コミックナタリー Power Push - 創刊5周年記念 月刊ヒーローズ

3カ月連続企画 第1回 白井勝也×糸井重里 対談

日刊、週刊で仕事をすること

“時代が求めるニューヒーロー”を続々輩出する、月刊ヒーローズ(ヒーローズ)。11月1日で創刊5周年を迎える同誌では、「ウルトラマン」の後日譚となる「ULTRAMAN」や、マンガ版「仮面ライダークウガ」、「鉄腕アトム」の誕生までを描く「アトム ザ・ビギニング」など、多くの“ヒーローマンガ”が連載されている。

創刊5周年を記念し、コミックナタリーでは3カ月にわたり連載企画を展開。新たにヒーローズの代表取締役社長に就任した白井勝也と、彼に縁のあるゲストとの対談を掲載していく。週刊少年サンデーの編集部に在籍後、1980年の創刊時より10年間、週刊ビッグコミックスピリッツ(ともに小学館)の編集長を務めた白井。第1回には1998年からWebサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」を運営し続ける糸井重里が登場し、マンガやお互いの活躍について語った。

取材・文 / 斎藤宣彦 撮影 / 佐藤友昭

最初の出会い

──おふたりが最初に出会ったのはいつか、覚えていらっしゃいますか。

左から白井勝也、糸井重里。

糸井重里 たぶん、上村一夫さんの行きつけのスナックに、白井さんが一緒にお見えになったんだと思います。

白井勝也 (四ツ谷の)ホワイトかな?

糸井 はい。階段を降りて、右に曲がった奥のところで会ってると思います。

白井 ははは、すごい覚えてるなあ(笑)。

──白井さんがビッグコミック編集部に所属していた頃、上村さんは「凍鶴」を連載されていましたね。1970年代後半でしょうか。

白井 そうだと思いますよ。上村さんは毎日飲んでる人だった。それに比べて僕はその当時一滴も飲んでないし、糸井さんも全然飲まなくて。

糸井 でもボトルはあったんです。

白井 僕もボトルはあった。ほかの人がみんなそれを飲むわけね。ホワイトは、これから世の中で弾けそうな人が集まった、梁山泊みたいなところだった。

糸井 あのとき白井さんは、若かったんでしょうね。僕も若かったですから。

白井 僕は30代後半くらい。

糸井 僕は30代になったばっかりくらいのときで。

白井 糸井さんと僕、いくつ違い? そもそもそれがわからない(笑)。

糸井 僕は今年68歳になります。

白井 僕が74歳になるから、6、7歳の差だね。

糸井 年齢、あんまり変わらないですね。その頃から今みたいな関係でしたよね(笑)。

今日、お気に入りのマンガ

白井 最近はマンガ読んでます? 読んでますよね。

糸井 はい。ただ、読んでいるマンガは(全体量からすると)偏らざるを得ないですけどね。僕にとってマンガを手に取るきっかけは、偶然街を歩いていて出会った人とお茶を飲むみたいなことなんです。

白井 ああ、作品との出会いはそういう形なんだ。

糸井 うわーっと流れる川の中にいて、「これとこれとこれ、よさそうだな」と掴んだものを見て、「ああ、いい。OK!」。そういう感じなんです。だから「拾った!」みたいな発見がうれしいですね。今面白いのは……今日の時点で一番面白いのは……。

白井 ははは(笑)。さすが「ほぼ日(ほぼ日刊イトイ新聞)」。

糸井重里

糸井 イシグロアヤコ(石黒亜矢子)さんが鉛筆で描かれたような「てんまると家族絵日記」というマンガがあります。これは西荻窪にあるURESICAっていう本と雑貨とギャラリーのお店と、そのオンラインショップだけで発売しているものなんです。4巻目がこの間出たんですけど、まあ見事なわけです。

白井 普通の書店さんで手に入ります?

