ラストシーンで“捨之介たち”を感じた
──ラストの、走馬灯のように極楽太夫の記憶が巡るシーンがとても印象的でした。天海さんはどのような思いで舞台に立っていらっしゃいましたか?
あのシーンは、極楽太夫が出会った人たちの顔や経験してきたであろうことを考えていました。渡り遊女だった彼女は、無界の里でとても幸せな時間を過ごせたんだと思うんですよね。その思いと、自分が背負ってきた業があって、「それでもまた生きていかなければいけない」という思いがある。それらをひっくるめて、客席にちゃんと届けたいと思いました。それと、極楽太夫だけじゃなく、“Season極”の登場人物たちの思いも伝わるように、あとはもう本当に、「“花・鳥・風・月・極”、ありがとうございました!」って気持ちで舞台に立っていましたね。「髑髏城の七人」としては、小栗くんたち“Season花”が斬り込み隊長としてあの劇場での道をガッと切り拓いてくれたから、その次のみんなも闘えたと思うんです。彼らがグッと引っ張ってくださったから、捨之介や、“花・鳥・風・月”のキャスト・スタッフ、すべての人の気持ちがつながった。だから、最後の私たちがへなちょこだとすべてがダメになってしまうと思って、すごく怖かったんですね。でも1人で全部を背追い込むというより、小栗くんから始まって、“Season鳥”の阿部さん、“Season風”の松山(ケンイチ)くん、“Season月”の福士(蒼汰)くん、宮野(真守)くんと、捨之介のみんなと一緒にいると感じたから、不思議な感覚でしたけど、とても楽しかったし、幸せでした。ちなみにあのラストシーンは、稽古場では1回も稽古してなくて、劇場に入ってから初めてやったんです。いのうえさんに「どうすればいいですか?」って聞いたら、「姐さん、そこに立ったまま、(客席と)一緒に回ってください」って言われて。そのまま1周回ったときに、舞台上のみんなの姿が走馬灯のように見えて、「あ、そういう解釈でいいんだな」と。舞台上の人たちにはいろいろ演出が付いていましたが、あのシーンでは私には演出が付いてないんです。
新感線は“いい筋肉”
──改めて、「修羅天魔」の魅力はどこにあると感じていらっしゃいますか?
全部に決まってるんじゃないですか!(笑) 私、自分が関わった作品は、ものすごく面白いと思ってますから! 特に「髑髏城の七人」は、本当によく練られた戯曲なので、ワクワクするし、笑うし、泣くし、怒るし、切ないし、悔しいし……いろいろな思いがいっぱい詰まっている作品だと思います。余すところなく、本当に何回でも楽しんでいただきたいですし、どんな舞台でもそうですけど、いろいろな人の視点から観ていただけると、何通りもの楽しみ方ができると思います。その点で、「修羅天魔」は捨之介ではなく極楽太夫を真ん中に置いて、いい感じにぶっ壊し(笑)、いい感じに作り上げた作品。もし過去に「髑髏城」をご覧になっている方だったら、「髑髏城」に出てきたキャラクターが「修羅天魔」でどのように描かれているかといった違いも楽しんでいただけると思いますし、初めての方だったら「修羅天魔」だけでももちろん、十二分に面白いと思います……いや、面白かったと言ってほしいです!(笑)
──新感線とはたびたびタッグを組んできた天海さん。天海さんが感じていらっしゃる、劇団☆新感線の魅力とは?
