新型コロナウイルスの影響で劇場街が閉鎖されたブロードウェイ。その再開の象徴として、今年のトニー賞授賞式が開催される。WOWOWでは、9月27日(日本時間)にニューヨークのウィンター・ガーデン劇場にて行われる授賞式の模様を配信とテレビ放映で生中継。ナビゲーターにはおなじみの井上芳雄と、初担当の宮澤エマ、そしてスペシャル・プレゼンターの堂本光一、「WOWOWミュージカルラウンジ」アンバサダーの海宝直人を迎え、東京と大阪の2拠点から中継をつなぐ。
また、授賞式に向けて、WOWOWではさまざまな関連番組が放送され、お祝いムードを盛り上げる。待ち望まれたブロードウェイの再開だが、その喜びと共に脳裏によぎるのはコロナが生んだ犠牲や損失だ。昨年予定されていた6月から1年3カ月のタイムラグを経て行われるトニー賞授賞式の様子から、演劇ファンは何を思い、受け止めるのか。特集では、井上、宮澤、海宝に、トニー賞授賞式とブロードウェイ再開へ寄せる思いを聞いた。また、特集の後半では気になるノミネート作品の概要を紹介する。
取材・文 / 大滝知里
トニー賞は演劇とミュージカルを対象とする、アメリカで最も権威のある賞。1947年のスタート以降、年に1度実施され、該当期間にブロードウェイの劇場で上演された作品の中から、関係者の投票によって受賞作・受賞者が決定する。アワードは演劇部門とミュージカル部門に分かれ、それぞれ作品賞から、主演・助演俳優賞、演出・振付・オーケストラ編曲・音響・照明といったスタッフワークまで、多岐にわたる。また、ショーアップされた授賞式や司会者の奮闘ぶりも演劇ファンの注目の的に。日本時間9月27日午前に開催される第74回トニー賞授賞式は、2019-2020シーズンの受賞結果を発表するものとなる。
コロナで劇場街が閉鎖、トニー賞も前代未聞の延期に
世界的に猛威を振るう新型コロナウイルスの影響は、昨年3月以降、ニューヨークの劇場街にも暗い影を落とした。2020年3月12日、ニューヨーク市のすべての公演が中止となる。当時上演されていたのは、プレビュー中の8作品を含む31作品。加えて8作品が春の開幕に向けて稽古中だった。当初は約1カ月の公演中止だったが、5月には状況が見えないことから一旦、無期限の再開延期となり、さらに6月には2020-2021シーズンの始まりとなる秋以降の公演がすべてキャンセルされた。
トニー賞はノミネートを昨秋に発表
2020年6月7日に予定されていた第74回トニー賞授賞式も、このような状況から延期に。10月15日にはオンラインで受賞作・受賞者のノミネーションが発表された。授賞式はその後、オンラインで行われるはずだったが、「ブロードウェイの再開に伴う式典となることを目指す」とし、延期となる。授賞式の開催は未定のまま、今年3月に投票が行われた。
ブロードウェイの公演もトニー賞も、感染症の脅威に直面しながら、手探りで歩みを進めて来た感がある。劇場街が閉まっている間も、「こんなときこそエンタテインメントが必要だ」と声を上げんとするかのように、アーティストたちや各団体、劇場を主体としたさまざまな規模の催しがオンラインで行われていた。
ワクチン接種が進み、再開が近づく
今年4月末、ビル・デブラシオニューヨーク市長が7月1日からのニューヨーク市再開計画を発表。5月には9月14日からのブロードウェイの公演チケットの販売が解禁された。これを機にレストランほかでの規制が緩和されたが、ニューヨーク州の成人のワクチン接種率が70パーセントに達し、新規感染者が急速に抑えられたことから、6月には新型コロナウイルスの感染拡大防止のための規制が大幅に解除された。そして6月末、「スプリングスティーン・オン・ブロードウェイ」の公演再開をもって、約15カ月ぶりにブロードウェイの劇場街に明かりがともる。
ブロードウェイでの観劇においては、観客はワクチン接種済みの証明、未接種の人は抗原検査・PCR検査による陰性証明の提示が必要となる。そのことで、反ワクチン派が劇場前で抗議する場面も。コロナ以前に完璧に戻ったとまではいかないが、「スプリングスティーン・オン・ブロードウェイ」を皮切りに、オフ・ブロードウェイでは夏の風物詩である「シェイクスピア・イン・ザ・パーク」や「ストンプ」が開幕。「Pass Over」では9月の初日が8月に早められた。
今年は、再開と再会を祝すトニー賞授賞式に
じっと耐える期間を経て、9月にはいよいよ、ウィンター・ガーデン劇場で第74回トニー賞授賞式が行われる。授賞式は前回の2019年6月10日(日本時間)より実に2年3カ月以上ぶり。今回は2部制の異色の授賞式となり、「ブロードウェイが帰ってくる!」と題された第2部では、主要3部門の発表のほか、劇場の再開、アーティスト&スタッフたちの再会を祝したライブコンサートが展開する。WOWOWライブ・WOWOWオンデマンドではその様子を生中継。人々が待ち望んだブロードウェイの再開を目撃しよう。
次のページ »
井上芳雄、宮澤エマ、海宝直人が語る
2022年4月1日更新