配信で味わうミュージカル「この世界の片隅に」昆夏美・大原櫻子・海宝直人・村井良大・平野綾・桜井玲香のコメントも (2/2)

キャストが語る、ミュージカル「この世界の片隅に」

昆夏美(浦野すず役)

ミュージカル「この世界の片隅に」より、昆夏美演じる浦野すず。©こうの史代/コアミックス・東宝 製作:東宝

ミュージカル「この世界の片隅に」より、昆夏美演じる浦野すず。©こうの史代/コアミックス・東宝 製作:東宝

──浦野すず役を演じるにあたり、特に大切にしているポイントを教えてください。

まず原作のイメージを大事にすること。その中からミュージカル「この世界の片隅に」のすずを見つけること。これが私のすべての始まりでした。公演を重ねれば重ねるほど大切にしている部分は増えていきましたが、舞台上で“すずさんが見ている世界”をしっかりお客様にお届けすることが私のこの作品においての使命だと思っています。

──映像配信で注目してほしいポイントは何ですか?

原作へのリスペクトを持ちながら、カンパニー全員でこの作品を作りました。脚本、音楽、舞台上の空気、それぞれに原作の温度を感じられる部分があると思うのですが、配信ということで細かな表情も汲み取っていただけるのではないかと思います。私自身、キャストの皆さんの繊細な表情に胸を打たれ続けている日々を送っています。配信がこの作品により没入していただける機会になればうれしいです。

──アンジェラ・アキさんが手がける劇中音楽の中で、特にお気に入りのナンバーはどれですか?

嘘なく全曲大好きなので1つに絞るのが難しいのですが……がんばって1つに絞るとすれば「この世界のあちこちに」です。同じ曲が2回、最初と最後に歌われる意味と必要性を強く感じます。こんなに歌っていても聴いていても温かい気持ちになれる楽曲と出会えたことは私にとって宝物です。

プロフィール

昆夏美(コンナツミ)

1991年、東京都生まれ。2011年にミュージカル「ロミオ&ジュリエット」でプロデビュー。近年では、パルコ・プロデュース2022「ロッキー・ホラー・ショー」や、「next to normal」「ミス・サイゴン」「マチルダ」「トッツィー」といったミュージカルに出演。9月にはソロコンサート「Kon Natsumi Concert 2024 - moi –」を開催し、12月に開幕するミュージカル「レ・ミゼラブル」ではファンテーヌ役を務める。

大原櫻子(浦野すず役)

ミュージカル「この世界の片隅に」より、大原櫻子演じる浦野すず(右)。©こうの史代/コアミックス・東宝 製作:東宝

ミュージカル「この世界の片隅に」より、大原櫻子演じる浦野すず(右)。©こうの史代/コアミックス・東宝 製作:東宝

──浦野すず役を演じるにあたり、特に大切にしているポイントを教えてください。

ミュージカルの冒頭部分に、すずのモノローグで「たとえ嫌なことがあってもその絵の中で楽しい話に書き換えとった」という一文があります。
嫌なことがあっても、前向きに生きていく明るさは意識しています!
1幕は慣れない嫁ぎ先での苦悩はありますが、なるべく笑顔でいることを意識したり、周作や晴美さんといるときに、幸せを感じる瞬間は、普段よりテンションを上げて表現したりしています。

──映像配信で注目してほしいポイントは何ですか?

花祭りの場面は、原作にはない一場面。
周作とリンが向かい合い、その2人をすずが見ているというドキッとする瞬間。
そしてその後の周作とすずとのやり取りもとても好きです。
すずの器の大きさ、優しさ、温かさが垣間見えるセリフはぜひ聞いてほしいです。

──アンジェラ・アキさんが手がける劇中音楽の中で、特にお気に入りのナンバーはどれですか?

