「舞台『弱虫ペダル』THE DAY 1」北乃颯希・滝川広大・青柳塁斗、スプリンターたちの熱い思い

渡辺航のマンガ「弱虫ペダル」(秋田書店)を原作とした「舞台『弱虫ペダル』」(以下ペダステ)シリーズが10周年を迎えて早1年。次なる新作は、インターハイ神奈川県大会1日目の様子を描く「舞台『弱虫ペダル』THE DAY 1」だ。「THE DAY 1」では、平坦コースを得意とするスプリンター、総北高校1年生の鳴子章吉、3年生の田所迅、箱根学園2年生の泉田塔一郎の闘いが描かれる。“直線”でデッドヒートを繰り広げる鳴子役の北乃颯希、田所役の滝川広大、泉田役の青柳塁斗に、本作にかける熱い思いを聞いた。

取材・文 / 興野汐里撮影 / ヨシダヤスシ

筋トレマスターでも筋肉痛になるペダステ稽古

──北乃さんと滝川さんは、10周年記念公演として2022年夏に上演された「舞台『弱虫ペダル』The Cadence!」(参照:はみ出した先に見えるものは…ペダステ10周年記念公演で島村龍乃介ら熱演)に続いての出演、青柳さんは今回がペダステ初参加となります。

北乃颯希 ペダステの歴でいうと自分のほうが塁斗くんより先輩ですね。(青柳に視線を送って)がんばって!!

青柳塁斗 (無言で北乃を見つめる)

北乃 怖いって!(笑) 何か言ってくださいよ!

青柳 ははは! ごめんごめん(笑)。

──ペダステでは、自転車のハンドルと俳優のマイムのみでロードレースが表現されます。ペダステに出演するにあたり、そのための身体作りが重要になると思うのですが、皆さんは日々どういったトレーニングをしているのでしょうか?

北乃 稽古が終わったあと、チームごとに分かれて体幹トレーニングをやっています。

滝川広大 みんな本当に成長したよね。「The Cadence!」のときは、ここまで量をこなせなかったもん。

北乃 広大くんはちゃんとできてましたよ! 「The Cadence!」のときはほぼ全員が何もできなかったんですけど、「THE DAY 1」の稽古に入ってみたら、体幹が強くなったのを感じました。

北乃颯希

北乃颯希

滝川 ペダステでライディングするときに使う筋肉って、普段は使わない筋肉なんですよ。だから、稽古が終わるとお尻とももが特に筋肉痛になりますね。今回もそこを中心に鍛えていけたら。

──筋トレマニアで知られる青柳さんは日頃から身体を鍛えていらっしゃいますが、初めてペダステの稽古に参加して驚いたことはありますか?

青柳 広大も言っていたように、ウエイトトレーニングで鍛える筋肉とは違う部分を使うので、お尻や太もも、腰に張りが出たり、筋肉痛になりますね。慣れればなんとかなると思うのですが。驚いたことと言えば、ハコガク(箱根学園)のメンバーが意外と大人しいことかな(笑)。わちゃわちゃしてるのかと思ったら、意外とみんな淡々と稽古するんですよ。逆に、総北のメンバーは若い子が多いからにぎやかだなあと思います。

「The Cadence!」を経て感じる絆の強さ

──小野田坂道役の島村龍乃介さんを中心とした新生ペダステのデビュー戦「The Cadence!」から約1年を経て、久しぶりに総北チームのメンバーが集結しました。皆さんと再会して、成長を感じた部分はありますか?

北乃 「The Cadence!」は総北1年生のウェルカムレースがメインだったので、個人個人の闘いが描かれたと思うんですけど、今回の「THE DAY 1」はチーム戦ということもあって、周りの人とコミュニケーションを取る機会が多くなったかもしれません。意図しているわけではないんですが、自然に仲間意識が芽生えてきたというか、前回よりも1つになれている感じがあるなと思います。

滝川 「The Cadence!」のときは、一から作り上げていく段階だったので、みんな探り探りなところがありました。でも、大変な時期を一緒に乗り越えてきたからこそ、今回は本読みのときから団結力を感じましたし、「早く稽古したい!」という気持ちになったので、精神的な絆の強さが「The Cadence!」のときと違いますね。あと、前回はお客様の支えがあって最後までがんばることができたので、今回はその感謝も込めて、自分たちがお客様を引っ張っていけたらと思います。

──青柳さんは今回、“神奈川の最速屋”の通り名で知られるハコガク2年生のスプリンター・泉田塔一郎を演じます。現段階で、泉田をどのような人物だと捉えていますか?

青柳 泉田は身体作りやロードレースにかける思いがとにかく強くて、肉体的にも精神的にもすごくタフ。その強さがあったから、2年生にしてハコガクのインターハイメンバーに選ばれたと思うんです。役作りに関しては、想像していたよりももっと誇張して演じていますね。くじらちゃん(演出の鯨井康介)も「どんどんやっていいよ!」と言ってくれましたし、遊び心を入れながら楽しく稽古しています。

青柳塁斗

青柳塁斗

演出家・鯨井康介との関係性

──演出の鯨井さんは、2016年の「舞台『弱虫ペダル』~総北新世代、始動~」からペダステに参加し、総北の次期キャプテン・手嶋純太役を務めました。「The Cadence!」から西田シャトナーさんのあとを継いで演出を手がける鯨井さんと、稽古場でどのようなやり取りを重ねながら作品作りを進めているのでしょう?

北乃 鯨井さんはご自身も俳優なので、「まずは思うようにやってみて」という感じで僕たちの気持ちを尊重しながら演出してくれますね。本役とは別のキャラクターを兼役として演じることがあるんですけど、そのシーンも僕らに任せてくれて、「君たち、『The Cadence!』で経験したから今回もできるでしょ!」という、厳しくも愛のあるメッセージを受け取りました(笑)。

滝川 鯨井さん自身が思いきりお芝居をする方なので、その姿勢を最初に示してくれることによって、僕たちが「こうやってみたいんだけど、やっていいのかな」と迷わないようにしてくださっていると思います。鯨井さんのおかげで良い雰囲気で稽古できていますし、「もっともっとやるぞ!」という気持ちが生まれてすごくありがたいです。

滝川広大

滝川広大

青柳 くじらちゃんとは15年くらい前からの知り合いで、初めて共演したときは2人共高校生でした。こうやってくじらちゃんの演出作に出演できることになって、すごく刺激になっているし、それぞれキャリアを重ねてきたんだなあと感慨深くなりますね。1つ言うとしたら、ペダステにかける思いや熱を真正面からぶつけてくれるのは本当にありがたいんですけど、「ごめん! 僕、ペダステの現場が初めてだから、(稽古を)もうちょっとゆっくり進めてくださーい!」と感じるときもあります(笑)。

北乃滝川 ははは!

青柳 なんて言いましたが(笑)、くじらちゃんも演出で大変な中、常に現場を盛り上げてくれるので、僕も毎日楽しく稽古ができています。