中京テレビに遊びに来てね!テレビドラマ×イマーシブシアターの新感覚エンタテインメント「スタジオより愛をこめて」収録現場に密着

中京テレビ放送とエイベックス・マネジメントがタッグを組む共同制作プロジェクトが始動。その第1弾となる「スタジオより愛をこめて」では、テレビドラマとイマーシブシアターが連動した新感覚エンタテインメントが展開する。テレビ番組の裏側を描く本作には、長江崚行、砂川脩弥、武子直輝、高柳明音、日比美思、福田愛依が出演。7月には2話構成のテレビドラマが放送され、9月にはイマーシブシアターが上演される。ステージナタリーでは、5月下旬に行われた記者会見と収録現場の様子をレポート。ワンカット長回しで撮影されたドラマ版「スタジオより愛をこめて」の舞台裏に迫る。

取材・文 / 興野汐里撮影(記者会見) / 古閑嵩章

先手を打った、テレビドラマ×イマーシブシアターという試み

名古屋および東海地区から新しいIPを産出していくことを目的とした、中京テレビ放送とエイベックス・マネジメントの共同制作プロジェクトがスタートする。本プロジェクトの記念すべき第1弾となるのが、テレビドラマとイマーシブシアターが連動した「スタジオより愛をこめて」だ。“ハートフルリアルタイムドタバタコメディ”と銘打たれた「スタジオより愛をこめて」では、中京テレビ局内を舞台に、とある生放送番組の最終回オンエア直前のエピソードが描かれる。

ドラマ「スタジオより愛をこめて」より。

2週にわたって放送されるドラマ版では、上田慎一郎が監督を務めた映画「カメラを止めるな!」やヨーロッパ企画制作による映画「ドロステのはてで僕ら」のような、ワンカット撮影の手法が取り入れられ、9月のイマーシブシアター版では、キャストたちがドラマと同じ内容を演じる様子を、観客たちが自由に観て回ることができる。ドラマとイマーシブシアター、なぜこの2つの要素を掛け合わせようと考えたのか? 5月下旬に行われた記者会見で製作陣に話を聞いた。

ドラマ「スタジオより愛をこめて」より。

本プロジェクトの仕掛け人の1人である中京テレビの河崎素乃美プロデューサーは、イマーシブシアターを含む舞台作品にもともと興味があったといい、「中京テレビで、何か舞台に関連する取り組みができないものかとずっと考えていました。エイベックス・マネジメントの佐々木重徳プロデューサーや、『全裸監督』シーズン1のプロデューサーとして知られるたちばな やすひと監督とお話しする中で、ワンカット長回しでドラマを撮影し、イマーシブシアターでそれとまったく同じ体験をしてもらうのはどうだろう?ということになったんです」と本企画が成立した経緯を明かす。

河崎プロデューサーや佐々木プロデューサーのアイデアを具現化するのが監督のたちばなだ。たちばなは「僕は三谷幸喜さんの『ラヂオの時間』が好きで、自分もいつかあんなふうに笑って泣ける作品を作りたいと思っていました。それをオマージュ的に再現しつつ、イマーシブシアターにもつながるような作品にできたら良いなと。VRやメタバースといった技術が今後どのようにエンタテインメントに関わってくるのか、みんなが試行錯誤している中で先手を打って、こういった作品を作ることができるのはかなり画期的なことではないかと思います」と自信を見せる。

ドラマ「スタジオより愛をこめて」より。

たちばなは一方でワンカット撮影への懸念も抱いており、「ドラマを長回しで撮るのは発想としては面白いんですが、撮り手の自己満足になりがちな気がしていて、迷った部分もあったんです」としつつも、「そこでキャストの皆さんにヒアリングし、彼ら自身を投影したキャラクターを劇中に登場させることにしました。本当にその人自身がそこに存在しているようなキャラクター作りができたと思うので、楽しみにしていてください」と手応えを明かした。

個性豊かな6名が集結!番組愛あふれるテレビマンたち

そんな新感覚エンタテインメントに挑むのは、エイベックス・マネジメント所属の俳優6名。ドラマ版の前半パート撮影後、製作陣と共に会見に出席した6名は、初共演ながらも和気あいあいとした雰囲気で、それぞれの意気込みを語った。

一瀬役の長江崚行。

アシスタントディレクターの一瀬役を演じる長江崚行は「一瀬は登場人物1人ひとりとつながりがあるので、この作品を一番フラットに見ているキャラクター。前半パートの撮影に臨んでみて、普段の映像の現場や舞台の現場では感じられない、不思議な緊張感がありました。イマーシブシアターを観ていただく際には、お客さんにも今までにない感覚を味わっていただけるのではないかと思います」と笑顔で述べる。

二階堂役の砂川脩弥。

中京テレビアナウンサー・二階堂役の砂川脩弥は「こんなに緊張したのは久しぶりで、初心に返ったような気持ちになりました。僕が演じる二階堂は少し気難しいところがあるのですが、物語が進むにつれて、彼の心情がどう変化していくのかに注目してほしいです」とアピール。

三上役の武子直輝。

番組ディレクター・三上役の武子直輝は「この役を演じて改めて感じたのは、表舞台に立つ僕たち俳優は、常にスタッフの皆さんに支えられているということ。いつも舞台裏で動いてくださっているスタッフの方々には、感謝の気持ちでいっぱいです」と謝辞を述べつつ、「イマーシブシアターではなんと、中京テレビの中に入ることができます! 皆さん、ぜひ潜入してみてください!」と観客に呼びかけた。

