コミックナタリー Power Push - ニコ×ナタ(コミック)

「電波教師」東毅×「ブラクラ」広江礼威 苦楽をともにした盟友マンガ家対談

コミックナタリー読者に向けて、ニコニコ動画からセレクトした作品を紹介する「ニコ×ナタ(コミック版)」。今月はニコニコとコラボ企画を展開中の東毅「電波教師」にスポットを当てる。この「電波教師」、作中作の萌えアニメキャラとして登場するサンダース軍曹のデザインを、実は「ブラック・ラグーン」の広江礼威が手がけているという。片や軽快な学園コメディ、片や重厚なガンアクションを手がけるふたりの意外なコラボはどんな経緯で誕生したのか、この機会に話を聞いてみた。

第1話の無料配信をはじめ、イラスト・声優募集とユーザー参加型企画が進行中の「電波教師」、未読の人はこの特集を通じてその魅力に触れてみてほしい。

コラボその1 / 第1話を無料配信

東毅「電波教師」

ニコニコ静画では、週刊少年サンデー(小学館)で連載されている東毅「電波教師」の第1話を無料配信中。天才だが「やりたいことしかできない」怠け者のオタク教師・鑑純一郎が、持ち前の頭脳と趣味への情熱を活かしてトラブルを解決していく。ネットにアニメにゲームと、オタク文化を元にした小ネタの数々にも注目。

コラボその2 / 新キャラクターのデザインコンテスト

今後の電波教師に登場する、ハートマン兵長のデザインを投稿しよう

ハートマン兵長とは

「電波教師」に度々登場する、作中作の美少女アニメ「魔砲少女ぶら☆くら」のキャラクター。サンダース軍曹なる少女の相棒、という設定。

サンダース軍曹とは

鑑が愛してやまない「魔砲少女ぶら☆くら」の主人公。なんとそのキャラクターデザインを手がけたのは、「ブラック・ラグーン」の広江礼威!

絵師注目!ハートマン兵長のコンセプト
基本はサンダース軍曹の尻ぬぐい役/見た目はサンダース軍曹より年下/顔に傷/支配色は赤/何か「武器」を持っている/かわいいもの好きでいつもぬいぐるみを携帯
東&広江からのコメント(きまりごと)
とりあえず女性で/フィギュアにしやすい/服装や装備は自衛隊っぽい

コラボその3 / サンダース軍曹の声優オーディション

サンダース軍曹の声優を決めるオーディションをスマホアプリ「ニコルソン」で開催。選ばれた人は「電波教師」のPV出演権を獲得!

東毅&広江礼威インタビュー サンダース軍曹ができるまで

夜中にお願いしたら、朝にはイラストが届いてた

──サンダース軍曹なる、作中作の萌えアニメキャラをデザインしたのは広江さんとお聞きして驚きました。まずはその経緯からお伺い出来ればと。

広江 もともと僕と東さんは、お互い新人時代からの長い付き合いなんですよ。10年くらい前からよく顔を合わせてて。

 昔はお互い暇で、マンガ描き仲間で集まったりしてましたね。その中で僕と広江さんだけ延々ミリタリーの話で盛り上がってるという。

広江 「ドーベルマン刑事」(武論尊原作、平松伸二作画による70年代のアクションマンガ)がいかにぶっ飛んだ話か、とかね。

 そういう友達のよしみで広江さんにお願いをしました。サンダース軍曹が登場する作中作の「魔砲少女ぶら☆くら」も、元ネタは「ブラック・ラグーン」の巻末オマケマンガなんです。「もし『ブラック・ラグーン』が魔法少女ものだったら」みたいな回(単行本第2巻収録「魔法少女編」)が大好きで、それを引用させていただいて。そうしたらもう、「ついでにデザインもお願いしちゃおう!」と思い立ってしまいまして。

広江 締切まで1週間しかないという状況で言ってきましたよね。

 原稿描いてる最中に「急で申し訳ないんだけど……」と、ダメ元で夜中にメールを送りました。

広江 僕、こういうちびっこいロリキャラをあんまり描かないので、「描けたら送ります」ぐらいの返事をしたんですよ。

 そしたら朝にはものすごいクオリティのイラストが返ってきてたっていう(笑)。感動しましたね。

広江 なんか、こういう萌え絵、実は描きたかったっぽい。始めは落書き感覚でいたんですけど、いじくり回してたら面白くなってきちゃって。

 しかも色まで塗ってあって。塗ってくれなんてひと言も言ってないのにですよ? ノリノリで。

広江 いやいや、塗らないとトーン貼るときにわからないかなと思って!

上着は「フルメタル・ジャケット」のハートマン軍曹仕様、靴には抜き身のナイフ

──それこそプロの技ですね。東さんはサンダース軍曹のデザイン設定については何と伝えたのですか?

 大まかに、「銃を持ってる魔“砲”少女で、軍曹なんです」とだけお願いしました。それであの完成度ですから、崇めたい気持ちですよ。広江さんはどうやって描き進めていきましたか。

広江 最近ミリタリー系の萌えキャラは多いんで、まずどうやったら被らないかってことだけ考えてました。あとはそれっぽさを出そうと思って、軍曹だし上着は「フルメタル・ジャケット」(スタンリー・キューブリック監督のベトナム戦争映画)に登場するハートマン軍曹みたいな軍服にしようと。あと、海兵隊員ってよく靴にナイフ入れてるんですよね。それをアクセントにしてみました。

 このナイフ抜き身で入ってますからねえ。カバーとか付いてなくて、この子アブナイですよ(笑)。

広江 しかも目がチカチカする色合いでね。

 そして僕はこれを見てマンガに描いたわけですが、なかなか似せられず、担当さんには「可愛くない! 別物じゃん」とか言われる始末で。広江さんの絵は今回単行本にも載せてるので、これで再現の出来てなさが全読者にバレることになります。

──ちなみに「電波教師」第1話には、「魔砲少女ぶら☆くら」以外にも随所に「ブラック・ラグーン」ネタが散りばめられていますよね。

 「魔砲少女ぶら☆くら」の主題歌が「夢見る二丁拳銃」なのも、レヴィのふたつ名になってる二挺拳銃(トゥーハンド)から来てますしね。

広江 「ヒーローがいなければ、ヒーローになればいい」という台詞も、わかる人にはわかる小ネタだよね。

 (単行本第2巻で)ロックがレヴィに言う「ロビン・フッドがいねェなら、ロビン・フッドになればいい」という台詞がネタ元ですね。こういう設定のマンガなので、実際、現実にあるマンガ作品に出てくる台詞を引用したほうがリアリティがあると思いまして……。これもちゃんと広江さんに許可を得てるんですよ? 一部の読者には「パクりだパクりだ!」って言われちゃって(笑)。

広江 ははは。でも台詞の元ネタを知ってる人なら、よく読めばそれが遊びであることはわかるはずなんですけどね。