舞台は令和の飛田新地…“自分との折り合いのつけ方”を探す、製作委員会「メイン通りの妖怪」 (2/2)

自分と折り合いをつけながら演劇を続けていく

──製作委員会では、三十代以上の俳優たちと共に、ミドルエイジに焦点を当てたコメディを発表してきました。また本作には、“自分との折り合いのつけ方コメディ”というキャッチコピーが付けられています。近年ではコロナの影響もあり、演劇活動を継続していくことが難しい側面もありますが、演劇を続けていくうえで自分自身の中でどのように折り合いをつけているのか、考えていることがありましたら教えてください。

小谷 「メイン通りの妖怪」では、ゆきが飛田から卒業するまでの出来事を描いているのですが、それが単なる卒業を意味するのか、それともステップアップになるのかはまだわからない。人生100年時代になったので、ゆきが六十代で飛田を卒業するという決断をしたのは青臭いのかもしれないんですけど、自分自身の人生について考える時期に差し掛かったゆきの生き方を通して、何か感じてもらえたらと思い、“自分との折り合いのつけ方コメディ”というキャッチコピーをつけました。

人はある程度の年齢になると、今までやってきたこととこれまでの自分自身との折り合いをつける作業が必要になってくると思うんです。もしかすると2年おきくらいに自分自身を省みる必要が出てくるかもしれない。演劇をやるのは大変だし嫌なこともたくさんある。ただ、ずっと前から薄々感じていたんですが、「どうせ自分、(演劇)やるんだろうな」って。演劇をやっていくのは苦しいんですけど、今の自分にとっては「演劇をやらない」という選択をするほうが苦しいんですね。なので、とりあえずやれる限りは演劇を続けていきたいなと思っています。

宮坂 “自分との折り合いのつけ方”ねえ……。年齢的に体力や記憶力が衰えてきて、若い子とは同じことができなくなってきたのがもどかしいこともあるけど、「これは無理」「でも、これならできそう」という見極めをしながら、新しいことをやっていくのが自分なりの“折り合いの付け方”なのかな。

砂山 あまり関係ないかもしれないんですが、人と人との関わりも“折り合いのつけ方“が大事だと感じていて。例えば、お芝居において「あの人はこういうことを考えてアクションを起こしたと思っていたけど、実はこう考えていたんだ」というふうに、相手のことが見えて来たとき、ようやく自分がどう見られているかがわかるようになる。主観と客観を意識して演技をするようになってから、お芝居に対する姿勢が変わったなと思います。

砂山康之

砂山康之

──なるほど、お芝居は相手があってこそ成立するものですよね。では最後に「メイン通りの妖怪」の公演に向けた意気込み、ご覧になる観客の方々に向けてメッセージをお願いします。

ナグラドウ コロナ禍ということもあり、声を出すのは難しいかもしれませんが、少しでもお客さんが楽しんでいる反応を肌で感じられたら良いなって思います。

渡辺 「メイン通りの妖怪」は、自分と同じくらいの年代の女性にこの作品を観てほしいなと思っていて。私が演じるさやかも、紆余曲折があって今に至っている。お客さんそれぞれに刺さるキャラクターやグッとくるセリフがあると思うので、そこを楽しんでいただけたら。

渡辺千穂

渡辺千穂

秋山 さっき宮坂さんがおっしゃっていたように、年齢が上がるほど折り合いをつけていかないといけないことが増えるので、自分自身、身につまされるものがありそうですよね。はっしーという役どころに関しては、子供の頃関西のラジオを聴いていた経験を生かして、昔を懐かしみながら役作りをしていけたらと思っています。

砂山 製作委員会さんの現場はアットホームなので、そういう現場でなければ出せないもの、信頼関係があるからこそ発揮できる力があると思うんです。そういうものを大切にして演じたいですね。

宮坂 そうですね。私はとにかくお客さんに楽しんで帰ってもらえれば良いかな。希望が見えるような作品にしたいなって思います。

小谷 飛田新地を題材にしたコメディを上演するにあたって、拒否反応を示す方もいると思うんです。観ているときにはいろいろなことを感じるけれども、劇場を出たときにフッと気持ちが軽くなっているものがコメディだと私は思っているので、まずこの題材をおもしろおかしく扱おうと思っているわけではないということを知っていただきたいですね。飛田を卒業しても、ゆきは生きていく。この作品を通して、彼女の強さや人生からの“降りなさ”を観ていただけたら良いなと思います。

左から砂山康之、秋山ゆきを、小谷陽子、宮坂公子、ナグラドウチエ、渡辺千穂。

左から砂山康之、秋山ゆきを、小谷陽子、宮坂公子、ナグラドウチエ、渡辺千穂。

プロフィール

小谷陽子(コタニヨウコ)

早稲田大学第一文学部演劇専修を卒業後、役者として活動。2010年に演劇ユニット・製作委員会を立ち上げた。

宮坂公子(ミヤサカトモコ)

1955年生まれ。女優。早稲田大学演劇研究会出身。日本コメディ協会会員。

秋山ゆきを(アキヤマユキヲ)

俳優。シーグリーン所属。

砂山康之(スナヤマヤスユキ)

舞台俳優・シンガー。ミュージカル座の作品ほかに出演。

ナグラドウチエ

女優。Fairy Angel Promotion & Planning(FAPP)所属。

渡辺千穂(ワタナベチホ)

女優。シーグリーン所属。