炎炎ノ消防隊 大久保篤×宮野真守(「ソウルイーター」デス・ザ・キッド役)対談

数年ぶりの邂逅に友情の炎がほとばしる! アニメ「ソウルイーター」の裏話もきっちりかっちり完璧に

「ソウルイーター」は月、「炎炎ノ消防隊」は太陽

──「炎炎ノ消防隊」は、前作の「ソウルイーター」と雰囲気が違いますね。

大久保 「ソウル」は命がすごく軽いというか……軽いわけじゃないんだけど、死神が題材だから、生き死にありきなんですよ。今回の「炎炎」は命の扱いが少し重いです。

──それはなぜでしょう?

大久保 「ソウル」を描いていた頃に流行っていた作品を見てみると、主人公が「不殺」を貫いていたり、命の描写を大事にしたり、いちいち説明臭いような流れがあるように思えたんです。だから逆に「ソウル」は、少年マンガでエンタテインメントなんだからあんまり説教臭くなく、痛快に敵をやっつけようと思ったんですよ。でも、今はデスゲームもののような作品もいっぱいあって、けっこう命が軽く描かれることが多いと思いました。じゃあもっと命を大事にしようと。

宮野真守

宮野 天邪鬼(笑)。そういう人と違うことをやろうっていう部分が独自のアイデアにつながってるんでしょうね。

大久保 「ソウル」を始めた頃、少年マンガで女の子が主人公っていうのも少なかったと思うし、ツインテールの女の子で主役級のキャラもあまり見かけなかった。あんまり人がやらないことをやろうというのは考えていました。そして「炎炎ノ消防隊」では「ソウル」でやらなかったことをやろう、と。

──それはどういう部分ですか?

大久保 イメージ的には「ソウル」が月で「炎炎」は太陽なんです。能力も太陽の光のイメージだったり、相反する作品というか。パンク的なノリと勢いを重視した「ソウル」と、より丁寧にストーリーや謎を作り込んだ「炎炎」っていう対比もありますね。

宮野 最初は“焔ビト”をバンバン倒す話だと思ったんだけど、早い段階で、“焔ビト”が人の手でも作られてることがわかって。その謎を追求するほうへ物語がシフトしましたよね。

オウビとヒナワが信頼を結ぶきっかけになるエピソードが描かれた。

大久保 じっくり前フリするよりも、早くメインストーリーに入ったほうが親切なのかなーと思って。最近は、読者がマンガに求める展開のスピードが速くなっていると思うんですよ。「ソウル」もストーリー部分をある意味置いておいて、最初にとにかくいいところをバンバン出していくことを意識したんです。月刊誌(「ソウルイーター」は月刊少年ガンガンで連載されていた)って出るまでに間があるので、ゆっくりやると時間が空きすぎちゃうんですよね。痛快なアクションなので余計なことはやらずに、主人公たちに「行け、倒してこい!」っていう感じで(笑)。「炎炎」はマガジンで週刊誌のテンポ感を活かしつつ割とじっくりストーリーを描けて楽しいです。中隊長と大隊長の回想なんて、「ソウル」じゃ絶対入れてないですよ(笑)。

宮野 面白いですね、月刊と週刊の違いって。

大久保 週刊誌だと、「毎回引きを作る」のがいいとされています。でも僕はそれだけだと嫌で……単行本で読むと、引きが連続しちゃうじゃないですか。引きは作るけど、毎回は嫌。引きの重要性もわかってるし、アンケートの反応がいいのもわかるんだけど、単行本でリズムが単調になるから「嫌です!」って(笑)。

──大久保さんは週刊連載は初めてだと思いますが、やはり大変ですか?

大久保 やってみて思ったんですが、むしろリズムとしては週刊のほうがやりやすいです。ページあたりにかける作画時間が変わるわけではないので、週刊のほうが、1話のページ数は少ないし、定期的に締め切りがきて程よくペースができます。僕は週刊連載のアシスタントに入っていたのでペースもわかっていたことも大きいですね。月刊は仕事をしていない時間が長くて、その間にエンジンが冷え切っちゃって(笑)。そこからエンジンをかけて締め切りまでに週刊の倍近いページを仕上げなきゃいけないので、割と大変なんですよね。ダラけずにリズムが作れるぶん、週刊の方がやりやすいです。体調を崩す余裕はないですけどね(笑)。

男ばっかりの温泉回はうれしい?

第1特殊消防隊のタマキは“ラッキースケべられ”という体質。タマキを前にすると、男性キャラは意図していないのにアクシデントが起こりスケべなことをしてしまう。

宮野 僕はタマキがすごく面白いキャラだと思いました。「ラッキースケベられ体質」って、新しいですよ。あんな発想、出てこないですよ普通は(笑)。

大久保 「ラッキースケベ」っていうのはよくあるんだけど、逆にしたら面白いなと……。

宮野 やっぱり天邪鬼だ(笑)。

大久保 最初はアイリスの特性になるはずだったんですよ。でも隊内にあの体質がいると邪魔だった(笑)。「アンラッキースケベ」とどっちにするか担当さんと打ち合わせしましたね。

宮野 いや、断然「スケベられ」でしょう! そうそう、アイリスもタマキもですけど、「炎炎」は女の子がかわいいですね。

大久保 ありがとうございます! でも、僕はずっと「女の子キャラ苦手!」って言ってるんですよ。男は勢いでオラーッて描けるんだけど(笑)。

宮野 ああ、わかった! ちゃんとかわいく描かなきゃいけないのがつらいんでしょ?

