松竹楽劇部を前身とするOSKは、本格的な舞踊団を目指して1922年に設立された。34年に大阪松竹少女歌劇団(OSSK)、43年に大阪松竹歌劇団(OSK)、63年に日本歌劇団(NKD)、70年にOSK日本歌劇団と改称を重ねつつ、ひたすらレビューを追究し続け、大阪を象徴する存在の1つとなる。71年に近鉄グループに参入し展開を広げるが、2002年に近鉄からの支援打ち切りが発表され、一時解散。その後、劇団員とファンの努力で奇跡の復活を遂げてからは精力的に活動の場を広げ、現在に至る。長い歴史の中では、“ブギの女王”として人気を博した笠置シヅ子、“100万ドルのゴールデンコンビ”と言われた秋月恵美子と芦原千津子、銀幕で活躍した京マチ子らさまざまなスターが誕生しており、現在も4年後の創立100周年に向けて、次代のスターたちがしのぎを削っている。
OSKを象徴する花といえば桜。テーマソングの「桜咲く国」で、出演者がピンク色のパラソルを開いたり閉じたりしながら、桜の開花を表現するシーンはOSKの代名詞にもなっている。そもそもこの曲は、1930年に上演された「第5回 春のおどり~さくら~」の主題歌「春の唄」の歌詞の一部から歌い継がれるようになった。「桜咲く国 桜 桜」のフレーズには、春の到来を喜び、レビューを楽しむ、心浮き足立つような気持ちが込められていて、一度聴いたらすぐに口ずさみたくなる、親しみやすさがある。「桜咲く国」は現在、毎公演カーテンコールで歌われており、マイ・ミニパラソルを持って参加する観客も。「夏のおどり」観劇時には、ぜひロビーで販売しているミニパラソルを購入して出演者と一緒に揺らしてみよう。
もともと本格的な舞踊団を目指して設立されたOSKは、ダンスへのこだわりが強く、踊りのレベルも高い。特に注目されるのは群舞力で、スピード感ある力強い動きが観客の心を熱く捉える。あまりの迫力に、カーテンコールに現れた出演者が思ったより少ないことに驚くほど。今回上演される「夏のおどり」でも、さまざまなパワフルな踊りが披露され、中でもOSKを代表する名倉加代子振付のナンバー「ジャストダンス」は圧巻だ。
レビュー(歌劇)とは、1年間に起きた出来事を歌とダンスによって描くフランスで流行した舞台表現のこと。OSKは1927年にレビュー形式を取り入れた作品を上演しており、以来OSKらしさを追求した作品作りで日本のレビュー文化を支えてきた。特に恒例の「春のおどり」や「夏のおどり」では、日本舞踊をベースにした和物ショー、ジャズダンスを中心とする洋物ショーの2本立て上演が基本となっており、中でも和物ショーは、素早い動きと華麗な裾さばきで、古典の日本舞踊とはまた違った和の踊りの世界を表現している。
現在、OSKには52名の劇団員が在籍。全員、入団前に研修所にて2年間の勉強に励み、初舞台を踏んでからは実際の舞台で日々、技術と感性を磨いている。しかし「男役」「娘役」とひと口に言っても、スターとしての輝きは人それぞれ。写真の5人も舞台ではそれぞれ異なる魅力を発している。
現在のトップスター・高世麻央が中性的な魅力もある男役なのに対し、桐生麻耶は男性的で渋い役柄が似合う。高身長を生かしたダイナミックなダンスが特徴的な桐生だが、普段はお茶目な一面も。華やかさと爽やかさを併せ持つ楊琳は、清涼感ある役がよく似合う青年系男役。若さと儚さが魅力の真麻里都は、耽美な美少年系男役だ。またOSKの娘役は、愛くるしさと同時に男役の横に並び立つ強さを持っているのが特徴で、可憐さが魅力の舞美りら、芯の強さを持つ白藤麗華は、対照的な存在と言える。OSKには、ほかにもさまざまな魅力を持ったスターがずらりとそろっている。ぜひ新橋演舞場のステージで、あなたが気になるスターを見付けてみては。
写真提供:OSK日本歌劇団、松竹株式会社
- OSK日本歌劇団「レビュー夏のおどり」
- 2018年7月5日(木)~9日(月)
東京都 新橋演舞場
- スタッフ / キャスト
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第1部「桜ごよみ 夢草紙」
構成・演出・振付:西川箕乃助第2部「One Step to Tomorrow!」
作・演出・振付:名倉加代子出演:高世麻央、桐生麻耶、楊琳、真麻里都、虹架路万、舞美りら、愛瀬光、白藤麗華、遥花ここ、華月奏、城月れい、麗羅リコ、実花もも、栞さな、穂香めぐみ、桃葉ひらり、由萌ななほ、朔矢しゅう、壱弥ゆう、椿りょう、りつき杏都、唯城ありす、結菜ほのり、雅晴日、羽那舞、凜華あい、琴海沙羅、紫咲心那 / 朝香櫻子(特別専科)、緋波亜紀(特別専科) / (94期初舞台生)叶望鈴、依吹圭夏、純果こころ、有絢まこ、水葉紗衣、瀧登有真、優奈澪、涼乃あゆ、せいら純翔、知颯かなで
- OSK日本歌劇団(オーエスケーニホンカゲキダン)
- 松竹創業者の白井松次郎の発案により、1922年4月に松竹楽劇部として大阪に誕生。23年に関西初の洋式劇場となる大阪松竹座のこけら落としで「アルルの女」を上演し、26年には以降恒例となる「春のおどり」を開催する。宝塚歌劇団、姉妹劇団の松竹歌劇団(SKD、1928~96年)と共に、日本三大少女歌劇の1つとして日本のレビュー文化を牽引し、笠置シヅ子、京マチ子、秋月恵美子らのスターを輩出した。2003年に一時解散するがOSK存続の会が立ち上げられ、04年に大阪松竹座にて存続の会旗揚げ公演「春のおどり」を上演。07年に現在のOSK日本歌劇団に改称し、52年ぶりに京都・南座公演を行う。13年には73年ぶりに「春のおどり」東京公演を日生劇場で実施し、14年には東京・新橋演舞場で「夏のおどり」を上演。以降、16、17、18年と新橋演舞場での公演が続いている。
2018年7月3日更新