劇団青年座 青年座研究所ってこんなところ! 七転び八起き、研究生奮闘記|実習公演ビフォーアフター、研究生による座談会&稽古レポート

2年間の集大成、卒業公演「時の物置」に向けて

──2018年2月に行われる卒業公演は、演目が永井愛さん作の「時の物置」に決まりました。この2年間の集大成を見せる締めくくりになりそうですね。

葛山 卒業公演は誰より楽しみたいです。演出家の黒岩亮さんは非常に厳しい方とお聞きしているので、コテンパンにされるのは目に見えていますが、ルールを自分で決めてそこに埋もれてしまうと、おそらくお客さんも楽しめないと思うので。

田邉稚菜

田邉 私もお客さんに楽しんでいただけるものを作りたいなと。

老川 繊細に演じて、お客さんも相手役も惹きつけられるものを出したいですね。

小松 僕は感情が高ぶるとセリフのトーンが単調になってしまうので、ちゃんとセリフでキャッチボールして「小松、すげぇ!」と思わせたいです。

安達 課題は簡潔に、小さくまとまらず、チャレンジすることを忘れず、想像することをやめないこと。

江澤 教わってきた先生方にも、自分の成長を見せたいです。

青年座研究所での2年間を振り返って

──青年座研究所で学んできたことを振り返って、この2年間を漢字2文字で表すなら、どんな言葉になるでしょう? また、ここで出会った同期の仲間たちってどんな存在ですか?

実習公演「『岸田國士集』~動員挿話 歳月~」より。(撮影:小林万里)

老川 研究所での2年間はまさに“戦場”でした。何もしなければただ撃たれて死ぬだけ。楽しいことばかりでなくつらいことにも耐えて一緒に乗り超えてきたメンバーなので、やはり同志感が強いですね。

小松 一言で表すと“成長”です。僕は演劇のことが何もわからなかったので、研究所で勉強させていただき本当に感謝しています。同期は一番刺激がもらえる存在。誰かが先に売れたら嫉妬しちゃうし、誰より先に売れたい(笑)。

江澤 私は同期の中で一番「自立しなさい」と先生から言われてきたので、“自立”です。まだできていない部分もありますが、自分で動くから得られるものが増えるんだと教わりました。卒業しても、同期の存在に励まされ、自分のがんばる力にもなるんだろうなと思います。

田邉 今までやってきた成果が目に見えて評価されたり、結果として出る場所。なので“比較”ですね。今後こんな貴重な場所はないだろうなと思います。だから同期は一番頼りになるし、一番悔しい存在でもあるかな。

安達 技術的なことは、何回もやって身体に染み込ませなきゃいけないんだと痛感したので“反復”。同期は大切な人たちですね。

葛山 この2年間は時間が経つのがすごく早く感じたので、“加速”になるかな。同期は友達でありライバルであり、本当に密接な関係。できたらもう1度一緒に芝居をやりたい人たちです。正直、嫌いなところもありますが、芝居を作ってきた時間は楽しい時間でもあったので。

──研究所での2年間は長かったですか? 短かったですか? 

左から安達絹二郎、葛山陽平、小松亮太、江澤蛍、老川礼菜、田邉稚菜。

江澤 短かったですね。

小松 短かった……。

田邉 一瞬でしたね。

老川 実習公演も3カ月ありましたが、本当にあっという間でした。

安達 この2年は人生で絶対に忘れられない1コマになってます。

葛山 走馬灯には必ず組み込まれるでしょうね(笑)。

──皆さんにお話を伺っていると、研究所の2年がとても濃密だったことが伝わってきます。卒業公演に向けてがんばってください!

青年座研究所教務 / 実習公演「『岸田國士集』~動員挿話 歳月~」 演出家・磯村純より

研究生たちも1人の表現者として自立してほしい

磯村純

磯村純

実習公演の核になるのは、研究生が俳優としていかに伸びるかということ。今回は「台本を解釈して役を構築する、役柄としてセリフをしゃべる」ということを最初の目標にしていたのですが、そのやり方や大事さには、研究生それぞれが気付いてくれたんじゃないかと思います。岸田國士作品を選んだのは、日本語をちゃんと話すことを実践させたかったからなんですが、そういう意味では、半歩くらいは進んでくれたんじゃないかな(笑)。研究生たちと芝居を作るときは、普段の劇団でのクリエーションに比べて、作品や役を構築する“方法論”の部分から「こうやってしゃべろう、こうやって動こう」と投げかけていかなくてはならないので、正直労力を使いますし、毎回ヘトヘトです。でも研究生にも1人の表現者として自立してほしいと思っているので、ただこちらが思うようにやらせるのではなく、自発的に考えてくれるよう、促しています。

青年座研究所は基礎訓練のカリキュラムが充実していることはもちろん、普段、劇団の本公演に関わっているスタッフが実習公演にも関わるので、単に学校としてというより現場の空気がダイレクトに感じられると思いますね。青年座は64年という歴史がありますから先輩方も仲間も、とにかくたくさんの人がいる。よく怒られたりもするけれど(笑)、親身になって話を聞いてくれたり、面白いお芝居を作ろうという気概を持った人がたくさん集まっているので、それは財産だなと思います。研究所はその“仲間”を見つける場所でもあるので、最初は技術がなくてもよいので、とにかく芝居が好きで好きで仕方ないと言うような、熱意のある人に集まって来てほしいですね。

プロフィール
磯村純(イソムラジュン)
1972年愛知県出身。桐朋学園短期大学専攻科演劇専攻修了後、96年に劇団青年座文芸部に入団し宮田慶子に師事する。98年に青年座スタジオ公演「こもれびの中で」で演出家デビュー。主な演出作品に青年座「さよなら竜馬」(マキノノゾミ作)、「蛇」(赤堀雅秋作)、「俺の酒が呑めない」(古川貴義作)、「ブンナよ、木からおりてこい」(水上勉作、2012~17年上演)など。青年座研究所教務、日本大学藝術学部映画学科非常勤講師、日本工学院専門学校講師。
「劇団青年座研究所」
劇団青年座研究所

劇団青年座研究所は、これまでに1000人を超える卒業生を演劇界・芸能界に送り出してきた。その特徴は充実したカリキュラムと多彩な講師陣にある。基礎的な身体訓練から実践的な俳優訓練まで、経験豊かな講師陣が俳優としての才能を導き、舞台、映像の現場で活躍できる人材の育成を目指している。劇団青年座研究所では青年座や演劇界を背負って立つ若い力、新しい感性と強い意志を持つ俳優志望者を募集中。2018年度本科入所試験は、1次募集を2018年1月20日(土)、2次募集を3月1日(木)に実施。実習科の入所試験は、2月28日(水)に行われる。募集要項・願書の請求は公式サイトで確認を。