全曲いい曲すぎてなかなか決められないですが……。劇中、ラストにかけて歌われる「記憶の器」は、まさにこの物語の伝えたいテーマがギュッと含まれた1曲です!
「うちしか持っとらん記憶を消さんように、ここで生きていくしかないんですよね」というセリフのあとに始まるこの曲。
ラストにかけて、大勢で歌い上げるところは、とても大きなエネルギーを感じるので、舞台に立って歌っている私自身も感動してしまうほどです。

プロフィール

大原櫻子(オオハラサクラコ)

1996年、東京都生まれ。日本大学芸術学部映画学科卒業。2013年に映画「カノジョは嘘を愛しすぎてる」でスクリーン&CDデビュー。2017年にはミュージカル「リトル・ヴォイス」で主演を務めた。2023年には「ザ・ウェルキン」「ミネオラツインズ」により読売演劇大賞杉村春子賞を受賞。8月21日にオールタイムシングルベスト2014-2024「Anniversary」を発売。9月には全国7ヶ所での大原櫻子10th Anniversary tour2024「ハイッ!10ション!」のほか、10月11日には10周年コンサート「10(天)空の歌」を開催する。

海宝直人(北條周作役)

ミュージカル「この世界の片隅に」より、海宝直人演じる北條周作。©こうの史代/コアミックス・東宝 製作:東宝

ミュージカル「この世界の片隅に」より、海宝直人演じる北條周作。©こうの史代/コアミックス・東宝 製作:東宝

──北條周作役を演じるにあたり、特に大切にしているポイントを教えてください。

「この世界の片隅に」をミュージカル化するにあたって、脚本・演出の上田一豪さんは“すず目線の物語”であることをとても大事にされています。原作に比べ、ミュージカルの周作は感情表現がそぎ落とされているところもあるので、お客様に周作の人物像を伝えるために、繊細に役作りをしました。
大切にしているのは、すずという“器”に対して、周作がどのような“球”を投げ入れるのか、それによってすずがどのように変わっていくのか、どんな影響を与えていけるのか?ということです。周作は感情や思いを強く表さないキャラクターですが、お客様に彼の不器用さ、人間臭さを感じてもらえたらと思っています。

──映像配信で注目してほしいポイントは何ですか?

配信では、それぞれのキャラクターの表情をよりクローズアップして観られると思います。この作品は日本人が日本人のために作ったもので、演じるのも日本人。話したり、歌っていたりするキャラクターの周囲にいる登場人物の、ちょっとした表情や目線の動きから、その場の人々の細やかな感情の機微や思いが見えてくるのではないでしょうか。そういった細かな部分は映像だからこそ観られると思うので、ぜひ楽しんでほしいです。

──アンジェラ・アキさんが手がける劇中音楽の中で、特にお気に入りのナンバーはどれですか?

素敵な曲ばかりですが、個人的には1幕と2幕の両方に出てくる「波のウサギ」が好きです。2幕の、すずさんと哲さんが納屋で過ごすシーンでは、バックで流れる「波のウサギ」が、2人の繊細なやり取りをあと押しします。この場面を舞台袖で観ながらいつも、「音楽の力はすごいな」と感じています。

プロフィール

海宝直人(カイホウナオト)

1988年、千葉県生まれ。7歳のとき、劇団四季「美女と野獣」チップ役で舞台デビューしたのち、「ライオンキング」で初代ヤングシンバを務める。舞台を中心に活動を続け、劇団四季「ノートルダムの鐘」「アラジン」などに出演。実写映画「リトル・マーメイド」日本語吹替版では王子エリックの声を担当した。近年の出演ミュージカルに「アナスタシア」「ベートーヴェン」など。9・10月にミュージカル「ファンレター」、来年3・4月にミュージカル「イリュージョニスト」、6・7月に舞台芸能生活30周年を記念するスペシャルコンサートを控える。

村井良大(北條周作役)

