鍋のDVDを発売した理由

──では、お笑いナタリーからもパンチさんにDVDに関する質問を。今回このDVDを発売することになった経緯を教えてもらえますか？

パンチ　僕もプロ野球を引退して芸能界に入ったときに悩んだ時期があったんですよ。野球解説者じゃないし、お笑い芸人じゃないし、俳優じゃないし、どういうふうにがんばっていったらいいのかなぁと思っていたときに、旅番組で「パンチさん、テレビ見てますよ！」とか、「パンチさんといると元気になっちゃうわね」とかって言ってもらったことがあって、「えっ、俺って普通だと思ってたけど、元気に見えるのかなぁ」って考えるようになって。じゃあ元気を配達するような“元気配達人”っていう位置でやっていこうと思ったんですよね。

──元気配達人の役割とは？

パンチ　グルメレポーターやるときも、食べて「美味しい」って言うだけじゃなくて、帰るときに「パンチさん、うちのラーメン美味しそうに食べてくれて、また明日からがんばろうと思いますよ」って言ってもらうような役割ですね。半年後にそのラーメン屋さんに行ったら「テレビで紹介してもらってからすごい人が来てくれて、パンチさんの食べ方がうまかったからですね」って言ってもらったり。要は、みんなが元気になってくれればいいなっていうのがあるわけですよ。

──なるほど。なぜ今回鍋のDVDを発売されたんでしょうか？

パンチ　今、男が弱くなっちゃってるじゃないですか。なんでかなぁって考えたときに、鍋を家で食べる家庭が少なくなってるんじゃないかなと思ったんです。普段無口なお父さんでも、鍋とかになると「いや、それまだだ」とか「今だ」とか、雑炊を作ったりもするじゃないですか。お父さんが偉くなれるのは鍋だと思うんです。普段隅っこにいても、唯一カッコつけられるっていうのが鍋なんですね。教育の1つじゃないですけど、自然と家族の会話も増えるし。そういう意味で「鍋を食べよう！」っていうのをよくブログに書いたり友達と話したりしていたのがきっかけですね。

──DVDの中でパンチさんは「鍋奉行」ならぬ「鍋将軍」という位置づけです。

パンチ　気が付くと僕はいつも鍋奉行になってるんですよ、友達と食べるときも。「お前、鍋奉行だなぁ」とか言われて、「当たり前だよバカヤロウ、こういうのはキャプテンをちゃんと決めないと味に一体感が出なくてバラバラになっちゃうんだ！」とかって。あるとき「佐藤、お前は鍋奉行というより、将軍だな！」なんて言われて、「なんで？」って聞いたら、「だって、お奉行さんは許しても将軍は許さないからだ」って。これを聞いたとき、「そうだ！」って頭の上にライトが点いて、こういうDVDが出たらいいかもしれないと思ったんですよ。

──鍋のレシピは落合博満夫人の信子さん直伝だとか。

パンチ　そうなんですよ。落合さんの奥さんから教わった鍋は美味しいから、DVD見た人も元気になれると思いますよ。

──でも、「大事なのはレシピではない」ということもDVDの中でおっしゃっています。

パンチ　そう、これは鍋のレシピを紹介するDVDじゃないんです。会話っていうものの大切さとか、作り方を間違えても頑固に「いいんだ！」って言ってみたり、やっぱり「ごめん」って謝ってみたり、そういう人間らしさが出るところが鍋の面白さなんだということを伝えたいんです。お父さんが暴走して仕切るんだけれども、やっぱり支えるのはお母さんであったり、娘の「パパ、あれが入ってないよ」っていうツッコミであったりね。食卓で会話すれば家族に一体感が出るじゃないですか。このDVDは家族で見るのはもちろん、1人で見てもパンチと一緒に食べてるような雰囲気になれると思うんで、みんなに元気になってもらえたらいいですね。