糸井 いえ、売ってないんです。あと、9月に絵本作家のヒグチユウコさんが「ボリス絵日記」という本を出したんですが、それはマンガと言っていいのかどうかわからないのですが、マンガ家が持ってない力がやっぱりあると感じるんです。そういうどちらかというとメジャーではないところに僕が行っちゃうのは……なんでしょうか。「ほぼ日」では、よそが奪い合ってるものを取りに行くようなことを、してはだめだと思っているので、なおさらそうなるのかもしれないです。やっぱり、本当に僕が「好きだ」と思うところだけで動いている気がします。

白井 散歩の途中で出会う偶然が大切なんだな。糸井さんは深谷かほるさんの「夜廻り猫」を応援してるじゃないですか。

糸井 はい。

白井 これも偶然の出会いの中から見つけてきた作品なんだろうね。「ほぼ日」で著者のサイン会までやって応援してる。僕、この間サイン会に行ったんだよ。

糸井 (インタビュアーを見て)いるんですよ(笑)。

白井勝也

白井 全部「ほぼ日」のスタッフがやってて仰天した。すごい数の人が来て、深谷さんは1人ひとりにサインしてたね。ところが、僕は「夜廻り猫」を読んでみてもよくわからなかったんだよね、あんまり。でもこの間、高橋留美子さんに会ったとき「最近、何が面白かったですか?」って聞いたら「『夜廻り猫』がすっごい面白かったです」って言うんだよ。「この人が『すごく面白い』って言うのか!」と思って。僕のマンガを見る力が少し時代と合わなくなってきてるのかなって、自信を失うよね。糸井さん高橋さん、両者にとって一番のものをさ、僕があんまり面白くないっていうんだから。

糸井 いやー、あのジャンルは白井さんは触らなくていいんじゃないですか?

白井 触らないでいい?(笑)

──「夜廻り猫」は猫マンガなので、“猫感度”にもよるのではないでしょうか。 白井さんはそもそも猫はお好きですか?

白井 僕、猫全然ダメだから。

糸井 (笑)。深谷さんのメインの仕事はああいうスタイルの絵じゃないですよね。それこそ「ハガネの女」とか描かれていますし。そういう女性向けのジャンルは、いわば激烈な競争のある“レッドオーシャン” だと思うんです。そこから小舟に乗り出して「描きたいから描いてる」っていうマンガを探すのが、僕はやっぱり好きですね。

──深谷さんには東北を舞台にした「エデンの東北」という4コマ形式の代表作もありますね。

糸井 あれもよかったです。ただ、あのタッチで「夜廻り猫」を描くと、比べられるものが変わってしまうのかもしれません。「夜廻り猫」はどちらかというと細かいところをすっ飛ばして描きたいものを描いているから、完成度をもったほかのマンガと比べられなくなるんです。もともとは、手描きで1日1ページをTwitterにアップする形式で始められたものですから。そうすると、大勢にはつながらないけどちゃんとファンが「あ、見つけた!」ってうれしがってきますよね。そういう作品が僕は好きなんです。でも、メジャーな作品にも感心はするんですよ。社会をうねらせるような、そういうすごい作品で僕も育ったつもりですから。

月刊ヒーローズ創刊5周年特集 Index
第1回 糸井重里×白井勝也
第2回 樹林伸×白井勝也
第3回 高橋留美子×白井勝也
「月刊ヒーローズ11月号」/ 2016年10月1日発売 / 200円 / 小学館クリエイティブ
「月刊ヒーローズ11月号」
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糸井重里(イトイシゲサト)

1948年群馬県生まれ。「ほぼ日刊イトイ新聞」主宰。1971年にコピーライターとしてデビュー。「不思議、大好き。」「おいしい生活。」などの広告で知られ、作詞やエッセイ執筆、ゲーム制作など、幅広いジャンルでも活躍している。1998年にほぼ毎日更新のウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」を立ち上げてからは、同サイトでの活動に注力をしている。2016年6月には、犬や猫と人が親しくなるアプリ「ドコノコ」をリリースした。

白井勝也(シライカツヤ)

1942年生まれ。小学館最高顧問。1968年に小学館に入社し、少年サンデー編集部に配属され、「男組」(雁屋哲・池上遼一)、「まことちゃん」(楳図かずお)などを担当する。ビッグコミック副編集長を経て、1980年にはビッグコミックスピリッツの創刊編集長に就任。「めぞん一刻」(高橋留美子)、「美味しんぼ」(雁屋哲・花咲アキラ)などのヒット作を手がけ、創刊5年足らずで100万部雑誌に押し上げた。2016年、株式会社ヒーローズ代表取締役社長に就任。