WOWOW「松尾スズキ大特集!」松尾スズキ 宮藤官九郎 インタビュー / 生田絵梨花×神木隆之介 対談|怒涛の3作品一挙放送!「キレイ─神様と待ち合わせした女─」「命、ギガ長ス」「ノンフィクションW 松尾スズキ 人生、まだ途中也」

生田絵梨花、神木隆之介
生田絵梨花×神木隆之介が語る
「キレイ―神様と待ち合わせした女―」

2000年の初演以降、キャストを変えながら上演されてきた「キレイ―神様と待ち合わせした女―」は松尾スズキの代表作の1つで、日本屈指のオリジナルミュージカルと言っても過言ではない。その4度目の上演で、主人公の少女・ケガレをみずみずしく演じた生田絵梨花、初舞台と思えぬ見事な演技を披露した少年ハリコナ役の神木隆之介が、思い出の作品「キレイ」をほのぼのと振り返る。

初舞台とは思えない神木さん

生田絵梨花 「キレイ」は初演と再演をDVDで観ていて、多部さんが出演されたときは劇場で観ました。

神木隆之介 それはもう、ファンですね!

生田 ファンというのもおこがましいんですけど。だから今回オファーをいただいて、「まさか!」と思いました。自分があの中に入れることが、本当に不思議で。

神木 わたくしは、今回が初舞台でして。

生田 (笑)。意外や意外、という感じでした。

神木 緊張していました。

生田 え、してましたか?

神木 はい。小鹿のように震えていました。

生田 最初から堂々としてたイメージでした(笑)。

Bunkamura30周年記念 シアターコクーン・オンレパートリー2019+大人計画「キレイ―神様と待ち合わせした女―」より。(撮影:細野晋司)
Bunkamura30周年記念 シアターコクーン・オンレパートリー2019+大人計画「キレイ―神様と待ち合わせした女―」より。(撮影:細野晋司)

神木 周りに舞台に出ている友人や共演者の方がいて、いろいろと話を聞いていたので、自分が舞台で通用するのか不安もあったんですけど、僕も二十代後半に突入したので、初めてのことにも挑戦させていただきたいなと。それと阿部サダヲさんはじめ、以前共演したことがある方がキャストにいたので、助けてくれるんじゃないかっていう思いもあって……。

生田 そうだね、皆さん何でも付き合ってくれて、優しいからね。でもその優しさの発信源は神木さんですけど。

神木 とんでもない。僕は何もしてないですよ。

生田 そういえば、顔合わせのときにデンモク持ってくる人、初めて見ました。

神木 結局あれ、使わなかったね(笑)。

生田 デンモクだけあっても歌えないでしょ(笑)。あと、あれなんだっけ……?

神木 ミラーボール!

生田 そう(笑)。クリスマスのときはツリーも持ち込んでたし、神木さんたちの楽屋はいつもにぎやかだった。

神木 本番前にミラーボールを回して音楽をかけて、栄養ドリンクとか各自が好きなものを飲んで、阿部さんと「踊ると身体がポカポカするね」って話して……。

生田 初舞台とは思えないな(笑)。

“野性的”関係を目指したケガレとハリコナ

神木 生田さんはこれまでけっこう、歌のある舞台に出ていたじゃないですか。でも「キレイ」は芝居のシーンが多いでしょ。

生田 そうですね。確かにあんなにセリフをしゃべったのは初めてかもしれない。最初は「どうしゃべろう」とか「どんなイメージで言えばいいかな」って思ってたけど、稽古ではそんなことを考える余裕がないくらい松尾(スズキ)さんに不思議なことを言われたり、無茶振りされたり(笑)。言われたことを自分なりに考えて、毎日いっぱいいっぱいになってました。でもそのおかげで、あまり頭で考えすぎずにアプローチできたのかなって。私たちの関係性についても、松尾さんから「野性的に」と言われてて。

神木 野性的に見せようって苦労したよね。

生田 した!

神木 2人で一緒に「野性的」って言葉の意味を検索したり、今回の我々の役作りは犬と猫がテーマだったので、猫や犬の動画を稽古場で一緒に観たり……。ただ、犬と言ってもペットの犬じゃなくて、地を這うようにして生きていく野良犬のイメージだろうなとは思ってたんだけど、野良犬の動画ってなかなかなくて(笑)。

生田 そう(笑)。だから癒し系の犬猫の動画を見て普通に癒されて終わりました。

生田神木 あははは!

