「機械城奇譚」はやっぱり大切な作品(山川)
──少年社中は今年2月に20周年を迎えました。これまでの活動の中で印象深かった作品や大変だった公演のエピソードなどを教えてください。
竹内 大変だったって言ったら、やっぱり最新作の「MAPS」(2018年)ですかね(参照:少年社中「MAPS」開幕、3つの嘘で新たな“地図”描く意欲作)。ブロックの配置換えが大変で。
一同 あー。
山川 僕が一番しんどかったのは「ラジオスターの悲劇」(13年)かな。朗読パートの主演が日替わりだったから、毎日誰かしらの初日だし、誰かしらの楽日でもあって……。
堀池 通し稽古をトータルで40数ステージやったんじゃないかって言うね。
内山 私が初めて青山円形劇場に立ったのが「ネバーランド」(10年)で、もちろんお客さんから見えるところでも走るんですけど、実は裏でもすごく走ってて。
大竹 円形は走ったねえ。「ハイレゾ―high resolution―」(04年)で円形の劇場下見に行ったとき、対角の登退口まで何秒かかるかって言うのをストップウォッチで計ったこともあった。
竹内 うちの作品はよく走りますからね。
堀池 早稲田の演劇研究会時代の話なんですけど、「光之帝国-The empire of shine-」(00年)のときに大隈講堂の裏にテントを立てたんです。イントレ(鉄製パイプを使用した組み立て式の足場)を5段くらい立てて、その上にビニールのテントシートを貼ったんですけど、全部人力でやったから本当に大変で。その公演は演出も凝ってて、舞台上にコンクリートを撒いたんです。終演後、掃除しても掃除しても延々とコンクリートの欠片が出てくるんですよ! 「これ、どこまでやったら終わったことになるんだろう」みたいな(笑)。
大竹 今はもうできないけど、2メートルくらいの高さから「ジャンプして」って毛利さんに言われて、怖かったけど飛んでましたね。
内山 「屈伸せずに着地せよ」って言われたの誰でしたっけ?
大竹 岩田(有民)さんか井俣さんかな。
竹内 そんなのできるの人間じゃないよ!
堀池 「光の帝国」(05年)のときは、青山円形の外回りのバルコニーから飛び降りましたね。いやあ、ハードでした。
大竹 つらい話はいくらでも出てくるよね。
一同 ははは。
山川 でも俺、やっぱり大切なのは「機械城奇譚」(10年)だなあ。
一同 あー。
山川 少年社中の“芯”が詰まってるのがこの作品だと思うから、「社中の代表作は?」って聞かれたら「機械城」って答えてます。
──今回の「機械城奇譚」は「チャンドラ・ワークス ーChandra Worksー」(07年)以来、11年ぶりの劇団員のみの公演となります。多彩な客演陣と劇団員の皆さんが絶妙なバランスで力を合わせて作り上げる公演も少年社中作品の魅力の1つですが、客演の方がいらっしゃる公演と劇団員のみの公演ではどんなところが違うと感じますか?
大竹 出演者が大勢いる舞台だとペアを組んだりグループになったりすることはあるものの、劇団員同士が正面からお芝居をすることが実際あまりなくて。いつもの公演だとほかの劇団員が出ているシーンを見て、「あの人、あんなことやってるのか。私もがんばろう」みたいに思うんですけど、今回はしっかり1対1でお芝居できてうれしいなって思います。
堀池 自分は逆に気を遣いそうな感じがしてたんですけど……。
大竹 マジ!?
堀池 でも今日初めて本読みしてみて、「あれ? そんなこともないのかな」って思いました(取材は7月下旬に行われた)。
大竹 気遣ってみたらいいんじゃない?(笑)
堀池 ははは! 僕の場合そうかもしれない。
大竹 いい意味でお互いに気を配れたらいいよね。「機械城」初演のときは自分のことで精一杯だったけど、今回はもう1つ先のステージに行けたらいいなと思います。
堀池 (杉山に)“まっすぐなひねくれ者”的にはどうなの? 今回。
杉山 ……やっぱり悪口じゃんこれ!
一同 ははは!
杉山 いつもはかわいい子たちがいるけど、今回はそれがないなーって。
大竹 潤いがないなー、みたいな?
杉山 そうそう。
山川 でもかわいい後輩たちがいるでしょ?
