矢部昌暉インタビュー
青目甲斐児のルール、正義が何なのかを追求して演じたい
──原作小説を読んで、どのような感想を持ちましたか?
人間が善、妖人が悪という対立構造ではなく、どちらにも善人と悪人がいる。主人公が妖人で、人間である警察と共に事件を解決するという設定が面白いなと思いました。
──矢部さんが演じる青目甲斐児は、洗足伊織が捜査協力をする事件の黒幕的な存在として現れる妖人です。彼にどのような魅力を感じますか?
どこかつかみどころがなく、一見すると「良い人なのかな?」とも思えるほど人を惹き付ける力があるなと感じました。
──女性にモテて、住まいを転々としながら生きる青目甲斐児ですが、洗足伊織には執着心があります。ご自身と共通点があるとしたらどこでしょうか?
僕自身1人が好きで、あまり人に興味がないんです(笑)。そういう意味では、常に人と関わっている青目甲斐児とは真逆の性格ですね。真逆の性格だからこそ、僕自身もどのように青目を表現するのかワクワクしています。
──矢部さんには青目甲斐児のようなヒール役の印象がありません。どんなところに悪役を演じる楽しさを見いだせそうですか?
悪役って、自分が悪だとは思っていないと思うんですよ。自分の中でのルールや正義に沿って行動する。それが普通の人からしたら悪に見えるだけ。だから、悪役を演じるというよりは青目のルール、正義が何なのかを追求して演じていければなと思います。
いつもニコニコしている佐奈くんは“座敷童”
──主人公・洗足伊織を演じる佐奈宏紀さんの俳優としての印象を教えてください。
役のことを緻密に考え、しっかり計算して演じていらっしゃるなと感じました。あと、人のことをすごくよく見ているなと思います。
──洗足伊織は人間と妖人の間に立ち、内心は複雑な部分を抱えた人物ですが、青目甲斐児がそばに居ることで彼のどのような部分を引き出せたら良いと思いますか?
伊織と青目は過去に何かある、腐れ縁という関係です。普段は毒舌家な伊織だけど青目といるときは少し動揺するとか、困るとか、普段とは違う伊織を引き出せる存在になれたらなと思います。
──佐奈さんが演じる洗足伊織はどのような人物になりそうでしょうか?
すごくイメージにピッタリだなと思います。個人的に佐奈くんのハスキーな声が好きで、それが伊織の妖艶さとマッチすると思うので、楽しみです。
──佐奈さんがもし“妖人”だったら、その能力(才能)は何になると思いますか?
人のことをよく見ているし、いつもニコニコしていて周りを明るくするから、今回の作品で言う“座敷童”かなと思います。前回共演したナイステでは同じ役を演じたため、一緒にお芝居をやり合うということができなかったので、今回どのようにお芝居のやり取りができるのか楽しみです。
耳だけで観劇できる朗読劇、だからこそ僕らは…
──舞台、音楽と、ジャンルを飛び越えて活動している矢部さんは朗読劇の面白さをどこに感じますか?
舞台は目でも耳でも作品を感じ取ることができてわかりやすいぶん、お客様が広い舞台上で行われているすべてのことを把握するのって難しいと思うんです。こっちの役の人のセリフを聞いていたら、あっちの役の人がどういう行動をしていたか見逃した、など。その点、朗読劇は耳だけで観劇できると言っても過言ではないので、より集中して作品を楽しむことができると思います。だからこそ、演じる僕らとしては声だけで100%以上の表現をしなければいけないので、より難しくなりますが、そこがやりがいのあるところでもあると思います。また、演出の山崎さんは今回初めてご一緒するので、どんな演出になるか楽しみです。
──朗読劇「妖琦庵夜話 その探偵、人にあらず」では、観客に何を楽しんでもらいたいですか?
朗読劇ならではの声だけでの表現、会話劇を楽しんでもらえたらなと思います。
プロフィール
矢部昌暉(ヤベマサキ)
1998年、東京都生まれ。俳優。DISH//ではコーラスとギターを担当する。近年の出演作にミュージカル「ジェイミー」、「NIGHT HEAD 2041-THE STAGE-」、山田ジャパン「不安の倒し方について」、新感覚恋愛×マーダーミステリー劇「Love Letter for You」など。10月28日から「『青山オペレッタ THE STAGE』第四弾公演~2周年記念公演開催~スペシャル・レヴューショー」に出演。12月に舞台「私立探偵 濱マイク-我が人生最悪の時-」、2023年1月に舞台「風が強く吹いている」が控える。