生田 松尾さんにはちょくちょくこだわりポイントがあって、セリフのタイミングや言い方、動線を何度も稽古したシーンがありましたね。

神木 すごく細かいこだわりがあるんでしょうね。

「キレイ」にはすごい言葉が詰まってる

神木 好きなシーンってありますか?

Bunkamura30周年記念 シアターコクーン・オンレパートリー2019+大人計画「キレイ―神様と待ち合わせした女―」より。(撮影:細野晋司)
Bunkamura30周年記念 シアターコクーン・オンレパートリー2019+大人計画「キレイ―神様と待ち合わせした女―」より。(撮影:細野晋司)

生田 冒頭でカネコ組がわちゃわちゃしているシーンは全部好きですよ。あと皆川猿時さん演じるキネコが背中にハリコナを背負って「ケチれ! 嵐のように」って言う、あのシーンがすごく好きで。それまではキネコは、けっこうキツい目をしてるんだけど、あそこで初めてケガレを仲間だと言ってくれて、すごく優しい顔を見せてくれるんです。

神木 あのシーン、途中までは皆川さん、手で支えておんぶしてくれているんです。でも「ケチれ!」って言う瞬間に手を広げるから僕、しがみついてなきゃいけなくて。

生田 あ、そうなんだ(笑)。それは大変そうだね。

神木 僕は阿部さん演じるマジシャンが好きで。「我々には“思う”という下品な感情は必要ない」ってセリフが好き。“思う”って行為を下品と呼ぶ、その境地にはたぶん永遠にたどり着けないけど、なるほどなって。

生田 カスミも「おお」って思うことを言うよね。

神木 「この親切は私のもの」ってセリフとかね。松尾さんの台本は今回初めて読ませていただいたんだけれど、素晴らしいセリフがいっぱいある。

生田 そうだね。すごくいいシーンであえて笑いを入れてみたり。

神木 そうそう。「これからすごいことを言いますよ」っていう雰囲気じゃないところ、ふと聞き逃しそうになるところで、「すごいな」って思う言葉がいっぱいあるんですよ……え? なんでニヤニヤしてるの?

生田 いや、毎日舞台袖で、爆発してる神木くんばかり見てたから、こうやって真面目にしゃべっているところを見るとギャップに驚いちゃうって言うか。「ちゃんとしゃべるんだな」って思って(笑)。

神木 あははは。こういう姿は、僕の中で1割程度です。

生田 1割なんだ?(笑)

神木 でも意外って言ったら僕もそうだよ、普段はステージで明るく駆け回ってるでしょ?

生田 私は普段から明るいけどね。でもそうか、お互い様か。

神木 お互い様ですよ。

生田絵梨花(イクタエリカ)
1997年生まれ。乃木坂46の1期メンバーとして2012年にCDデビュー。ミュージカル「モーツァルト!」、ミュージカル「ナターシャ・ピエール・アンド・ザ・グレート・コメット・オブ・1812」での演技が評価され、2018年に菊田一夫演劇賞を受賞した。近年の主な出演舞台には、ミュージカル「レ・ミゼラブル」、ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」などがある。3・4月にミュージカル「ホイッスル・ダウン・ザ・ウィンド ~汚れなき瞳~」、7月にミュージカル「四月は君の嘘」に出演予定。
神木隆之介(カミキリュウノスケ)
1993年生まれ。1999年にドラマ「グッドニュース」に出演。映画「桐島、部活やめるってよ」「劇場版 SPEC~天~」での活躍により、2012年に第4回TAMA映画賞最優秀新進男優賞を獲得した。2019年、「キレイ―神様と待ち合わせした女―」で初舞台を踏む。近年の主な出演作品は、映画「君の名は。」「フォルトゥナの瞳」「屍人荘の殺人」「ラストレター」、NHK大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺~」、ドラマ「集団左遷‼︎」など。4月18日スタートのWOWOW「連続ドラマW 鉄の骨」では主演を務める。