霜降り明星の冠番組「霜降りバラエティ」(テレビ朝日系)で、せいやの肝入り企画「令和のアグネス・チャンを探せ」がスタート! 動画配信プラットフォームTELASA(テラサ)と連動しながら、長期にわたって白熱のオーディションの様子が余すところなく届けられる。
お笑いナタリーでは4時間以上に及んだ1次審査の収録後、霜降り明星の2人にこの企画の見どころを聞いた。せいや扮するJ.Y.Parkならぬ“セイ.Y. Park“がオーディションに懸ける思いとは。また番組の演出を手がける山本雅一プロデューサーにもインタビューを行うと、なあなあでは済まさない、霜降り明星の番組作りに対する姿勢が見えてきた。
取材・文 / 狩野有理
霜降り明星 インタビュー
国民を巻き込んでいくことを宣言します(せいや)
──「霜降りバラエティ」始まって以来の大型企画「令和のアグネス・チャンを探せ」がついに始動しました。改めてセイ.Y. Parkことせいやさんから企画の趣旨を教えていただけますか?
せいや 最近って女性ソロアイドルのスターがあまり出ていないじゃないですか。そこで、タイトルの通り“令和のアグネス・チャン”を発掘して、僕が作った歌でデビューしてもらいます。オーディションの過程もお見せすることで、彼女たちの不器用さや、「できない」っていうところも生々しく伝えていくつもりです。回を重ねるごとに彼女たちが成長していく姿に注目していただきたいと思っています。
──なるほど。気合いの入った企画だということを感じます。20名が参加した1回目のオーディションは4時間以上をかけて実施しましたが、率直にいかがでしたか?
粗品 僕は正直、アグネス・チャンのこと普通なんで、「いや令和のアグネス・チャンいらんけどな?」という気持ちです。探さんでいいんじゃないかと思いながら収録に参加していましたね。
せいや ……まず、今の相方の多くの失言に謝罪したいと思います。申し訳ありません。
粗品 え? 失言あった?
せいや 最初は僕も、楽しみではありつつ軽い気持ちでオーディションしていたんですよ。でも収録しているうちに「テレ朝の社運を懸けてやっている」という空気にどんどんなっていって。これは僕も真剣に取り組まないといけないなとスイッチが入りました。
粗品 そんな空気あった? 確かに関係者はいつもより多かったけど。
せいや 女性の人生を決めるわけですから、僕も本気でぶつかっていきたい。確実にこの企画からスターが生まれますんで。審査中、ペンを持つ手も震えてます。
──“令和の”アグネス・チャンさんを見つけるというコンセプトですが、審査のポイントは?
せいや 今、フォークソングブームやレトロブームがじわじわ来ていると思うので、70年代のよさを世間に先がけてこの番組から出していけたらなと思う次第でございます。
──審査基準で言うとどんなところになるでしょうか。
粗品 さっきから審査基準聞かれてんのにわけわからんこと答えてたやん、長文で。
せいや えー、審査基準はですね……。
粗品 審査基準を聞いとんねん、ずっと。質問聞いてないやん。
せいや ……うるさいな!
粗品 ごめんなさい。
──(笑)。
せいや すみません。審査基準はですね、これと言ってないんですよ。
粗品 ええ?
せいや 「アグネス・チャンを目指す」ということですけど、もちろんアグネス・チャンさんはオリジナルでいらっしゃいますから、アグネス・チャンさんくらいのスター性のある女性を見つけてテレビ朝日さんと一緒に売り出していきたいと思っています。
──ピンと来た人、ということですね。
せいや そうですね。あとは視聴者のみなさんの意見も取り入れて。どんどんこのオーディションを大きくして、国民を巻き込んでいくことを宣言します。
粗品 宣言すんの?(笑)
“テレビ”の枠で好き放題できているのがうれしい(粗品)
──粗品さんはこのオーディションに何を期待しますか?
粗品 え、僕がこの企画に期待することですか?
