いや、やっぱり自分のイメージしているものとなかなか近づかないですね……。昔は楽しいから描こうという感じだったので自然にできてたと思うんですが、いまは失敗してはいけないとか、上手に描かなきゃいけないという気持ちが先立ってしまって。それでちょっと描けなくなってしまったのかもしれません。

──夜麻先生のタッチは「刻の大地」連載当時といまとでは大分変わられたと感じたのですが、それは意識して変えられたんでしょうか?

はい。編集さんに絵が古いとご指摘をいただいたんです。「みなさん作品の内容に合わせて自分の絵柄も変えているので、そういった努力をしてみてくれませんか?」とご提案をいただいたので、自分なりに変化しないといけないなと思い、意識的に変えてみました。線を細くしてみたり。

──なるほど。確かに昔の絵は線の強弱がありますね。

そうなんです。自分らしいと言いますか、自分が描きやすいのはそういう強弱のある絵なんですが、それがいまは合わないんだなと思いまして。

「Kanon Texte」は絵柄を変えて描き直すつもり

──「Kanon Texte」はいつごろから構想されていたんでしょうか。

5年ほど前ですね。

──そんなに前から!

はい。その頃は、5年ほどマンガから離れていてまた描きはじめようというときだったので、そのリハビリに「Kanon Texte」は構想が大きすぎると編集さんに言われまして。それでショートストーリーのようなものを描いて少しずつ慣れていきましょうという話になり、月刊Gファンタジー(スクウェア・エニックス)で「トリフィルファンタジア」を連載しはじめたんです。

「刻の大地」より。イールズオーブァが住んでいた遺跡。

──そうだったんですね。「Kanon Texte」を拝読させていただいて、登場する遺跡が「刻の大地」でイールズオーブァが住んでいた遺跡と似ているなと思いました。

なんと! よくお気付きになられましたね!

──オッツ・キイムと世界観がつながっているのかなと思ったのですが。ヒューマノイドの存在も、イールズオーブァが同じ顔の女性を生み出す感じに似ているなと思ったり。

うふふ、どうでしょう。正直いま、汗が出そうです(笑)。「Kanon Texte」はまた自分の描きやすい絵で描き直そうと思っています。絵が変わるだけで、物語や展開は一緒です。で、読者の方にどちらの絵が好みかお尋ねしたいなと思っていて。

──それは楽しみですね。

あと「Kanon Texte」のショートストーリーも同人で出そうと思っています。早くても来年のはじめに描いて、来年の夏コミには出したいですね。落選したら悲しいので、みなさん念を送っておいてください(笑)。「Kanon Texte」も、「刻の大地」復刊とともどもよろしくお願いします。作画のネット配信もまた行いたいので、Twitterやブログでチェックしていただければ幸いです。

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あらすじ

すべての魔物(モンスター)を束ねる悪の権化・邪神竜ディアボロス。

勇者ザードにより倒されたはずのディアボロスは時を経て復活、魔物たちは凶悪化して再び人間を襲うようになっていた。

真実を確かめるべくディアボロスの元へ向かったザードだが、彼が帰ってくることは二度となかった──。

それから3年後…。ザードの友人である聖騎士カイは、ザードが言い残した「人と魔物の共存」が可能なのか、その答えを求め、あてのない旅を続けていた。

ひょんなことから、魔物と心を通わせる不思議な少年・十六夜(いざよい)と、ディアボロスにより滅ぼされた種族“ダークエルフ”の生き残りであるジェンドと出会ったカイ。いつしか旅の仲間となった3人は、それぞれの目的のため、ディアボロスの居場所を探す旅に出発した。

夜麻みゆき(やまみゆき)
夜麻みゆき

大阪府出身。代表作は異世界オッツ・キイムを舞台とした一連のファンタジー作品「レヴァリアース」「幻想大陸」「刻の大地」。著書に「トリフィルファンタジア」(全2巻、スクウェア・エニックス)などがある。2011年に新作読み切り「Kanon Texte」を発表するなど、現在も新作執筆に精力的に取り組んでいる。