選曲の基準は、“今の僕たちが歌って魅力を出せるかどうか”
──さて、今回のデビューアルバム「MY FAVORITE THINGS」には、「トップ・ハット」や「オン・ザ・タウン」といった1930年~40年代の曲から、近年発表された「グレイテスト・ショーマン」といった、かなり幅広い年代の曲が収録されています。選曲はどのようにされたのでしょうか?
大田 いろいろな方と相談しながら決めたのですが、最終的な基準は、“今の僕たちが歌って魅力を出せる曲かどうか”です。なので、練習したけど収録しなかった曲もありました。
──表題曲の「私のお気に入り」もそうですが、特に「チキ・チキ・バン・バン」を聴いたとき、曲に対して持っていたポップでコミカルな曲のイメージが一新されました。誰でも知っているミュージカルソングが、こんなに違和感なく、艶っぽい仕上がりになるのか、と。
田中 アルバムを作り上げる中で意識したのは、当たり前ですが2人でよく話し合うことですね。いただいた楽譜をよりよくするために、いろいろな声の音色を試したり、歌い方を調節してみたり。
大田 何がベストなのか、2人で試行錯誤を繰り返しましたね。
──特に“お気に入り”の曲や、思い入れがある曲はありますか?
大田 どれもお気に入りなんですけど、個人的に好きなのが「スウィーニー・トッド」の「僕がいる限りは」。
田中 ……僕も同じ曲を言おうとしてた(笑)。
大田 え、ほんとですか(笑)。あ、でもなんで好きなのかは説明できない。俊太郎さん、お願いします!
田中 わかりました(笑)。この曲はすごく静かなところから始まって、徐々に壮大になっていくんですけど、この曲の構成自体が、僕らのアンサンブルとしての幅の広さや声と相性がいいんです。
大田 もう1つ挙げていいなら「アンセム」ですね。これは、岡幸二郎さんが僕たちに合うんじゃないかって勧めてくださった曲で。
田中 そのあと呼んでいただいた岡さんの30周年記念コンサートで、3人でフルオケで歌わせてもらったよね(参照:岡幸二郎の30周年コンサート、佐藤隆紀・小野田龍之介・三浦宏規らと名曲披露)。
大田 すごい経験をさせていただいたなあ……。そういう意味でも思い入れの強い曲なので、アルバムのタイトルも「MY FAVORITE THINGS」か「アンセム」かで、最後まで迷ったんです。
田中 「アンセム」だと、また全然違う雰囲気になるよね(笑)。
──今回のアルバムはミュージカルソングが中心ですが、クラシックと歌へのアプローチは異なりますか?
田中 そうですね……クラシックの場合は楽譜を基盤に作り上げていくんですけど、ミュージカル楽曲の場合は役や物語から音楽を作り上げていくことが多いですね。
大田 最終的に追求するものは一緒ですけど、スタート地点が違うイメージです。
──ちなみに、おふたりはカラオケだとどんな曲を歌われるんですか?
田中 カラオケですか? うーん、最近は練習のためにしかカラオケに行ってないからなあ……(笑)。あ、でも僕、洋楽だとスティーヴィー・ワンダーが好き。音域が高いからバリトンには歌いにくいんですけど、チャレンジしています。あとはシャ乱Qですね。
大田 僕は昭和歌謡が好きで! カラオケだと、さだまさしさん、かぐや姫さん、あと井上陽水さんを歌いますね。友達と一緒に行ったときに盛り上げられるよう、アニメソングも練習しています。最近歌えるようになったのは、アニメ「ワンピース」の「ウィーアー!」。
──大田さんが歌うと、とっても盛り上がりそうですね!
大田 ここで盛り上げるぞ!っていうときの持ちネタです(笑)。
大田くんは天才です!
──今回は、デビューアルバム「MY FAVORITE THINGS」のタイトルにちなんで、2人の“お気に入りのもの”を持ってきていただきました。
田中 僕はカメラです。登山用のテントと迷ったんですけど、テントはさすがに持って来られなかったので(笑)。でもこのカメラも山に持って行ける、すごく軽いタイプのものなんです。
──登山がお好きなんですね。
田中 僕は出身が島根なんですけど、常に山が見える環境で育ったんです。だから東京にいると、どうしても山を求める気持ちが生まれてしまう(笑)。似たような景色を見ながら、ぼーっといろいろなことを考えるのも好きで。山に登るとリフレッシュできますね。
──大田さんは、動物の図鑑ですね。
田中 「大田」って書いてある(笑)。
大田 母の字です。小学生の頃はランドセルに入れて持ち歩いていたので、失くさないように(笑)。生き物全般が大好きなんですけど、特に鳥が好きですね。家でセキセイインコも飼ってますし、かわいい鳥を見かけると、ついつい立ち止まっちゃいます。あとは恐竜とか、古代の生き物にもロマンを感じます。
田中 大田くん、この間、恐竜の絵描いてたよね。
大田 あれは恐竜じゃなくて、もっと昔の生き物です。
田中 あ、そうなの?
大田 ハルキゲニアですよね?
田中 ……かな?
大田 あれはカンブリア紀の生き物です。まだ無脊椎動物しかいない時代にいた、恐竜より前の……。
田中 (ニヤニヤしながら大田を見つめている)
大田 (田中の視線に気付き)この話題になると、ついついしゃべりすぎちゃうんですよね……。
田中 ハハハ! 大田くんの絵が気になる方は、彼のInstagramを見てください。僕、大田くんの絵のシリーズ大好きなんですよ。「1人だけシラフのヤマタノオロチ」とか(笑)。
大田 ああ……俊太郎さんが笑ってたやつですよね。
田中 僕が出雲出身なんで、出雲の神話から大田くんが着想を得て。
大田 ヤマタノオロチってお酒を飲まされて退治されるじゃないですか。でも8個も頭があったら、1人くらい飲まないやつがいるんじゃないかなって前々から思ってて。それで描いたのが「1人だけシラフのヤマタノオロチ」です。
田中 これを見たとき、すごく感動したんです。こういう、ちょっと考えないとわからないような絵を描くんですよ、大田くんは。やっぱり天才だな。
大田 いやいや、ただの思い付きですよ(笑)。
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ライブを通して実感した“相性の良さ”
2020年4月17日更新