ナタリー PowerPush - 花澤香菜

等身大の「私自身」を表現した25の歌

浅沼晋太郎が描いた「黄色いライン」の秘密

──新たな作家陣としては、「Eeny, meeny, miny, moe」の作詞を手がけた浅沼晋太郎さんの参加が意外なところでした。お2人は声優として2006年放送のテレビアニメ「ゼーガペイン」で共演して以来の仲ですよね。

左から花澤香菜、北川勝利。

花澤 はい。初めてヒロインの役をやらせていただいた作品で、浅沼さんも初めての主人公というところから。私が17歳のとき以来のお付き合いですね。歌詞の中にも、浅沼さんと私にしかわからないようなことがけっこう入っていたりして(笑)。例えば「台詞の上からなぞった ペンの黄色いライン」は……私、その頃台本には自分のセリフに黄色いマーカーで線を付けてたんです。それを隣でよく見られてたみたいで(笑)。私は歌詞を読んですぐにあのときの風景を思い浮かべたんですけど、ほかの人には絶対わからないですよね。

北川 その2人だけにしかわからない風景が描かれているのが、この曲の重要なポイントなんです。

花澤 青春時代真っただ中の頃に知り合った方なので、歌詞でいろんなことを思い出させてくれて……。高校時代の大事なお友達のことも描かれてるんです。

──10代の頃に声優として同じブースにいた人と、今こうして曲を一緒に作っているというのも不思議な感覚ですよね。

花澤 浅沼さんはその前から脚本や舞台の仕事もされていて、その後は私のオリジナルキャラクターのドラマCDの脚本を書いてくださったりとか(笑)、いろんな形でご一緒させていただいてますけど、作詞家としてもこんな才能があるんだなって改めて。

──そしてアルバム終盤の「last contrast」はBase Ball Bearの小出祐介さんの書き下ろしで。この曲は特に前作までにはなかったサウンドだから、花澤さんにとっては大きなチャレンジだったのではないかと。

花澤 小出さんは「claire」を聴いてくださっていたみたいで、そのあとご自身のミニアルバムでコラボレーションのオファーをいただいたんです(2013年6月発売のBase Ball Bear「THE CUT」収録曲「恋する感覚 -feat. 花澤香菜-」。参照:Base Ball Bear新作にRHYMESTER、花澤香菜とのコラボ曲)。あの曲も大好きだったので、今回新しい作家さんの中に小出さんの名前が候補に上がって。

──サウンド的な部分は小出さんにお任せで?

北川 一応事前に「こんな感じがいいです」と打ち合わせしつつ。歌詞については小出くんのほうからいろいろ聞いておきたいからと、小出くんの質問タイムが始まって(笑)。

花澤 インタビュータイム(笑)。いろいろ質問されました。

──北川さんが作るものとはまた別のギターロックというか。

北川 そうですね。音楽的には小出くんの得意なもの、好きなもので、こちらとしてもお願いしたい要素だったので。レコーディングもすごく面白かったですね。小出くんは歌録りのときも来てくれて、歌のディレクションまで関わってもらいました。

あー、それも言いたい!

──北川さん作曲の14曲だけでもアルバム1枚分のボリュームですし(笑)、バリエーションに富んでますよね。「Waltz for Praha」みたいな曲を歌わせたら今花澤さんの右に出る者はいないという感じもありますが。

北川 この曲もすごく面白くて。特典映像の撮影でプラハとチェスキークルムロフに行くことは決まってたんだけど、曲を作ったのはその前なんです。行くって聞いたから「じゃあプラハの曲を書きます」って急遽、なんとなくイメージしながら作った曲で。

花澤 これをプラハに行ったあとに聴いてみたら、もう、プラハなんですよ! 映像には「Waltz for Praha」を歌っているようなイメージシーンも入っているんですけど、ホントにぴったりで。北川さんすごいなーと思いました(笑)。

──終盤の「花びら」は途中にインサートされる西加奈子さんの小説「さくら」の朗読がすごく印象的です。あの曲はなぜ朗読を入れようと思ったんですか?