──はい。
粗品 ごめんなさいね。「はよ終わらんかなー」としか思っていなくて。
せいや おい!(笑)
──温度差がありますね(笑)。
粗品 最初は「霜降りバラエティ」の次回収録の打ち合わせをしたときに、「もう一個だけいいですか?」みたいな、「別件なんですけど」っていうノリで、この「令和のアグネス」企画をTELASA限定でやるっていうお話を聞いたんですよ。そのときは「いいじゃないですか」って返したんですが、そのあと僕抜きでせいやとスタッフさんが打ち合わせしたり、僕より先に入ってせいやだけ撮影したりしていて、気づいたときには地上波4本分になると……。
せいや あはははは!(笑)
粗品 とんでもないこと聞いて。「え? 俺の『霜降りバラエティ』でもあるけど?」っていう。なので、今はただ不安です。
──1次審査にはまだバラエティの収録に慣れていない新人さんも多くいらっしゃいましたよね。そういう方たちと霜降りのお二人がやり取りしているのも新鮮でした。
粗品 そうなんですよ。僕はもったいなあと思いますけどね。
──「もったいない」というのは?
粗品 ほかのオーディションとかでその初々しさを発揮する前にうちのへんてこオーディションに来てしまったのが。変なトラウマになっていなければいいですけど。純粋すぎて、僕としては申し訳ないなっていう感じです。
せいや まずは再び失言があったことを謝罪したいと思います。誠に申し訳ございませんでした。粗品氏が少し正気を保てていないみたいで。
粗品 「粗品氏」ってなんやねん。でも、いろんなタイプの女性タレントさんが続々と登場するので、青田買い的な見方はできるかもしれないですね。いずれ「ロンドンハーツ」とかで観ることになるかもしれないようなキャラクターの方もいましたから。
──「霜降りバラエティ」はこういった挑戦的な企画の中で奮闘するお二人や、粗品さんがボケてせいやさんがツッコむといった、いつもとは違う一面を発見できるのが魅力だと思います。番組に対して何か心がけていることはあるのでしょうか?
せいや 「この番組だからこうしよう」と意識していることは普段から特にはないんですが、「霜降りバラエティ」だと思いついたボケ全部言えるっていうのはありますね。先輩の番組ではボケを思いついても「邪魔になるかもな」と考えて自分から行かない場合もあるんですが、「霜バラ」は僕らの番組なので好き放題ボケられる。それが冠番組のいいところやなと思います。
粗品 僕も漫才ではツッコミですし、先輩の番組に出るときも自分から手を挙げてボケるような動きはあんまりしたことがなくて。この番組では自分からボケることもありますし、自由にやらせてもらっています。それも、“テレビ”という枠で自由にやれているのがうれしいです。コンビでやっているYouTubeもスタンス的には自由なんですけど、冠のテレビ番組、深夜のお笑い番組の枠で好き放題できていると思うと、やっぱり「霜降りバラエティ」は大切なレギュラー番組ですね。
山本雅一プロデューサー インタビュー
彼らはテレビマンと意見をぶつけ合って本番に臨み、
そして想定を越えてくる
──この番組は霜降り明星が東京に活動拠点を移したタイミングで始動した彼らの冠レギュラーです。お二人がやりたいことを自由にやっているのが魅力だと思うのですが、どういう流れで今のスタイルになったのでしょうか?
