コミックナタリー PowerPush - 横槍メンゴ「クズの本懐」

祝・月刊ビッグガンガン創刊2周年!横槍メンゴ、憧れの大暮維人に会う

禁煙ブームに男気あふれる企画(大暮)

「シガレットアンソロジー」の扉ページ。

──横槍さんと大暮さんは「シガレットアンソロジー」にも参加されているということで、そのあたりのお話もお伺いできればと思います。これはさまざまな作家陣が月刊ビッグガンガン誌上でタバコをテーマにしたマンガやイラストを発表するという企画でした。

大暮 男気あふれる企画ですよね(笑)。

横槍 私も「このご時世に!?」とは思いましたけど、自分もタバコを吸ってるので「やるやる!」って感じでした。でもタバコって、マンガだと小道具で結構出てくるイメージだったので、あんまり現実の禁煙ブームとは結びつかなかったかな。「ONE PIECE」でもサンジが吸ってるし。

大暮 現実でもそうですけど、タバコって間が取れるじゃないですか。それだけでコマがひとつ埋まるという(笑)。すごくいい小道具ですよ。

横槍 大暮先生って、実際タバコ吸ってらっしゃるんですか?

大暮維人

大暮 ずっとラッキーストライクを吸ってて、しばらくしてキャスターにしたんですけど、もう5年くらい前にやめました。なんとなく吸わなくなった。昔はネームやるときはずっと吸ってたんですよ。最近ネーム中は、鉛筆をずっと小刀でコリコリ削りながら考えごとしてます。気づいたら鉛筆がなくなってる(笑)。

横槍 あはは(笑)。確かにネームのときはタバコないと無理だし、そういう人多いと思います。

──やっぱり考えごとをするときには必要なアイテムですか?

横槍 タバコって麻痺させるというか、考え過ぎないようにする物質なので、余計なものをスッと消してくれるというか。考えがクリーンになるんです。逆にタバコ一切吸わないで考えると、アイデアはどんどん出てくるんだけどまとまらなかったり。

大暮 なるほどなー。確かに最近、脇道ばっかり気になるんですよ。ほんとは本筋をやらなきゃいけないって分かってるのに……。いいこと聞いたような気がするな(笑)。

いつかアナログに戻りたい(横槍)

──おふたりが「シガレットアンソロジー」に描かれた作品って、どちらも男の影響を受けて女がタバコを吸うところが共通していると思いました。

横槍メンゴ「ふゆきたりなば、」より。(シガレットアンソロジー収録)

横槍 確かに……! でも私、「女がタバコ吸ってるのは男の影響だろう」みたいな考えあんまり好きじゃないんですけど、なんで描いちゃったんだろう(笑)。……ああ、たぶん単に吸ったことのない人が吸いはじめるきっかけを描きたかったんです。

──きっかけ?

横槍 今ってタバコ吸うのが当たり前だった時代じゃなくて、喫煙スペースでしか吸えないじゃないですか。何かきっかけがないと吸わないよなあって思ったんです。

──確かに吸い始めるハードルがだいぶ高くなってますよね。大暮先生はどんな構想で描かれたんでしょう?

大暮維人「TIME MACHINE RECORD」より。(シガレットアンソロジー収録)

大暮 短く、キレをよくしようと思って。これ8ページですけど、ほんとは6ページでやりたかったくらい。とにかく話をシンプルにして、それをいかにタバコに繋げるかってところから入りましたね。

横槍 これほんとにかっこいいですよね。タバコから広げたわけじゃないっておっしゃいましたけど、やっぱりタバコがカッコいいものに見えるマンガになってるなあと。

大暮 タバコをずっと吸ってる部屋って、真っ白く煙るじゃないですか。あの感じを何とか出せないかなと試行錯誤してました。

横槍 カラーならまだしも、モノクロでって難しいですよね。

大暮 可能な限り、手でカケアミ描いたりしてみました。もっとボワボワした煙を描きたかったんですけど、結構手間かかるんですよね。

横槍 え、仕上げってCGじゃないんですか? 信じられない!