杉山 (内山と竹内に向かって)そうだった、そうだった(笑)。
少年社中とは少年社中である(大竹)
──長い時間を共にしてきた中で、特に記憶に残っている毛利さんの名言や迷言を教えてください。
山川 ライトなところで言うと、よく役名は間違いますね。誰かと誰かの役名が混ざっちゃって新しい名前が生まれるみたいな。
堀池 昔、通し稽古が終わってダメ出し始まるぞってときに、井俣さんが「バイトがあって……」と帰ろうとしたことに 対して毛利さんがブチ切れて。目の前の缶コーヒーを投げようとしたけど思い留まって、代わりに自分のメガネをぶん投げて、「何のために東京出てきたんだよ!」って言ったんです。
一同 アツい!
堀池 そんな感じでしたよね?
井俣 ……あんまり覚えてない(笑)。
一同 ははは!
山川 毛利さん、井俣さんに対してはやっぱり“友人感”が出るときありますよね。
堀池 20年来の付き合いだもんなあ。
杉山 さっきも少し話題に出ましたが、「MAPS」でブロックの配置換えをする作業がやっぱり大変で。稽古の時間も限られてるし、この部分はほどほどにして次にいっちゃおうみたいな空気が流れたときに、毛利さんが「段取りなんかいいんだよ! 面白いもの作るんだろ!」って言ったんです。そのとき、「あ! 演出家だ」って思って。あれが最近で一番カッコよかった瞬間でしたね。
堀池 すごくハッとしたよね。
──最後に、皆さんにとって少年社中とはどのような存在でしょうか?
山川 友達じゃないんだよね。同僚でもないし。
竹内 家族って言うのともちょっと違いますしね。
内山 「少年社中とは?」っていう質問の答えとは違うんですけど、「役者の仕事で唯一保証されてるのは、一生青春できることだよね」って(長谷川)太郎さんと話してて。個人的には、会社ほどシステマチックではない、かと言って大人すぎないところが部活に似てるのかなって思います。
大竹 ほかの劇団さんはどうなんだろう? 聞いてみたいね。
竹内 僕は労働組合みたいな感じですね。
大竹 新しいな!(笑)
竹内 入団するときに毛利さんに言われたんですよ。「みんなを育てていくって言うよりも、公演ごとに各々が力を持ち寄って作品を作っていくみたいな場所」だって。
大竹 なるほどね。結成から20年経って、みんなと過ごした時間が親といる時間より長くなったけど、何でもあけすけに話す関係と言うわけでもないし、家族、兄弟、親戚、友人とか、いろいろ当てはめてみたんですけど、「少年社中とは少年社中である」ってところに落ち着いちゃって。
堀池 もうね、これが答えです。
一同 ははは! 「少年社中とは少年社中である」。
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社中・文化系座談会
- 「少年社中20周年記念第三弾 第35回公演『機械城奇譚』」
- 2018年8月30日(木)~9月9日(日)東京都 ザ・ポケット
脚本・演出:毛利亘宏
出演:井俣太良、大竹えり、岩田有民、堀池直毅、加藤良子、廿浦裕介、長谷川太郎、杉山未央、山川ありそ、内山智絵、竹内尚文、川本裕之
- あらすじ
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舞台は“機械城”と呼ばれるとある店。その店の古物商は、壊れた不思議な機械だけを取り扱っている。機械たちは夜な夜な人の言葉で話し、誰が一番素敵な機械かを決めようとしていた。彼らが毎晩宴を繰り広げる中、ある日機械城に新たな機械・時計がやってくる。彼は「自分は自由に時を操ることができる」と告げ……。その夜、奇跡は起きる。
- 大竹えり(オオタケエリ)
- 1976年4月30日生まれ。少年社中旗揚げメンバー。
- 堀池直毅(ホリイケナオタカ)
- 1980年7月22日生まれ。00年の第7回公演「光之帝國 ―The empire of shine―」より少年社中に参加。
- 杉山未央(スギヤマミオ)
- 1979年7月24日生まれ。03年の第12回公演「シナファイ ―china fight―」より少年社中に参加。
- 山川ありそ(ヤマカワアリソ)
- 1985年7月12日生まれ。05年の第16回公演「光の帝國」より少年社中に参加。
- 内山智絵(ウチヤマチエ)
- 1984年1月12日生まれ。10年の第23回公演「ネバーランド」を経て少年社中に正式入団。
- 竹内尚文(タケウチナオフミ)
- 1988年7月11日生まれ。10年の第23回公演「ネバーランド」を経て少年社中に正式入団。
2018年12月28日更新