“新人歌手”小林聡美と“演出家”小泉今日子が作り出す「NIGHT SPECTACLES」 (2/2)

音楽監督はASA-CHANG、ゲストに阿部サダヲ

──どんな曲を聴いてきたかはその人を表す、と言われることもありますが、お二人が支えられた歌にはどんなものがありますか?

小林 私は奥田民生さん。40歳ぐらいの時に奥田さんを発見し、そこからずっとファンなんですけど、奥田さんの詞のセンスとかサウンドが好きで。もちろん奥田さんは本当にいろいろなジャンルの楽曲をお聴きになっていると思いますけど、多分似たような曲が好きな子供だったんじゃないかなという親近感を感じるんです。奥田さんは最近よく所ジョージさんとお仕事されていますが、私にとって最初のアイドルはジョージさんだったかもしれないっていうくらい、子供の頃、ジョージさんが好きで。

小林聡美

小林聡美

小泉 面白かったよね、ユーモアもあるしね。

小林 そうそう。そんなテイストを奥田さんにも感じたりするんですよね。

小泉 私は本当にいろいろなジャンルの人たちにいっぱい影響を受けてきたんですけど、やっぱり1970年代、1980年代のアイドルポップスは、自分もその中にいたのでかなりキュンとする思い出みたいなものが詰まっているかなと。もちろん洋楽も好きだったし、バンドもロックも好きだし、今はK-POPも好きなんですけど、イントロを聴いただけでわーっとなるのは、70年代、80年代のアイドルポップスですね。それこそDJとかやりたいくらい。

小林 へえ、いいじゃないー?

小泉 機材を買ったけど、開けてもいないから。

小林 じゃあ今年は開けよう!

小林小泉 あははは!

──ちなみに、舞台の上で繰り広げられるという点で演劇とコンサートは共通点がありますが、これまでさまざまなコンサートを経験されている小泉さんは、演劇とコンサートの違いをどんなふうに感じていらっしゃいますか?

小泉 そうですね……初めて演劇の舞台に出たときに戸惑ったのは、目の前にお客さんがいるのにノーコミュニケーションだっていうことでした。コンサートだと、1人対何千人という感じでコミュニケーションがあるんだけど、演劇はただ観てもらうっていうことに不思議な感覚を感じたのを思い出しました。それは自分の世界にはなかったことなので。

小泉今日子

小泉今日子

小林 そうなんだ……っていうことも、私はまだわからなくて(笑)。想像では、歌を歌う人を演じるみたいにコンサートのステージに立つのかなって思っているんですけど……とはいえ、お客様に歌を聴いてもらったりコミュニケーションを取ったりしていると、もはや取り繕ってはいられない状況になる気がするので、コンサートでは“私そのもの”が出てしまうのではないかと思っているのですが。

小泉 きっと聡美さん自身は緊張もするかもしれないし、戸惑いもあるだろうなと考えて、面白い人が後ろにいてくれたらいいなと思い、東京スカパラダイスオーケストラの最初のリーダーであるASA-CHANGにバンドマスターをお願いして、いいミュージシャンを集めてもらいました。実際、今回の選曲はASA-CHANGにとってもすごく造詣が深いゾーンなのと、1回目の音合わせのときに聡美さんの声を聴いて、ASA-CHANGが興奮して前のめりになっていたので、本番も後ろからものすごく強いエネルギーを与えてくれると思います(笑)。

小林 期待しかないです!

小泉 このライブだからこそのアレンジを考えてきてくれると思います。あとオリジナル曲も作ってくれたんですよね。歌詞はこれから我々が作ります。

──わあ、ぜいたくですね! また阿部サダヲさんがゲスト出演することも発表されました。きっと一筋縄では行かないステージになるんだろうなとワクワクします。

小林 とにかくすべてが期待です。阿部さんと歌うこともすごく楽しみで、絶対楽しいだろうなって。

小泉 音合わせでは、お二人の声がとても合ってましたよ。

左から小林聡美、小泉今日子。

左から小林聡美、小泉今日子。

堅実な小林聡美、実行力の小泉今日子

──改めて、これまでは共演者として同じ作品に関わることが多かったお二人ですが、今回は異なる立場で1つのステージを立ち上げます。立場が違うことで新たにお互いに対して感じていることはありますか?

小林 前から思っていましたが、小泉さんのプロデュース力と実行力はやっぱり流石だなって日々感じております。安心感があるっていうか。

小泉 聡美さんは、俳優の仕事のときもそうだけれど、やっぱりひとつひとつに対する関わり方が丁寧。私のように、闇雲に走らない(笑)。きちっと1つずつ自分の中を埋めていくっていう、役者さんがする作業をコンサートに対してもされているから、「ああ、だからいつも良い仕事になるんだな」って、演出家としてではなく俳優としての自分をちょっと恥じる気持ちです(笑)。私は、「行けばどうにかなるんじゃないか」って感じがあったりするから。

小林 いえいえ、そういうちょっと心臓に毛が生えてる感じは、すごい素敵だなって思いますよ。

小泉 あははは! それと、聡美さんは自分がどれだけできるか、できないかということをちゃんと考えて、自分からそれを私たちに伝えてくれるから、不安材料が削ぎ落とされた状態で一緒に作っていけるのはありがたいです。

──コンサート当日が楽しみです。テーマ曲もできたということで、今後もチャッピー小林さんのコンサートが定期的に行われることを期待してしまいます。

小泉 あの聡美さん、もし今後も続けていきたいということでしたら、ぜひ弊社で制作に入らせていただきますし、WOWOWさんが毎回番組にしてくださると思いますので……。

小林 ええっ……まずは今回のステージ、がんばります(笑)。

左から小林聡美、小泉今日子。

左から小林聡美、小泉今日子。

プロフィール

小林聡美(コバヤシサトミ)

1965年、東京都生まれ。1982年「転校生」(大林宣彦監督)でスクリーンデビュー。主な出演作にドラマ「やっぱり猫が好き」「すいか」、映画「かもめ食堂」「紙の月」「ツユクサ」、舞台「あの大鴉、さえも」「24番地の桜の園」「阿修羅のごとく」など。また主な著書に「ワタシは最高にツイている」「アロハ魂」「聡乃学習」「わたしの、本のある日々」。なお3月8日にエッセイ集「茶柱の立つところ」が発売される。

小泉今日子(コイズミキョウコ)

1966年、神奈川県生まれ。1982年にデビュー。2001年の「風花」で日本アカデミー賞優秀主演女優賞、「陰陽師」で同賞優秀助演女優賞を受賞。2005年の「空中庭園」で日刊スポーツ映画大賞主演女優賞、ブルーリボン賞主演女優賞ほか、2008年の「グーグーだって猫である」でキネマ旬報ベストテン主演女優賞を獲得。2015年に制作会社・明後日を設立し、代表取締役を務める。