ミュージカル「この世界の片隅に」より、村井良大演じる北條周作。©こうの史代/コアミックス・東宝 製作:東宝

ミュージカル「この世界の片隅に」より、村井良大演じる北條周作。©こうの史代/コアミックス・東宝 製作:東宝

──北條周作役を演じるにあたり、特に大切にしているポイントを教えてください。

すずの隣に寄り添うことです。
“常に”、“ずっと”という訳ではなくて、お互いに心地よい空気を感じながら、そしてすずにとっての最大の理解者でもあるような状態を目指しました。
すずの心の中がいかに揺れようが、迷っていようが、ただ隣に居ることを“辞めない”、“諦めない”という感じでしょうか。
離れても、近づいても常にそこにある明るい灯台というか。けれど多少なりとも男として少しだけ引っ張っていくような勢いもあるので、そこも注意しながら演じています。
そして、その感情を出し過ぎないようにすることを一番大切に心がけました。

──映像配信で注目してほしいポイントは何ですか?

「この世界の片隅に」では食事を作ったり、食べたりするシーンがたくさんあります。
今回の舞台版では、すべてのシーンではないのですが、実際に食べ物が出てくるシーンでは本物の食べ物を使っています。
スイカやご飯、干し柿など。そのリアリティは舞台上では伝わりづらいかもしれませんが、配信だとカメラが寄ってくれると思いますのでしっかりと見えると思います。注目していただきたいです。
映像ならではのアングルで心情を見つめることで、すでに舞台を観てくださった方にも新たな魅力を感じていただけると思います。
劇場で観劇された方にも、ぜひ、配信でも観ていただきたいです。

──アンジェラ・アキさんが手がける劇中音楽の中で、特にお気に入りのナンバーはどれですか?

名曲ばかりですが、僕は「スイカの歌」が一番好きです。
日本人なら誰しもが持っている思いやる心、秘めた思い、温もりのある優しさを感じることができる素敵な1曲となっています。
ぜひ、前後のセリフ込みでお聴きください。

プロフィール

村井良大(ムライリョウタ)

1988年、東京都生まれ。2007年に「風魔の小次郎」でドラマ初主演。近年の主な出演作に、「教場」「教場Ⅱ」「邪神の天秤 公安分析班」「インビジブル」「あなたは私におとされたい」「御社の乱れ正します!」などのテレビドラマや、「RENT」「デスノート THE MUSICAL」「ミュージカル『手紙』2022」「ファースト・デート」「生きる」といったミュージカル、こまつ座「きらめく星座」、音楽劇「精霊の守り人」、朗読劇「鳥ト踊る」、舞台「西遊記」など。

平野綾(白木リン役)

ミュージカル「この世界の片隅に」より、平野綾演じる白木リン。©こうの史代/コアミックス・東宝 製作:東宝

ミュージカル「この世界の片隅に」より、平野綾演じる白木リン。©こうの史代/コアミックス・東宝 製作:東宝

──白木リン役を演じるにあたり、特に大切にしているポイントを教えてください。

包容力です。リンは幼い頃から過酷な環境の中で生きてきました。
すずと出会ったときもそれは継続しています。
華やかなことから人間の汚い部分までさまざまなものを見てきて、
自分の境遇や生きること自体をどこか諦めながらも、
すべてを見てきたからこそ戦地に赴く方々の心の拠り所になれるような、
死を覚悟した方々が優しく包み込んでもらいたいと思えるような人物として、
どんなにつらいときでもすべて受け入れ人に笑いかけることができるような、
そんな役作りをしてきました。
すずに対しては、初めは「自分とは別の世界に生きる人だ」と思って距離を保っていましたが、
いろいろな話を聞いているうちに「自分のようにつらい思いをしてほしくない、幸せになってほしい」という気持ちが生まれたり。
すずにとって新たな感情が生まれるきっかけを作る人物というだけではなく、
リンにとっても、人として友達として接する一歩を踏み出すきっかけになる人物がすずであるようにと、東京公演を経てより感じるようになりました。

──映像配信で注目してほしいポイントは何ですか?

