OSK日本歌劇団「レビュー春のおどり」新トップスター・桐生麻耶インタビュー / 桐生&楊琳&舞美りら座談会|舞台に立つという点で、私の中に変化はない

桐生麻耶×楊琳×舞美りら 座談会

このコーナーでは、新生OSKを支える楊琳と舞美りらにも参加してもらい、新たなフェーズに入ったOSKの現在や、3月に東京、4月に大阪で上演される桐生のトップお披露目公演「レビュー春のおどり」の見どころを語ってもらった。

左から舞美りら、桐生麻耶、楊琳。

新生OSKを実感するところは?

桐生麻耶

楊琳 もちろん感じるところはありますが、「レビュー春のおどり」の幕が開いて、桐生さんがお1人で舞台に立たれている姿を観たらより実感するんだろうなって……。新生OSKのカラーも、今後もっとはっきりしてくるんじゃないかと思います。

舞美りら もの作りの姿勢は昔も今も変わらず、OSKの伝統を守り続けていると思いますが、作品については現段階ですでに、桐生さんらしい“バラエティ”に富んだものに……(笑)。

 そうだね(笑)。

舞美 今まで挑戦したことがないようなことにみんなが挑んでいるので、これまでのOSKとガラリと雰囲気が変わるのではないかと思います。

 個人的には、トップになった桐生さんを間近で見られるのがうれしいですね。「待ってました!」って感じがする(笑)。

桐生麻耶 大向こうか!(笑)

舞美 あははは。

桐生 でも楊だって変わったでしょ。「大人にならなきゃ」っていう意識を感じる。それは舞台の姿にも表れてると思います。ただ、大人になることで楊が本来持ち合わせているいいところ、天真爛漫なところも一緒になくなる可能性があって、その葛藤は私自身も経験していることだからよくわかります。

左から舞美りら、楊琳。

 いや、だって桐生さんの横にいるには、厚底ブーツを履いても足りないくらい背伸びしなきゃいけないじゃないですか(笑)。やっぱり桐生さんとあまり“開き”がないようにって思うんですよ。“その他大勢”にはなりたくない。2人(桐生、舞美)と、ちゃんとピラミッドになりたいなって思うので。

舞美 私個人としては、桐生さんが「最近、OSKが幼いと言われている」とおっしゃっていたことが気になっていて。まさに私は、幼い部分9割なので、もっとしっかりしなきゃ、大人っぽくならなきゃと思っています。

桐生 舞美は今見せている顔だけじゃなくて、本当はもっと違う面もあるんじゃないかなって。これからは、そこをもっと出してもいいんじゃないかと思う。

舞美 (うなずく)。

期待を超えるために、もっと!

楊琳

 今回の作品はとにかくパワフルですよね。本当にパワフルって言葉がぴったり(笑)。まずタイトルがすごいですよ。第1部は日舞の「春爛漫桐生祝祭(はるらんまん きりゅうのまつり)」、第2部は洋舞の「STORM OF APPLAUSE」!

桐生 もうタイトルでお腹いっぱい(笑)。でも振付の先生方が、私に“祭”と“嵐”をイメージしてくださってうれしいです。

 このタイトルだけ見て、お客様はもうすごい期待されていると思うんですよ。だから自分たちはさらにパワフルに勤めないと、その期待を超えられないんじゃないかと。

桐生 「もっと楽しませてくれるだろう」と!

 だって「そうでしかないだろう」っていうタイトルですからね(笑)。もともと、桐生さんのイメージって、お客様を楽しませてくれる感じが強いと思うから、クールな人がハメを外すのは簡単だけど……。

桐生 ちょっとやそっとじゃ満足してくれないってことでしょう?

一同 あははは!

 だから本当に、自分自身がパワフルにやっていかないと。

桐生 パワフルっていうか、もうパンクだね(笑)。1部は、フィナーレの「桐生八木節」が見どころです。スローの曲から始まり、私が歌わせていただいて次第にラップのような八木節になるんですけど、そこでのOSKの力強い群舞を観ていただけたら。2部は尖った感じの作品になっていて、これまでのOSKのレビューショーをイメージしていると、いい意味で裏切られるのかなって自分でも踊りながら感じます。1部2部、本当にどちらもすごく踊ります!

 2部のオープニングがカッコいいんです。もうこれ以上は語りませんけど(笑)。

舞美りら

舞美 (笑)。今までにない感じだと思いますね。ライブのような感覚になれると思うので、お客様の反応が楽しみです。STORMが巻き起こるんじゃないかな?(笑)

桐生 あと1部2部通して、雷の音が鳴るっていうのも、ちょっとすごいよね(笑)。

 桐生さんのトップ就任は、それくらいの衝撃なんだと思いますよ!

一同 あははは!