ご覧になったことがある方なら十分感じてくださっているとは思いますが、カッコよさを追求しながら、オポンチも追及する、カッコいいままで終わらせてくれない劇団(笑)。やってる人たちが、こんなに感情をむき出しにして、それでいて楽しいしワクワクできる舞台って、少ないんじゃないでしょうか。いい大人になってくるとなんでもグアーって(全力で)やることがあんまりなくなってくるものだと思うんですけど、それを受け止めてくれる劇団だと思います。“いい筋肉”って、いつもはすごく柔らかくてふにゃーっとしてるんだけど、ここぞっていうときにグッと力が入るみたいな。まさにそれは、劇団☆新感線だと思っていて。普段は「嘘でしょ? 大丈夫なんだろうか、この人たちは」って感じるんだけど(笑)、出るところに出ればすごいっていう、そういう人たちが集まってる場所。そんな仲間と4回も5回も共演させてもらっていることは、すごく幸せですね。
──昨年7月からWOWOWで放送されている「12カ月連続放送!劇団☆新感線『花鳥風月極&名作選」のうち、IHIステージアラウンド東京での「髑髏城の七人」シリーズの放送は“極”で最後となります。
“Season極”は、これまでの「髑髏城の七人」と、お話自体が変わっています。そういった面でも楽しんでいただけるかなと思いますし、「髑髏城の七人」を全シリーズ観て、劇団☆新感線に興味を持ってくださった方には、今度はぜひ劇場に足を運んで生の大迫力を感じていただけたら。劇場でお待ちしております。
姐さんの“0番力”は半端じゃない
“極”は姐さん(天海祐希)を主人公にした話にする、ということだけ決まってたんです。ただ捨之介みたいに、ガンガン百人斬りするような主人公はまず考えられないので、そこをどうするかっていうところからスタートして、中島(かずき)くんが知恵を絞ってくれた結果、スナイパーという設定になりました。
“極”は、それまでの“花・鳥・風・月”とはまったく違った、ある意味パラレルな話です。捨之介が出て来ず、「こういう『髑髏城』もあったんじゃないか」という物語。やっぱり“花・鳥・風・月”があったから出てきたアイデアだと思うし、捨之介のストーリーはこれまでも(天魔王との1人2役だったり、元忍びの設定だったりと)さまざまな展開でやってきたので、「あれ以上、どう展開させよう」って感じでしたから(笑)、“極”の台本が上がってきたときに、「ああ、これなら新たな気持ちでできるな」と思いました。
実際に本番を観て、「“極”は姐さんだからできるんだな」と思いましたね。姐さんは、ただ立ってるだけでドラマを感じさせる。背景が流れていく。やっぱりすごいなと。もう、天海姐さんに任せきりでした。(須賀)健太がよく、(舞台のセンターを表す)“0番力”って言ってたけど、うまいこと言うなあと思いました。姐さんの“0番力”は半端じゃないです!
- WOWOWライブ「劇団☆新感線『修羅天魔~髑髏城の七人Season極』」
- 2019年5月6日(月・振休)15:00~
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作:中島かずき
演出:いのうえひでのり
出演:天海祐希 / 福士誠治、竜星涼、清水くるみ / 三宅弘城、山本亨、梶原善 / 古田新太 ほか
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作:中島かずき
演出:いのうえひでのり
出演:古田新太、芳本美代子、高田聖子、橋本じゅん、こぐれ修、逆木圭一郎、粟根まこと ほか
- WOWOWライブ「劇団☆新感線 ゲキ×シネ『髑髏城の七人~アオドクロ』」
- 2019年5月24日(金)24:00~
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作:中島かずき
演出:いのうえひでのり
出演:松本幸四郎(当時は市川染五郎)、鈴木杏、池内博之、ラサール石井、高田聖子、三宅弘城、粟根まこと、高杉亘、川原和久、佐藤アツヒロ ほか
- WOWOWライブ「劇団☆新感線 ゲキ×シネ『阿修羅城の瞳2003』」
- WOWOWライブ「劇団☆新感線『髑髏城の七人』Season月 上弦の月」
- WOWOWライブ「劇団☆新感線『髑髏城の七人』Season月 下弦の月」
- WOWOWライブ「劇団☆新感線 ゲキ×シネ『シレンとラギ』」
- 2019年6月放送予定
- 天海祐希(アマミユウキ)
- 1967年東京都出身。87年に宝塚歌劇団へ入団し、同年の「宝塚をどり讃歌」で初舞台を踏む。93年に史上最短で月組トップスターに就任し、95年に退団。以降、ドラマ・映画・舞台・CMなどに幅広く出演しており、第33回ゴールデン・アロー賞 演劇賞、第20回日本アカデミー賞 新人俳優賞など数多くの賞を受賞した。主演ドラマ「緊急取調室」第3シーズンが4月にスタートするほか、吉永小百合と共演した映画「最高の人生の見つけ方」が10月に公開される。
- いのうえひでのり
- 1960年福岡県出身。80年に劇団☆新感線を旗揚げ。以降、ドラマ性に富んだケレン味たっぷりの時代劇“いのうえ歌舞伎”、生バンドが舞台上で演奏する音楽を前面に出した“Rシリーズ”、いのうえ自身が作・演出を手がける笑いをふんだんに盛り込んだ“ネタもの”など、エンタテインメント性に富んだ多彩な作品群で人気を博す。劇団本公演以外では、シス・カンパニー公演「今ひとたびの修羅」「近松心中物語」、PARCO THE GLOBE TOKYO PRESENT「鉈切り丸」、大人計画との合同公演・大人の新感線「ラストフラワーズ」、歌舞伎NEXT「阿弖流為<アテルイ>」などのプロデュース作品も手がける。第14回日本演劇協会賞、第9回千田是也賞、第57回芸術選奨文部科学大臣新人賞、第50回紀伊國屋演劇賞個人賞など受賞歴多数。2019年から20年にかけて上演される、劇団☆新感線「いのうえ歌舞伎『偽義経冥界歌』」、および19年の夏から秋にかけて上演される「いのうえ歌舞伎《亞》alternative『けむりの軍団』」で演出を務める。