大久保 そうそう(笑)。スケベなシーンを描くときでも、「キレイに描こう」「デッサン狂わないように」「ちゃんとかわいいかな?」っていろいろ考えてしまって……。描いているとき、僕自身には全然スケベな気持ちなんてないんですよ!(笑)

宮野 読者に喜んでもらうために……。

大久保 そうです。(「ソウルイーター」外伝の)「ソウルイーターノット!」は、実はそんな自分に対する枷がテーマでもありました。女の子しかいないマンガを描いたらどんなにつらいだろうって……(笑)。

宮野 そうだったんだ! 天邪鬼と言うか、ストイックですね(笑)。「炎炎」で今後描きたいシーンはありますか?

個性豊かな大隊長たち。

大久保 今後は新たに判明した敵との戦いが本格化します! でもバトルが多くなると、日常のゆるい話も描きたくなるんですよ。火がいっぱい登場する世界観だから、温泉が湧いてるんじゃね、という話は担当さんとしてるんですけど。

宮野 ハダカ回が作りやすそうですね!

大久保 男のハダカばっかり描こうかな(笑)。

宮野 ムキムキの!

大久保 消防士が肉体美を披露するカレンダーあるじゃないですか。ああいうのを作ろうって話してて。

宮野 見たい! 作ろう作ろう(笑)。それはそれとして、温泉回は期待してます(笑)。

大久保 男ばっかりだけどね(笑)。でもそういうのって、女性読者的にはどうなんでしょうね。ムキムキの男ばっかりだとうれしいのかな?

宮野 見たい人はいるんじゃないかなあ……。

──誰と誰が温泉に浸かってるかが重要なのかもしれません。

大久保 アーサーと火縄とかどうかな……何を話すんだろう(笑)。

宮野 桜備とシンラなんか、熱い話をしてそうですね。父親と息子みたいな感じで……。

第8特殊消防隊のメンバー。

大久保 そうだね! 主要キャラは家族を想定してるんです。桜備がお父さん、火縄がお母さん、マキがお姉さん、アイリスが妹で……アーサーがペットの犬(笑)。

宮野 ああ、犬だわあ……おバカな犬(笑)。番犬としては役に立つでしょうね。

大久保 シンラがバカじゃなくてけっこう大人なんで、アーサーはそういうポジションだと、面白いかなと思って(笑)。

大久保篤「炎炎ノ消防隊⑥」2016年12月16日発売 / 講談社
「炎炎ノ消防隊⑥」表紙
コミック / 463円
コミック 限定版 / 1404円
Kindle版 / 432円

桜備vs.紅丸! 大隊長決戦!! 狡猾な伝導者一味の能力により、誤解が誤解を呼び、衝突する両雄! 互いに譲れぬ対決の行方は!? 続々と解放される敵軍の能力に、浅草の町は大混乱! 燃え上がる町と白装束の猛攻に、第8は!? 第7は!? シンラたちに解決の術は──!? 現れる新たなる“焔ビト”! 目を覚ますシンラの深淵なる炎! 灼熱の浅草編、決着の時!! 6巻の帯には宮野真守&デス・ザ・キッドの推薦コメント掲載!

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大久保篤(オオクボアツシ)

2001年に「一善の骨」でデビュー。「ソウルイーター」は月刊少年ガンガン2004年6月号(スクウェア・エニックス)より約9年にわたり連載され、テレビアニメ化も果たした。その後、「ソウルイーター」の外伝である「ソウルイーターノット!」を同誌2011年2月号より連載し、2014年にテレビアニメ化。2015年より週刊少年マガジン(講談社)にて「炎炎ノ消防隊」を連載中。

宮野真守(ミヤノマモル)
宮野真守

1983年6月8日、埼玉県生まれの声優、俳優、歌手。7歳から劇団ひまわりに所属し、子役として活動を始める。声優としてのデビューは2001年放送のNHK海外ドラマ「私はケイトリン」グリフェン役。以降、アニメ、ゲーム、洋画吹替など幅広く活躍。また、歌手としても2008年にシングル「Discovery」で、キングレコードよりアーティストデビューを果たし、2016年は「HOW CLOSE YOU ARE」「SHOUT!」「テンペスト」「The Birth」と計4枚のシングルをリリース。また、自身最大規模となるライブツアーを行い、横浜アリーナにてツアーファイナルとなる2days公演を大成功におさめた。夏には東京・帝国劇場で上演されたミュージカル「王家の紋章」に出演し、新たな一面を見せた。