鈴木啓太×ソニー完全ワイヤレスイヤホン WF-1000XM5|「細部まで妥協なく徹底的にデザインされている」

「Tokyo Midtown Award 2008 審査員特別賞」を受賞した富士山グラスなどの日用品から、「ローレル賞2019」を受賞した「相模鉄道20000系」などの公共プロジェクトまで、幅広い分野で活躍するプロダクトデザイナー・鈴木啓太。現在「グッドデザイン賞」審査委員や東京藝術大学デザイン科ゲスト講師を務める彼は、日本を代表するプロダクトデザイナーの1人と言っても過言ではないだろう。

音楽ナタリーではそんな鈴木に、新たに発売されるソニーの完全ワイヤレスイヤホン「WF-1000XM5」を体験してもらう企画を展開。「プロが選んだ、ソニーのハイスペックサウンドで、ワンランク上の自分へ」をコンセプトにした本製品の魅力について聞いたところ、一般ユーザーが気付かないような細部にまでこだわったソニーのすごさを、プロダクトデザイナーならではの着眼点で語ってくれた。

取材・文 / ナカニシキュウ撮影 / 森好弘ヘアメイク / Mayuko Shirouzu

「WF-1000XM5」

ソニー「WF-1000XM5」

世界最高のノイズキャンセリング(※1)を搭載した完全ワイヤレスイヤホン。LDACコーデックに対応しており、ハイレゾ音質(※2)も高音質に再生できるだけでなく、あらゆる圧縮音源がイヤホン側でハイレゾ級(※3)にアップスケーリングされる。ソニー史上最高クラスの通話品質(※4)を誇り、音や人の声が気になる環境下でも正確かつクリアに集音するため快適な通話が可能。装着性と機能性を兼ね備えつつ、極限まで小型化したボディも特徴で、マルチポイント接続にも対応しているので仕事の現場でもプライベートでも活躍できる。

※1 左右独立型ワイヤレスノイズキャンセリングヘッドホン市場において。2023年4月10日時点。ソニー調べ。電子情報技術産業協会(JEITA)基準に則る。
※2 ハイレゾワイヤレス。ハイレゾコンテンツをLDACコーデックで最大転送速度990kbpsで伝送する場合。「Headphones Connect」アプリから操作が必要です。
※3 DSEE Extreme ON時にCDやMP3などの圧縮音源をSBC / AAC / LDACのコーデックでBluetooth再生する際、最大96kHz / 24bitまで拡張(再生機器の仕様によっては圧縮音源をLDACで伝送する場合でもDSEE Extremeが無効になる場合があります)。
※4 ソニー完全ワイヤレス史上最高通話品質。2023年7月25日時点。ソニー調べ。

明日捨てられるものは作りたくない

──まず、鈴木さんがプロダクトデザイナーを志したきっかけを伺えますか?

振り返ると、子供の頃からモノが大好きでした。祖父が美術品の収集をしていたこともあって、環境的に「モノを見て感動する」という機会が多かったんです。なので自分でも、身の回りにあるいろんなものにちょっとした加工を施して友達や家族にプレゼントする、ということをよくしていまして。向こうにしてみればいらないプレゼントだったと思いますが(笑)。

──(笑)。例えばどんなものを?

本当にくだらないものですが……木を使ったゲームとか、割り箸を何本も使ったカラクリ細工とか。そのことが、今やっていることにそのままつながっていますね。“何かを考え工夫してモノを作る”という行為が自分のデザインの原点であって、それを今もずっとやり続けているんだと思います。

鈴木啓太

──特に影響を受けたデザイナーはいますか?

その質問はちょっと難しくてですね……(笑)。いわゆるデザイナーとして皆さんに認識されている方であればチャールズ・イームズや柳宗理さんなどの名前を挙げることもできますが、「特にこの人」というのは実はあまりいなくて。中学生の頃に椅子のデザインに興味を持って、一時期はいろんなデザイナーの手がけた椅子を買い集めました。なので、どちらかと言うと家具などから影響を受けていたところはあります。

──やはり生活に密着したデザインに一貫して興味があるわけですね。

そうですね。アートとして飾って鑑賞するよりも、もっと実用性のあるもの。人の手に直接触れて使われるものを作ることにずっとワクワクしてきましたし、自分の興味はずっとそこにありました。

──実際にデザインを考えるときは、どんなことを意識していますか?

ビジュアルであったり機能性であったり、いろいろな方向性で考えていくわけですが……絶対に外さないようにこだわっているポイントは、やはり使いやすさ、使っているときの心地よさ。どれだけ面白く派手なデザインであっても、使いにくかったら10年後、ましては100年後の未来に残っていかない。例えば僕が手がけた「富士山グラス」もそうですが、できるだけ皆さんに愛着を持って使ってもらいたいんです。明日捨てられてしまうようなものは、作りたくないと思っています。

──それは例えば、相模鉄道20000系や12000系のような鉄道車両でも同じ?