最初は僕たちスタッフが考えた企画をやってもらっていたんですが、あるときから粗品が自分の企画を書いて提案してくるようになったんです。それからは毎回収録のたびに話す時間を設けて、2人がやりたいことと僕たちがやりたいことをぶつけ合って何をやるか決めています。僕たちが企画を立てるときは、絶対に“誰でもできること”はやりません。粗品が焼肉屋の息子だから「焼肉屋ナオト」、せいやが折り紙を折れないから「せいやインポッシブル」など、2人にしかできないような内容にすることは常に心がけていて。さらに彼らがやりたいこと、といってもタイトルだけ聞いて「どうしようかな……」ってなるときもあるんですけど(笑)、2人のアイデアも聞いて、意見を出し合って成立させている。本当に一緒に作っている感じですね。
──お二人が手を抜くことなくこの番組に臨んでいることがわかるお話ですね。
1000字くらい書いた企画案のLINEが来るときもあります(笑)。僕らが2人にしかできないことを提案するのと同じで、2人もこの番組でしかやらないっていうことにチャレンジしてくれているのもありがたいです。粗品はほかの番組でゲームしないし、虫の写真とか渡したらめっちゃ怒ると思うんですよ。せいやもほかの番組ではバンジーをやっていないですし、家も買わない(せいやは昨年10月29日放送回で実家を購入)。2人の一大事を披露する場に、この番組を選んでくれているのがうれしいです。
──お二人は「この番組でハゲてもいい」とおっしゃっていますよね。
火あぶりになってもいいって言ってました(笑)。「焼肉屋さんだから火に強いんで」って。
──(笑)。そのくらいの意気込みで番組を盛り上げようとしているわけですね。
打ち合わせも、人によっては和やかに台本を説明して「お願いします」で終わりということもあって。でも霜降り明星の場合は引っかかることが少しでもあったらスルーしないでちゃんと言ってくる。ただ、僕たちスタッフサイドの意図もありますから、そこでディスカッションになって空気はピリッとするんですけど、彼らはそっちのほうが納得して打ち込めるんだと思います。
──なんとなく「やってください」だけでは許してくれない。
許してくれなかったです。最初は僕、ヘラヘラしていれば終わると思っていたんですけど終わらなかった(笑)。例えばベテランの方だったら現場で変えてくるっていうこともあると思うんです。でも彼らはちゃんとテレビマンと接して本番に臨むんですよね。そういう話し合いを経て、やる意味を理解した上でやってくれるから企画がコケることがないんだと思います。しかもカメラが回ったら僕らの想定を平気で超えてくるので、恐ろしいです。
──山本さんは「テレビ千鳥」をはじめ、さまざまなバラエティ番組に携わっていますが、「霜バラ」の収録ならではの楽しみとはなんでしょうか?
なぜかめっちゃ疲れるんですよ、「霜バラ」って。体がこんなに疲れる番組、ほかにあんまりないんですけど。それは悪い意味ではなくて、緊張感がある番組をやれているのは僕の中で楽しみではありますね。
──最後に、一緒に仕事をしてきた山本さんが思う霜降り明星の魅力を聞かせてください。
実力や雰囲気が、実年齢より10歳くらい上の芸人さんのようだなと感じることが多々あります。どっちもボケもツッコミもできて、器用なだけなのかと思ったら2人共ちょっと欠落している部分があって、それを笑いに変えられる。本当に強いコンビですよね。あと、成長スピードが半端ない芸人さんだなと。「令和のアグネス・チャンを探せ」の第1回オーディションでも、後半に何かを掴んだのか、新しいボケとか掛け合いが生まれていて。
──1回の収録の中でも成長している。
常に面白くなっていっている気がしますね。
「令和のアグネス・チャンを探せ」
霜降り明星せいやが敬愛するアグネス・チャンのようなスターを発掘し、せいや作詞・作曲でデビューさせるまでを追う長期企画。さまざまな芸能事務所からその原石を募り、J.Y.Parkならぬ“セイ.Y. Park”直々のVTR審査を通過した20名の女性が1次審査に挑んだ。彼女たちはアグネス・チャンの楽曲歌唱のほか、アグネスを思わせる特技で必死にアピール。あまりの緊張で歌詞やメロディを忘れてしまったり、合格した安堵や不合格だった悔しさで泣き出してしまうのは彼女たちが真剣だからこそ。地上波ではそんなオーディションの様子と、デビューまでの道のりを4回にわたって放送し、TELASAでは参加者のインタビューなど裏側も楽しめる。