この作品は、実は原作の漫画の表情を再現するのがとても難しいと思っていて、
何気ない表情にも、すべて混じりっけない感情が乗っているので、
お芝居で何かを表現しようとするとそれはもう違うものになってしまっているというか、何かをしようと思ってはいけないと思っています。
私は特に花祭りの「秘密はなかったことになる」の原作の表情がとても印象的で、いつも苦戦していたので、
配信の際は細かな表情、所作、感情の動き方まで見ていただければうれしいです。

──アンジェラ・アキさんが手がける劇中音楽の中で、特にお気に入りのナンバーはどれですか?

絞れません! 本当に難しい!
というのも、普段の何気ない日常に寄り添う歌が本当に多くて、
その時の自分の気持ちで口ずさんでいる歌が違うので……
今の流行りは「端っこ」です。
その前は「醒めない夢」「波のウサギ」「自由の色」、
ずっと歌っているのは「花祭り」「スイカの歌」です。
ほぼ全部ですね(笑)。
ジャパニーズポップスがこうしてミュージカルにマッチすることを証明してくださった、アンジェラさんの才能と努力に感謝しています。

プロフィール

平野綾(ヒラノアヤ)

1987年、愛知県生まれ。俳優、声優、歌手。「レ・ミゼラブル」「レディ・ベス」「モーツァルト!」などのミュージカルに出演。近年の出演舞台に「ヴェラキッカ」「ジョセフ・アンド・アメージング・テクニカラー・ドリームコート」「チェンソーマン ザ・ステージ」など。8月には、春に行った約11年ぶり単独ツアーのアジア公演「RE:BOOT ASIA TOUR 2024」、9月5日には「岩谷時子メモリアルコンサート」、10・11月にはミュージカル「9 to 5」を控える。

桜井玲香(白木リン役)

ミュージカル「この世界の片隅に」より、桜井玲香演じる白木リン。©こうの史代/コアミックス・東宝 製作:東宝

ミュージカル「この世界の片隅に」より、桜井玲香演じる白木リン。©こうの史代/コアミックス・東宝 製作:東宝

──白木リン役を演じるにあたり、特に大切にしているポイントを教えてください。

人が生きていく中で自然に得られるであろう普通の幸せを、もはや自分が手にするのはおこがましいとすら思っているのかなと。
そう思うほどのつらい経験の中で、たくさんのものを諦めることを選択してきた人。
そんな人生でも、自分なりのささやかな幸せをちゃんと持っているし、生きる意味、存在する居場所をしっかりわかっている人だと思って演じています。

──映像配信で注目してほしいポイントは何ですか?

特定のシーンではなく全体的なことなのですが、ミュージカルなので、総体的な魅せ方が素晴らしいのはもちろん、この作品は特に、個々のキャラクターが見せる些細な仕草、表情もかなり重要なので、劇場では肉眼で観切れない細かい芝居を、映像を通して観ていただけるのはうれしいです。

──アンジェラ・アキさんが手がける劇中音楽の中で、特にお気に入りのナンバーはどれですか?

「記憶の器」です。本編では生きている人、亡くなった人、全員が一緒に舞台上で歌います。
内容的には、亡くなった晴美ちゃんへ贈るすずの歌なのですが、
戦争を経験し、震災を経験し、近年でもたくさんの命を失いながらも何度も立ち上がる日本。
すべての人に届け!という思いで毎回歌っています。
いつか世界中に届いてほしいです。

プロフィール

桜井玲香(サクライレイカ)

1994年5月16日生まれ、神奈川県出身。2012年にアイドルグループ・乃木坂46の1期生としてデビューし、キャプテンとして活躍。2019年9月にグループを卒業してからは、ミュージカル「ダンス オブ ヴァンパイア」や「フラッシュダンス」、ブロードウェイミュージカル「『ウエスト・サイド・ストーリー』Season3」などに出演。2022年にはミュージカル「DOROTHY(ドロシー)~オズの魔法使い~」で単独主演を務めた。