大暮 いや、基本はアナログですよ。僕、アナログじゃないと白黒のバランスが判りにくいんですよ。モニター画面だけで見ても、ベタをどこに入れるかのバランスがとりにくいんです。

横槍メンゴ

横槍 私も元々はずっとアナログだったんですけど、もう全部フルデジタルなんです。ネームも液タブで描いてて。最近はそもそもアナログを通ってない人も増えてきてますよね。でも私はアナログはやったほうがいいと思う。

──アナログは基礎というか。

横槍 アナログの模倣がデジタルだから、アナログをやってない人って、そもそも模倣する元がないんですよ。デジタルならではの技法ももちろん素敵ですが、アナログ発祥のバランス感覚とかは残っていってほしいなーと思いますね……。

大暮 横槍さん、あんまり画面がデジタルっぽくないですよね。言われるまでわからなかったです。

横槍 やったあ! 私、ほんとはアナログが好きで、いつか戻りたいんです。でもまあなかなか時間と予算が……。デビューが決まったとき、いきなりアシスタントさんを雇えなかったので、とりあえずいまはデジタルでってことで、ちょうどそのときにデジタルにしたんです。

浅野いにおさんはタバコ1本分の時間を描いているのが素晴らしい(大暮)

──「シガレットアンソロジー」で、ほかに気になった作品はありますか?

横槍 囁一くん(感傷ベクトル)のマンガかな。あ、これも女の子がタバコ吸う話ですね。

浅野いにお「としのせ」より。(シガレットアンソロジー収録)

大暮 僕は浅野いにおさんの作品がすごく気になりましたね。絵もすごいし、話もよく練られてるし。カケアミを多用していて、タッチがちょっと変わられてますよね。このタッチすごく好きです。

横槍 最近、他誌で描かれてる読み切りも全部このタッチですよね。さっぱりしてて味がありますよね。いい意味で昭和っぽいというか。話も、タバコをすごく効果的に使われてますよね。

大暮 タバコそのものというより、タバコ1本分の時間を描いているのが素晴らしいと思いました。

横槍 「シガレットアンソロ」に参加されてる作家さんは、ほんとにいろんなジャンルで活躍されていて。こんな個性の強い方たちが集まったら、もっとバラバラな感じになるかと思ったら、不思議と統一感ある感じになったと思います。やっぱりタバコ=アンニュイみたいなイメージがあるからかもしれないですね。早く本になった姿が見たいです。

理想的な恋人同士に見える花火と麦。2人は、互いに叶わぬ恋に身を焦がす“契約上の恋人”だった。愛する人のぬくもりを、相手に重ねて慰め合う日々。大事な人を傷つけながら傷ついていく不器用すぎる青春模様。誰よりも純粋で誰よりも歪んだ純愛ストーリー、第2巻。

横槍メンゴ(よこやりめんご)

横槍メンゴ

1988年2月、三重県生まれ。2009年、マガジン・ウォー(サン出版)にて成人向けマンガでデビュー。2010年にCOMICすもも(双葉社)にて、エロマンガ家と双子美少女の三角関係を描いたコメディ「はるわか」の連載を開始する。2012年に週刊ヤングジャンプ(集英社)にて掲載された、岡本倫原作「君は淫らな僕の女王」は、ヒロインが自制心を失うという設定と、かわいらしい絵柄とエロのギャップが人気を呼んだ。同年、月刊ビッグガンガン(スクウェア・エニックス)にて、高校生の純粋かつ歪んだ恋愛を描く「クズの本懐」の連載を開始する。インターネット上ではヨリのハンドルネームで活動し、ニコニコ動画などボーカロイドを使用した楽曲のイラストも手がける。イラストレーターとしても活躍中。

大暮維人(おおぐれいと)

大暮維人

1972年2月、宮崎県生まれ。1995年に漫画ホットミルク(白夜書房)にて「SEPTEMBER KISS」でデビュー。1996年、月刊少年キャプテン(徳間書店)にてオリジナルビデオアニメ「BURN-UP」と連動したメディアミックス作品「BURN-UP W」の連載で一般誌への進出を果たす。翌年ウルトラジャンプ(集英社)にて連載を開始した「天上天下」は、迫力のある格闘シーンと成人誌で培った艶のある人物描写で人気を博し、アニメ化に至るヒットを記録。2002年に週刊少年マガジン(講談社)にて連載を開始した「エア・ギア」もTVアニメ化を果たし、第30回講談社漫画賞少年部門を受賞した。2012年からはウルトラジャンプにて舞城王太郎とともに「バイオーグ・トリニティ」を連載開始。2013年12月には最新3巻が発売される予定だ。