同じですね。あのときはスタジオの中に原寸大の車両模型を作って、実際の使い勝手をスタッフみんなで試しながらデザインしていくというやり方をしました。

──それくらい、とにかくユーザー目線でものを作ることにこだわっていると。

そうです。やはり本当に使ってもらえる生き生きとしたものを生み出したいですし、使った人が「いいな」「楽しいな」「うれしいな」というポジティブな感情になれるものを作りたいですから。

鈴木啓太
「WF-1000XM5」
「WF-1000XM5」

より人に近付いたデザイン

──今回、そんな鈴木さんにソニーの新しいイヤホン製品「WF-1000XM5」をお試しいただきました。まずは、やはりプロダクトデザインの観点でどうお感じになったかを伺いたいです。

前モデルの「WF-1000XM4」と比べると、すごく角が取れた印象を受けました。形として物理的に丸くなったことに加え、河原の石のような丸みや柔らかさを帯びている形が、人の気分にもフィットするような。より人に近くなったデザインで、機械的に設計された製品というよりは、有機的な美しさがある。「優しくて、柔らかくて、使いやすそう」という、親密感を覚えるデザインですよね。さまざまな人に寄り添うという意味でも「丸くなった」デザインになっていると思います。

──ソニーの方によると、おっしゃったようにカドを取って丸みを持たせることで、全体の体積を減らしているんだそうです。本体はもちろんですが、充電ケースも含めてより小さく、より薄くするべく尽力されたようですね。

なるほど。それって口で言うのは簡単ですけど、実際は小さくするのってものすごく大変なんですよ。もちろんサイズが小さくなって重量も軽くなれば、それだけ輸送コストや使用するエネルギーも減らせるメリットがある。僕らの世界ではよく「空気を運ぶのはもったいない」という言い方をするくらい、エコロジー的な観点でも容積の無駄をなくすというのはとても重要な考え方です。でも、それが難しい(笑)。大量生産されるプロダクトで理想を叶えることは簡単ではなく、このイヤホンからもソニーさんのさまざまな苦労や工夫が伝わってくる。同じデザイナーとして、工夫の積み重ねに進化を感じますね。僕も着実に歴史を進化させていきたいと思っているので、そういった姿勢に共感するし、敬意を抱きます。

鈴木啓太

──ソニーさんから聞いたお話で僕が個人的に印象的だったのが、「音質がよくなるデザインを突き詰めた結果、マイクの出っ張りをなくしたり、シームレスな加工で本体サイズを小さくしたりした」というものでして。表面の凹凸が少なくなったことによって風切り音が軽減されるなど、見た目の美しさが機能性にも直結しているという。

やっぱり理に適った美しさってありますよね。例えば鳥のフォルムって、彼らの生態にとってものすごく理に適っているがゆえの美しさがある。……あと僕、これに感激したんです。L側の本体に小さな突起が付いていて、これを触ることで目で見なくても左右を判別できるようになっている。こういう気遣いがデザインの中にしっかり入っているのは素晴らしいなと。

──なるほど、デザイナーさんならではの着眼点ですね。

細かくてすみません(笑)。それにしても、よくこの形を導き出しましたよね。人の耳の形ってそれぞれ全然違うのに、実際に装着してみると密着感が高くて、異物感があまりない。さすが、イヤホンを熟知しているソニーならではですね。

──カラーや質感の部分に関してはいかがですか?

イヤホンも充電ケースもきれいな色ですよね。デザイナーが「この色、カッコよくない?」と押し付けがちな時代もありましたが、今はできるだけユーザーの暮らしに寄り添えるよう、余白を持たせたもの作りの方法が大切になっていると感じます。

「WF-1000XM5」

──余白?

「この製品はこう使って、こう楽しんでください」と強制するのではなく、自由度を持たせるということです。ユーザーが自分にとって心地がいいものや、ユーザーが介在する余地があるデザインが求められている今、この製品は絶妙にデザインされていますよね。いい意味であらゆる方の日常の一部になれるような、さりげなさがある。前モデルと比べて、引き算のデザインがうまくいっているのでは。そういった意味でこの「WF-1000XM5」の自然な色合いも、現代のユーザーが選びたくなる色になっていると思います。

──主張しすぎない色だから、ユーザーそれぞれの楽しみ方を許容してくれると。

それも真っ白や真っ黒ではなく、よく見ると違う色の粒子が細かく入っていて、自然物のような色合いになっていますよね。石や木といった自然物は1色ではなく、さまざまな色が組み合わさって、複雑だからこそ温かみのある色彩が生まれます。「どこまで顕微鏡で見ればいいんだろう?」というくらい細かいディテールですが、大切なこと。イヤホンのマット部分の質感もいいですし。

──そのマットな部分とツルッとした光沢部分に分かれているのは、タッチセンサーの領域を区別する意味もあるそうなんですが、2つがシームレスにつながっているところも相当なこだわりポイントであるようです。

なるほど。細部に至るまですごくソニーらしい。まさにソニーのオーディオ製品だなあと感じました。僕が思うソニー製品のイメージは、「質実剛健で、細部まで妥協なく徹底的にデザインされている」こと。くまなく見ていってもサボっているところがない、破綻しているところがない。モノだけでなくテクノロジーといった技術面でも、ソニーというブランドには確固たる「もの作り」への情熱を感じますね。