ライブを通して実感した“相性の良さ”

──2019年10月18日にはプレビューライブも行われました。第1部では「ドン・カルロ」「ラ・ボエーム」などのオペラ歌曲、第2部では本アルバムにも収録されているミュージカルソングと、おふたりのアンサンブルとしての幅広さが存分に発揮されています。お客さんの前でユニットとしての歌声を披露して、どんな手応えを感じられましたか？

大田　緊張しましたね。

田中　オペラの重唱は、ほかのテノールの方とも歌ったことのある曲ばかりだったので、完成形の想像がつきやすかったんですけど、2部で披露した曲は、まだアンサンブルを作っていく過程の段階だったから、正直かなりチャレンジングだったんです。

大田　もちろん稽古はしていましたけど、やっぱりお客さんの前で歌って初めて完成するので。

田中　でもプレライブをやったことで、互いの性格や歌の個性もわかったし、今後の方向性が定まった感じがしたよね。

大田　そうですね。MCも含め、うまく噛み合うか心配だったんですけど、かなり気持ちよく進められたので、改めて僕たちは相性がいいなって（笑）。

田中　大田くん、MC中に困ると、僕に「俊太郎さん、お願いします！」ってすぐ振ってくるよね（笑）。

大田　だって、俊太郎さん、先生みたいにスラスラ答えてくれるんですもん。お客さんが楽しめてこそだと思うので、MCでもいろいろなことに挑戦していきたいなあ。コントもやってみたい。

──アンコールで披露された「巴里のアメリカ人」の「天国への階段」では、客席を回っていましたね。

田中　普段クラシックの演奏会で「カッコいい」って言われることはあんまりないんですけど、ライブではけっこう言ってもらえて。

大田　お客さん1人ひとりの顔がはっきり見えたんですけど、皆さんすごく楽しそうに観てくださっていたので、「あ、これは成功かも」って（笑）。

──4月には、デビュー後初のコンサートを控えています。それに向けて、現在どのような準備をしていらっしゃいますでしょうか。

大田　僕たちを鳥に例えるなら、まだ羽も生えそろっていないどころか、目も開いていない状態なので。

田中　また鳥だ（笑）。

大田　コンサートを通して目が開いて、僕たちが何を目指すのかがわかってくると思います。どこに飛び立っていくかはこれからなんですけど。

田中　その準備段階として、今悩んでいるのが選曲だよね。

大田　歌える曲数が限られているので、自分たちの魅力を最大限に伝えるにはどの曲がいいか、これから話し合っていきたいですね。

重なり合った2つの星がこれから目指すもの

──目標とするような先輩はいらっしゃいますか。

大田　僕は石丸幹二さん。一度お仕事でご一緒したことがあるのですが、すごく素敵な方でした。大学の先輩でもあるので、そういう意味でも背中を追いかけたい存在ですね。

田中　SiriuSとして目指したいのは、男性2人組ユニットのマイケル・ボール＆アルフィー・ボー。2人とも全然声の個性も違うし、表現の個性も違うんですけど、それでもいいデュエットになっているところに憧れます。僕たちもそうなれたらいいな。

──これからSiriuSで挑戦してみたいことは？

田中　日本の歌ですね。僕が研究していたのもあるし、大田くんもミュージカルに出演するときは日本語で歌唱することが多いので。今回のアルバムは英語で歌いましたが、滝廉太郎とか、日本の歌を男性デュオバージョンで歌えたら楽しいだろうなあ。

大田　個人的に昭和の歌謡曲が好きなので（笑）、2人で歌ってみたいですね。すごくカッコよくなると思います。歌いたい曲、たくさんあるなあ。あと一緒にミュージカルとか。「オペラ座の怪人」のファントムとラウルを一緒にできたら楽しそう。

田中　確かに。いいね。

──SiriuSというユニット名は、2つの連星が重なった、地上から見える最も明るい恒星・シリウスが由来です。これからおふたりは、どういう輝き方をしていきたいと思いますか？

大田　僕は、お互いに尊重して歩み寄って、きれいなハーモニーを作り上げつつ、それぞれの尖った部分、個性の部分も残しておきたいと思うんです。だから、同じ場所で一緒に輝くけど、光の色はそれぞれ違って、さらにその混ざった色がきれいだったら、一番うれしいですね。

田中　……僕も、そう思います。

大田　アハハ！

田中　それ以上素敵なことが言えないよ……（笑）。でも、本当に大田くんの言う通りで。何度も音源を聞き直す中で、僕たち2人の声や表現の個性の違いがすごくよくわかったんです。だから、お互いの個性をもっと磨いて濃くしつつ、アンサンブルの部分でしっかりと調和させていく。それが僕たちの理想的な輝き方ですね。