俳優として、声優として
──「ペット リマスター・エディション」のほか、三宅乱丈さんのマンガはこれまでに、“仏教専門学園”を題材としたデビュー作「ぶっせん」(13年)や、第13回文化庁メディア芸術祭マンガ部門で優秀賞を受賞したSFファンタジー「イムリ」(17年)といった作品が舞台化されています。「ペット」をはじめ、三宅先生の作品にはどのようなイメージを持っていますか?
三宅先生の作品に触れたのは「ペット」が初めてだったのですが、正直なところ、「難しい……!」と思いました。だけど、繰り返し読むうちにどんどん作品の深さがわかってきて。「王室教師ハイネ」(17年)もそうですが、舞台版とアニメ版の両方に出演させていただく機会を通して、作品世界を舞台で表現できたり、声だけで演じられたら、役者としての幅がもっと広がるんじゃないかなって思うんです。
──アニメ「王室教師ハイネ」では、アフレコの際に苦労されたそうですね。
何もわからない状態で収録に入ったので、事前にどんな準備をしていったらいいかわからなくて、かなり苦戦しました。そのぶん、たくさん時間をかけてしまったし、いっぱい怒られましたね(笑)。
──「pet」ではきっと、その経験が生かせるのではないでしょうか。
そうですね。普段俳優としてお仕事をさせていただいてる自分が声優のお仕事もやらせていただくことの意味を、観客や視聴者の皆さんにしっかり提示できるようにしないとって思います。
きっと新しい挑戦になる
──植田さんはこれまで、「舞台『弱虫ペダル』」の真波山岳のような、天真爛漫でありながら芯のある人物や、「おそ松さん on STAGE」のチョロ松のようなツッコミが上手いキャラクターまで、さまざまな役を幅広く演じてこられました。今回演じるヒロキという役について、どのような印象をお持ちですか?
ヒロキは司が大好きで、元気いっぱいで、感情の起伏が激しくて、情緒不安定で……僕はけっこう好きなキャラクターですね。身体を目一杯使って演じるタイプの役だと思うので、真っ直ぐに臨みたいなと思っています。まずは12月の「舞台『pet』─壊れた水槽─」で、皆さんの想像を超えた表現をお見せしたいですね。あとは、ヒロキが“イメージ”の中で戦うとき、どのようにして華麗な金魚に変貌するのか。舞台作品としてきっと新しい挑戦になると思うので、ここにも注目してほしいです。
──植田さんがおっしゃったように、舞台「pet」では“イメージ”をどのように表現するかがポイントになってくると思います。演出・脚本を手がける伊勢直弘さんがどのような手法で「pet」の世界を立ち上げるのか、今から非常に楽しみです。
伊勢さんのことですから、現時点でもうすでにいろいろと構想を練っていると思うんです。お芝居のパートもそうですが、例えば映像を使ったパートに対しても自分のビジョンをしっかりと持っていらっしゃる方なので、稽古場でじっくり話しながら作っていけたらいいなと。
──伊勢さんとはこれまでにも舞台「ノラガミ」や、舞台「劇団シャイニング from うたの☆プリンスさまっ♪『天下無敵の忍び道』」などでご一緒されていますが、伊勢さんの演出の魅力はどういったところにあると思いますか?
伊勢さんは、とにかく役者のいいところを生かしてくれるんです。経験がなくてわからない人には動きを付けることがもちろんありますが、基本的に「好きなように動いてみていいよ」という感じで、「そういうアプローチでいくなら、ここをこういうふうに詰めていこうか」とか「その意見、もらった!」といった流れで進めてくださるので、一緒に作品を作ることができる方ですね。
演劇の無限の可能性
──「ペット」は、15年前の03年に誕生してから、長きにわたって愛されている作品です。原作が好きな方に、どのようなアプローチで作品の魅力を伝えたいと考えていらっしゃいますか?
