初めてのWキャストが凌ちゃんで良かった（一色）

──お二人は今回Wキャストでエドを演じますが、お互いの稽古はご覧になっているのでしょうか？

廣野　毎日のように観てますね。2人共まったく違う役の作り方をしているんですけど、洋平さんが演じるエドを参考にしている部分もあります。お互いどこかに「ここは負けたくない」というこだわりがあるので、それもWキャストの面白いところなんじゃないかと。

一色　僕ら、相手の良いところはすぐにパクりますからね（笑）。エドを演じるうえで統一しなければいけないところ──例えば、このときのエドはこのくらい機械鎧の腕が壊れているよねとか、基準値はそろえるけれど、その表現方法はバラバラ。僕はWキャストの公演に出演すること自体が初めてなんですが、この間、凌ちゃんにポロッと「初めてのWキャストが凌ちゃんで良かった」って言っちゃって……（笑）。

廣野　あれはめっちゃ恥ずかしかったっす！（笑）

一色　ははは！ でも自分が演じる役を俯瞰して観られるのは、本当にありがたいことだよね。

一色洋平

一色洋平

──切磋琢磨し合える、とても素敵な関係ですね。お互いの稽古を観ていて、「一色さんのここがすごい」「廣野さんのここがすごい」と感じるポイントがあれば教えてください。

一色　俳優って、自分の年齢がいくつであったとしても、当てられた役を体現しなければいけないじゃないですか。僕はやっぱり、凌ちゃんの“少年に見える”力がすごいなと思っていて、そこにとても憧れますね。

廣野　僕は、洋平さんの演劇に対する熱さかな。さち子さんが製作発表会で「“愛”の一色、“怒り”の廣野」と例えていたように、洋平さんはエドが持つ“良いオーラ”を常にまとっていて、それは愛にあふれる人だからこそ表現できることだと思うんです。もちろん技術も必要だけど、役者をやるうえで大事なのは洗練された心。洋平さんが舞台に立つと、その情熱が突き刺さってくるんです。でも僕が洋平さんのエドをまねしようとすると、さち子さんから「気合い入りすぎだよ！」って言われちゃうんですけど（笑）。

一色　ははは！ うれしいな。この記事、スクショして保存しようっと（笑）。

廣野　じゃあ僕は印刷してトイレに貼ります（笑）。

“人間の力”を観てほしい

──原作でもアクションシーンが見どころの1つとなっていますが、今回は劇中に殺陣が多く盛り込まれるのでしょうか？

一色　さち子さんが稽古で「なぜ殴るのか、何を目的として戦うのか。意味のあるぶつかり合いが行われることが重要だから」とおっしゃっていて。今までの経験から、エンタテインメント作品としては長めにアクションを見せたほうが良いんじゃないか、という気持ちがどこかにあったんですけど、必ずしもそうではないんだなと考えるようになりました。なので、余計な疲れはありません。

──また本作では、音楽監督の森大輔さん率いるバンドの生演奏が披露されます。

廣野　劇中、効果的な場所で生バンドの演奏が入るので、お客さんの感動のギアを1段階上げるようなカンフル剤になるんじゃないかと。ジャムセッションのような形になるそうなので、ライブ感も楽しめると思います。

廣野凌大

廣野凌大

一色　さち子さんもこだわっているところなんですけど、僕は特にドラムの使い方がすごく面白いなと思うんです。録音ではなく、その場にある楽器の音が空気の振動としてお客さんに伝わるって特別なことだし、すべての回に生バンドが入るのはとてもぜいたくなこと。バンドの方々も、今回の座組の重要なパートとして捉えていただけたらと思います。

──キャラクター1人ひとりをリアルな人物として立ち上げる俳優陣の演技、重厚なストーリー展開、こだわり抜いたアクション、観客の心を動かすバンドの生演奏と、各セクションの力が集結した総合芸術になりそうです。舞台ハガレンを観るうえで、お二人は特にどこに注目してほしいですか？

廣野　演劇の面白いところって、どこを見ても“人間”が存在しているところだと思うんです。何気ないシーンにも熱を注いでいるので、むしろセリフを発していない人を観てもらいたいですね。そこで、「このキャラクターってこの場面ではこんな表情をしてたんだ」とか、「このキャラクターが実在していたらこんな感じなんだ」とか、“リアル感”を味わってもらえたらうれしいです。

一色　個人的に、舞台ハガレンって「ナショナル・シアター・ライブ」（編集注：英国ナショナル・シアターの舞台映像を映画館で上映する企画）みたいだなと思って。あまりネタバレはできないのですが、舞台ハガレンは場面転換がとにかく粋なんです。例えば電動式の盆を回すよりも、人力で盆を回すほうがはるかに効果的に見えることがある。マンガやアニメの舞台化作品を観ると、「このチームはあの原作をこう読み解いたんだな」という跡が見えるじゃないですか。今回の舞台ハガレンカンパニーは「僕らはハガレンのこの部分をカッコいいと思っていて、こう表現したいと思っています」という共通言語をしっかり持っている。観客の皆さんにもその部分が伝わったらうれしいですね。

廣野　そうですね。とにかく“人間の力”を観てほしい。舞台ハガレンは言葉で伝えきれないくらいの愛が詰まっている作品なんです。自信を持って面白いと言える作品だし、観に来てくださったお客さんに後悔はさせません。ぜひ観に来ていただけると幸いです。

一色　この春って面白い舞台がたくさん上演されるんですよね。まずはその中で1番を目指したい！ 僕たちはお客さんのことを共に旅をする仲間だと思っていますので、ぜひ劇場にお越しいただき、僕たちと旅路をご一緒していただければと思います。

左から一色洋平、廣野凌大。