花澤香菜

花澤 私は読書が好きで、中でも西加奈子さんの作品が大好きなんです。等身大の自分を表現するのに、好きで読んできた本のことを入れるのはいいなと思ったし、声優である私を表現できるものは朗読なんじゃないかなって。できれば入れさせてほしいと私からお願いして、こういう形になりました。

──花澤さんの音楽プロジェクトには“ヘッドフォン推奨”というテーマがありますけど、この曲をヘッドフォンで聴いていると、アルバムを通した全体の流れの中で唐突に“声”が現れて不思議な気持ちになるんですよね。

北川 しかしこうやって話していくと、1曲ずついろんなエピソードがあるから時間が足りないなあ(笑)。この曲もアレンジについての細かい話とかすごくしたい。

──いや、ホントそうなんですよ。なにせ25曲あるので(笑)。

北川 「claire」から歌詞が続いている話とか。

花澤 あー、それも言いたい!(笑)

──お話しください(笑)。

花澤 「スタッカート」の主人公が今こうなって、246を歩いていた女の子がね、みたいな。あと「25 Hours a Day」ではコーラスにいろんな方が参加してるんです。岩里さんにも歌ってもらったりして(笑)。

北川 この曲には本来関わってない沖井(礼二)くん、清浦夏実ちゃんなんかも参加してる。ちょっと別で補足説明も入れたいね。

もっともっと歌っていきたい

──花澤香菜という人をイメージして作り上げられた25曲の作品が、25歳の誕生日に合わせてリリースされることを、花澤さん本人はどういう思いで受け止めているのでしょうか。

花澤 いやあ、もう恵まれすぎていて何も言えないですね。ワンマンライブが終わったとき「こんなに楽しく歌えるんだ」という感覚があって、それから臨んだレコーディングは気持ちの上で大きく違っていて。ということは、このアルバムでもう一度ライブをやったらもっと変わるのかもしれないなって思ったりして。だからホントに早くライブがやりたいですね。

──初ワンマンまでの一連の流れで少しずつ“花澤香菜の音楽”が形作られてきましたが、このアルバムは音楽活動も大事な軸の1つとして進めていくという宣言として捉えてもいいのでしょうか?

花澤 そうですね。音楽をより自分に近付けてくれる作品になったので、もっともっと歌っていきたいと思います。

──北川さんも25曲のプロデュースは大変だったと思うんですけど、さらに「まだこのパターンがある」とか「これが歌えるはず」とか、新しい発見があったんじゃないかと。

北川 うん、ありますね。次は3枚組かなあ。

花澤 どんどん増えていくんですか!?(笑)

左から花澤香菜、北川勝利。
ニューアルバム「25」 / 2014年2月26日発売 / アニプレックス
初回限定盤 [CD2枚組+Blu-ray] / 4725円 / SVWC-7988~90
通常盤 [CD2枚組] / 3990円 / SVWC-7991~2
DISC 1
  1. バースデイ
  2. 25 Hours a Day
  3. Brand New Days
  4. 恋する惑星
  5. マラソン
  6. YESTERDAY BOYFRIEND
  7. 無邪気なキミと真夏のメロディ
  8. Make a Difference
  9. 旅立つ彼女と古い背表紙
  10. Summer Sunset
  11. 同心円上のディスタンス
  12. flattery?
  13. Waltz for Praha
DISC 2
  1. 片思いが世界を救う
  2. ダエンケイ
  3. パパ、アイ・ラブ・ユー!!
  4. Eeny, meeny, miny, moe
  5. 粉雪
  6. Young Oh! Oh!
  7. 曖昧な世界
  8. 真夜中の秘密会議
  9. Merry Go Round
  10. last contrast
  11. 花びら
  12. Good Conversation
初回限定盤Blu-ray DISC収録内容
  • 「I wish the door to the dream does not close.」(16分)
花澤香菜(はなざわかな)

花澤香菜

1989年2月25日生まれ、東京都出身の声優。2006年放送の「ゼーガペイン」で初のヒロインとなるカミナギ・リョーコ役を演じ、2007年には「月面兎兵器ミーナ」「スケッチブック ~full color's~」「ぽてまよ」といった作品で次々と主要キャラクター役に抜擢された。その後も「こばと。」「化物語」「海月姫」などの人気アニメでヒロインを演じるかたわら、多数の作品でキャラクターソングを歌い、2011年放送の「ロウきゅーぶ!」では声優ユニット「RO-KYU-BU!」のメンバーとしても活躍。2012年4月にはシングル「星空☆ディスティネーション」でソロデビューを果たした。2013年2月20日には1stフルアルバム「claire」を発表し、同年3月には大阪・NHK大阪ホール、東京・渋谷公会堂にて初のワンマンライブを行い、いずれも大成功に収めた。同年12月に発売された5thシングル「恋する惑星」に続き、2014年2月には25曲入りの2枚組アルバム「25」をリリース。4月からは4都市を回る初の全国ツアー「花澤香菜 live 2014 "25"」を行う。