完成された世界観、複雑な人間関係、起承転結のしっかりとしたシナリオ……そういった作品の芯の部分を大切にしながら、古くからのファンの方に新たな「pet」をお届けしたいです。昔から原作が好きな方はもちろん、舞台化・アニメ化をきっかけにこの作品を知った方全員に、15年前に連載されていた「ペット」が今、舞台化・アニメ化される意味や、作品の魅力を今一度伝える義務があると思うとかなりの重責ですね(笑)。会見でもお話しましたが、僕は演劇に無限の可能性があると感じていて。「2.5次元作品とオリジナル作品の違いは?」と聞かれることがよくあるんですが、僕はその違いをあまり意識していないんです。そのことをこの作品で証明したいと言うか、同じように思ってくれる人が増えたらいいなと。今年、「『火花』~Ghost of the Novelist~」や「死神の精度~7Days Judgement」などに出演させていただいて、マンガ・アニメ原作の作品から離れていたぶん、成長して一皮剥けた姿を、この「pet」でお見せできたらと思います。
──本作の作中に、最も幸福な記憶が集まる場所“ヤマ”と、最もつらい記憶が集まる場所“タニ”というキーワードが登場します。もしこの“ヤマ”と“タニ”が存在していると仮定したときに、植田さんにとっての“ヤマ”には、どんな景色が広がっていると思いますか?
うーん、やっぱり“お仕事をしているときの風景”ですかね。いろいろなお仕事させていただいて、確かに大変ではあるけど、自分が死ぬとき走馬灯に出てくるのはきっと今のこの時期なのかな、と。だから今後も役者として腕を磨いて、自分の中の“ヤマ”の景色がもっと豊かになっていけばいいなって思います。
- 「舞台『pet』─壊れた水槽─」
- 2018年12月5日(水)~9日(日)
東京都 草月ホール
- スタッフ
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原作:三宅乱丈「ペット リマスター・エディション」(ビームコミックス/ KADOKAWA刊)
協力:テレビアニメ「pet」
総合監修:なるせゆうせい
演出・脚本:伊勢直弘
制作:オフィスインベーダー
製作:舞台「pet」製作委員会
- キャスト
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ヒロキ:植田圭輔
司:桑野晃輔
悟:谷佳樹
林:萩野崇
桂木:君沢ユウキ
ロン:伊勢大貴
ジン:あまりかなり
- 「舞台『pet』─虹のある場所─」
- 2019年上演予定
©三宅乱丈・KADOKAWA/舞台「pet」製作委員会
- テレビアニメ「pet」
- 2019年放送予定
- スタッフ
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原作:三宅乱丈「ペット リマスター・エディション」(ビームコミックス/KADOKAWA刊)
監督:大森貴弘
シリーズ構成:村井さだゆき
キャラクターデザイン:羽山淳一
制作:ジェノスタジオ
製作:ツインエンジン
- キャスト
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ヒロキ:植田圭輔
司:谷山紀章
悟:小野友樹
林:加瀬康之
©三宅乱丈・KADOKAWA/ツインエンジン
- 植田圭輔(ウエダケイスケ)
- 1989年大阪府出身。2006年、第19回ジュノン・スーパーボーイ・コンテストのファイナリストに選ばれ、07年のデビュー作「少年陰陽師 歌絵巻」で主演を務めた。以降、現在まで100本を超える舞台作品に出演。主な出演作に、「舞台『弱虫ペダル』」シリーズ、ミュージカル「ヘタリア」シリーズ、「舞台『K』」シリーズ、「おそ松さん on STAGE」、舞台「劇団シャイニング from うたの☆プリンスさまっ♪『天下無敵の忍び道』」「王室教師ハイネ-THE MUSICAL-」、舞台「文豪ストレイドッグス」などがある。近年は歌手、声優としても活動しており、18年には「START LINE ~時の轍~」でメジャーデビューを果たした。10月には主演作、舞台「RE:VOLVER」が上演されるほか、「朗読劇『あっくんとカノジョ』~松尾真砂の日常~」の公演を控える。