四ノ宮役の高柳明音。

中京テレビアナウンサー・四ノ宮役で出演する高柳明音は、中京テレビの所在地である愛知県名古屋市出身で、SKE48のメンバーとして活動していた経歴を持つ。高柳は「地元が名古屋なので、中京テレビさんの作品に出演させていただけることがすごくうれしいです」とコメント。また、「監督や脚本家の方に自分のパーソナリティについてインタビューしていただいたとき、『何よりも鳥が好き』ということをお話ししたら、四ノ宮もお家で鳥を飼っているという設定になりました(笑)。四ノ宮の待ち受け画面に、私が飼っているコザクラインコの“ぱぴ”が映っているので、ぜひ注目してください!」とワクワクした表情で答えた。

五月女役の日比美思。

アシスタントプロデューサー・五月女役を演じる日比美思は「ワンカットなので本当に緊張しましたが、次のシーンに出演する方にバトンを渡すような気持ちで演じていました。五月女は入社3年目のアシスタントプロデューサーで、一生懸命だけど少し抜けているキャラクター。そんな彼女の性格が物語にどのような影響を及ぼすのか、楽しんでいただけたらと思います」とドラマ版の見どころを挙げながら、9月に上演されるイマーシブシアターにも言及。「“イマーシブ”という言葉には没入するという意味があるので、『スタジオより愛をこめて』の世界観に没入していただけるようにがんばります」と意欲を見せた。

六車役の福田愛依。

アシスタントディレクターの六車役を務める福田愛依は「新人ADの六車ちゃんは、ずばりよく聞き間違いをするトラブルメイカーです!(笑)」と紹介し、登壇者の笑いを誘う。「やる気に満ちあふれた女の子なので、テンションを落とさずにしっかり演じたいと思います。ガッテン!」と、劇中に登場する六車のセリフを引用して意気込みを語った。

“ハートフルリアルタイムドタバタコメディ”の一部をチラ見せ!
ドラマ「スタジオより愛をこめて」収録レポート

ドラマ「スタジオより愛をこめて」より。

会見終了後には前半パートの撮影の“続き”が行われた。撮影に使用されたのは、中京テレビ局内の3階部分。カラフルなセットが組まれたスタジオ、各部屋を結ぶ廊下、出演者・スタッフが打ち合わせを行う控え室、キャストが使用する楽屋など、普段我々が出入りすることのないレアなロケーションを“体感”することができる。

ドラマ「スタジオより愛をこめて」より。

初めは、長江扮する一瀬ADにフィーチャーしたシーンからスタート。出演者・スタッフにあいさつ回りをする一瀬ADに密着する形で、廊下からスタジオへとカメラが入り、一瀬ADがキャスト陣と会話を交わす場面が撮影された。一瀬ADが、福田扮する六車ADにある仕事を依頼したシーンで、メインの被写体が六車ADへスイッチ。「次のシーンに出演する方にバトンを渡すような気持ちで演じていた」という日比のコメントからもわかるように、カメラが捉える“主人公”がキャストAからキャストBへ、続く場面ではキャストBからキャストCへと変わっていく。複数人のキャストが登場するシーンは引きの画で表現され、1人のキャストに焦点を当てたシーンでは、登場人物の心情が伝わりやすいようにキャストの表情をグッと寄りで映すなど、たちばな監督のこだわりが随所に光る。

ドラマ「スタジオより愛をこめて」より。

また、たちばなはカメラワークのみならず、ストーリー構成にも重きを置いており、それぞれの登場人物がどのような関係性なのかを、前半パートの冒頭部分で非常にわかりやすく表現。同期の五月女APに淡い思いを抱く一瀬ADと、その気持ちになかなか気付かない五月女AP、番組の顔を務める二階堂アナウンサーと、裏方として番組を支えてきた三上ディレクターの同期コンビ、おっちょこちょいな後輩AD・六車にあきれながらも、優しく後輩を指導する一瀬ADの先輩後輩コンビ、とある出来事がきっかけで放送直前にナーバスになってしまう四ノ宮アナウンサーと、彼女のメンタルケアをする五月女AP……など、どの組み合わせに着目するかによっても物語の見え方が大きく変わってくる。

会見で「緊張した」と口々に語っていたキャスト陣だったが、本番では純粋に演技を楽しんだ様子。長江は、登場人物の中で随一の“振り回され役”と言っても過言ではない一瀬ADを真っすぐに演じつつ、それぞれのキャストとテンポの良い掛け合いを披露した。砂川扮する二階堂アナウンサーは、クールでプライドが高く、誤解されやすい性格の持ち主だが、実は心の内にある本音をうまく表現することができない役どころ。器用に見えて不器用な二階堂アナウンサーを、砂川は多面的に表現。武子は番組愛あふれる熱血ディレクターを好演しながら、持ち前の豊かな演技力で作品のコメディパートを盛り上げる役割を担った。

テンションのアップダウンが激しい四ノ宮アナウンサー役を演じる高柳は、感情をうまくコントロールしながら表現し、場面ごとに表情をくるくると変えていく。日比は、しっかり者でありながら、鈍感な部分も持ち合わせている五月女APを、落ち着いた演技で芯のあるキャラクターとして立ち上げた。そして最年少キャストの福田は、持ち前の明るさを武器に、おっちょこちょいでがんばり屋、後輩キャラの六車ADをはつらつと演じ切った。

9月に上演されるイマーシブシアターでは、同キャストが立ち上げる演技空間に観客も立ち会うことができる。6名のキャストが紡ぐ“番組愛”を、ぜひ間近で体感してほしい。