舞美 私はショーナンバーのフィナーレがオススメです。フィナーレってシックなものが多いと思うんですが、今回のテーマは「不良」(笑)。ジャズナンバーで、娘役はAラインのスッとしたきれいなドレスを着て登場するんですけど、そのイメージを裏切るような躍動感あふれるものになっていて、その振付がもう楽しすぎて! お客様にも楽しみにしていただけたら。

桐生 オーソドックスな振りは型通りにやっても“美”として受け止めてもらえるけど、今回のような振りは型でできないから難しいよね。

1月に東京にて行われた「春のおどり」会見より。左から舞美りら、桐生麻耶、楊琳。

 そうですね。そういった面でも、第1部作・演出・振付の山村友五郎先生、第2部振付の平澤智先生の気合いを感じます。「桐生さんならやれるだろう」と先生方も思ってるんじゃないでしょうか(参照:「お披露目という言葉に振り回されず」OSK新トップスター桐生麻耶が意気込み)。だからどのシーンも、いつものパターンじゃないことがいっぱいありますね。

桐生 そうだね。と同時に、先生方がお二人ともすごくフラットなのがうれしい。気負って「さあ!」って感じじゃなく、「せやろ?」くらいの感じっていうか(笑)。友五郎先生も平澤先生も、OSKのみんなのことをよく知ってくださったうえで作品作りしてくださっているのを感じます。それと、あるシーンで楊、虹架(路万)、愛瀬(光)、華月(奏)、翼(和希)って、男役5人に囲まれるところがあるんですけど、すごく圧を感じる。「わあ、みんな支えてくれてるな、すごい成長したなあ」って実感してうれしいですね。

101年目に向けて

 あと3年で100周年ですけど、100周年までは、このままいけば迎えられるんじゃないかと思うんです。でもそのあと、101年目が本当に大事だと思っていて。ずっと続けていく覚悟で、100周年を通過点と思えるようにがんばりたいです。

桐生麻耶

桐生 97年目とか100周年って、中にいる人間は実際あまり感じることがなくて、真摯に向き合っていたら到達したと言うか。これまでOSKを築いてきてくださった方たちも、歴史を築くためにいたわけではなくて、熱量が続いてここまで来たんですよね。それに、なくなるときはなくなるものだと私は思うので、今を大切に感じて真摯に向き合っていくしかないなと。そういう意味では、OSKって自由度がとても高くて制約がない劇団なので、まだまだいろいろな可能性を持っていると思う。劇団によっては舞台で裸足で踊るのはダメっていうところもあるそうですが、OSKは裸足もOKだし、今後もっともっといろいろな場面が生まれてくるんじゃないかと思う。

 そういえば桐生さん、エルビス・プレスリーの格好したこともありましたね。

桐生 やったねー! しかも(日舞の)友五郎先生の振付でね。

一同 あははは!

桐生 だから、まだまだたくさんの可能性があると思いますよ!

“ダンスのOSK”に続く、新たなキャッチフレーズをつけるとしたら?

左から舞美りら、楊琳。

 これ、すぐ言えます。「パワースポットのOSK」。身近ってとてもいいことだと思うんですよ。近いからこそすぐパワーをもらえる。格式高い神社とかじゃなくて、近所の人みんなが愛してて、盆踊りとかお掃除もやるような、行ったらすぐパワーをもらえるような場所でありたいなって。観た方が「ああ、これで明日もがんばれる」と思えるようなところが、OSKの魅力だと思うんですよね。

舞美 私は、「群舞のOSK」と言われたいです。かつてそう言われていたと、上級生の方からお話を聞いているので、またそう思っていただけるように、さらにみんなでダンスを極めていきたいです。

桐生 「魂のOSK」かな。よく(振付家の)名倉(加代子)先生ともお話するんですけど、ダンスの上手い下手は技術を磨けばある程度形にできるけれど、結局は気持ちだと。魂が前に出ていれば、お客様はちゃんとそこを観ていてくださるから、お客様に「生きててよかった」と思っていただけるような舞台を、私たちは作るしかないなって。だから、自分で自分にストッパーをかけずにやれたらと思います。それは舞台1年目の人でも、特別専科の方たちも私自身も、みんな止まらずに、お稽古場から作り上げていきましょう!

左から舞美りら、桐生麻耶、楊琳。
OSK日本歌劇団「レビュー春のおどり」
2019年3月28日(木)~31日(日)
東京都 新橋演舞場
2019年4月13日(土)~21日(日)
大阪府 大阪松竹座
第1部「春爛漫桐生祝祭」

作・演出・振付:山村友五郎

第2部「STORM of APPLAUSE」

作・演出・振付:平澤智

出演:桐生麻耶、楊琳、虹架路万、舞美りら、愛瀬光、白藤麗華、遥花ここ、華月奏、翼和希、千咲えみ、城月れい ほか

桐生麻耶(キリュウアサヤ)
5月11日生まれ、栃木県出身。175cmの長身と繊細な演技、ダイナミックな歌とダンスが目を引く男役スター。1995年に日本歌劇学校に入学、97年にOSK日本歌劇団に入団する。03年に劇団解散の危機に見舞われた際は、OSK存続の会メンバーとして自らも街頭で署名活動を行った。近年の主な主演作に「カンタレラ2016~愛と裏切りの毒薬~」(16年)、「巴里のアメリカ人」(18年)「第39回たけふレビュー~GERSHWIN NIGHT~」(18年)など。18年8月にトップスターに就任。
楊琳(ヤン・リン)
8月7日生まれ、神奈川県出身。2007年にNewOSK日本歌劇団(当時)に入団。ダンス力に定評があり、華やかさと爽やかさを併せ持つ男役として人気を博す。近年の主演作に「Sparking OSK」(13年)、「SOL FANTASTICA」(14年)、「ROMEO&JULIET」(16年)、「円卓の騎士」(18年)、「新撰組」(19年)など。
舞美りら(マイミリラ)
7月28日生まれ、京都府出身。2010年にOSK日本歌劇団に入団。愛くるしさと強さを持った可憐な娘役としてさまざまな大役を演じている。近年の主な出演作に「開演ベルは殺しの後に~刑事X 華麗なる事件簿~」「プリメーる王国物語~愛の奇蹟~」(14年)、「ROMEO&JULIET」(16年)、「三銃士~La seconde~」「円卓の騎士」(18年)など。