OSK日本歌劇団特集 高世麻央インタビュー|男役として一番いいときを覚えていてほしい

OSKの歴史的演目がずらりの第1部

──そんな高世さんの感謝の思いは、今回上演される「夏のおどり」にたっぷりと込められています。高世さんの思い入れある場面で構成された第1部「桜ごよみ 夢草紙」、“ダンスのOSK”をそのまま形にした第2部「One Step to Tomorrow!」、どちらも盛りだくさんの内容です。

5月に大阪松竹座で上演された「春のおどり」第1部より、オープニングシーン。

第1部では、最後ということもあり「鏡の夢」や「楊貴妃」などこれまでOSKで上演された名場面をさせていただきました。「鏡の夢」は、もともとは娘役さんが踊られた、4人の踊り手が三面鏡のように踊る作品で、私は初めて演じさせていただいたんですけれど、本当にお稽古が大変で。鏡なので、自分がちょっと「こういう雰囲気で」って感じでは踊れず、例えばお扇子を下から上に持ってくるにも、どういう角度、どういう導線でお扇子を動かすかによって全然見え方が変わってくるので、みんなで心を合わせないと成り立たないんです。お稽古では、私が踊るのをほかの3人がすごく研究してくれました。でもそのお稽古を通して、技術的なことや思いを後輩たちに残せたと思いますし、そういうことがしたいと構成・演出・振付の西川箕之助先生にはお願いしていたので、それが形にできたと思います。

──各シーンがスピーディに展開するところも素敵でした。高世さんはほぼ出ずっぱりで、とても大変だったと思いますが……。

早替わりは大変でしたね(笑)。でも松竹さんは歌舞伎をはじめさまざまな手法をお持ちなのでそれを教えていただいたり、歌舞伎でなされているのと同じこしらえをさせていただいたり。例えば「楊貴妃」から「光源氏」のシーンって本当に早いんですよ! 楊貴妃の姿からすぐに光源氏になって次のシーンにいなければいけない。でもそういうところでお客様に「おっ」と思っていただけるような舞台にしたいと思っていました。また先生方の愛情で、解散時に残ったメンバーで現在も一緒にやっている、特別専科の朝香櫻子と緋波亜紀、そして桐生麻耶の3人が、私が歌ってるところに寄ってきてくれる場面があったり、以前ご好評いただいた「葉桜」や「蝶の道行」を新しいメンバーと踊ったり、群舞的なものも入れていただきました。

黒燕尾の集大成を見せる第2部

5月に大阪松竹座で上演された「春のおどり」第2部より。

──2部は白と青の爽やかな衣装で登場した皆さんが、オープニングから全力で踊り出します。

5月に大阪松竹座で上演された「春のおどり」第2部より。

2部では作・演出・振付の名倉加代子先生に、「黒燕尾は絶対に入れてください」ということと、「下級生も含めてみんなと関われるようなナンバーを作っていただけませんか」ということをお願いしていました。先生が書いてくださった表題曲「One Step to Tomorrow!」の歌詞にも感極まるものがありましたが、その中でみんなと一緒に踊ることができてよかったですし、そのあとに近年の人気ナンバー「ジャストダンス」が続くのが、すごい構成だなって(笑)。あと、これまでにもドラムやギターなど楽器をやらせていただくシーンがあったので、今回も何かというお話をしていたところ、鍵盤ハーモニカの演奏シーンを作っていただいてうれしかったですね。それから、私が以前作詞した「マイブルーローズ」というナンバーのシーンも作っていただきました。「お花だったらバラが好き、色だったらブルーが好き」ということを手がかりに、初めて書いた歌詞なんですが、いろいろ調べる中で、青いバラを咲かせるのって奇跡に近いことなんだと知って。ファンの方からも「青いバラの花言葉は『夢を叶える』だから、高世さんと一緒ですね」と言っていただいて……というお話を名倉先生にしたら、「それを舞台にしよう」って言ってくださったんです。それはうれしかったですね。

──そして後半の黒燕尾のシーンは圧巻でした。

5月に大阪松竹座で上演された「春のおどり」第2部より。

黒燕尾というのはまだまだ踊り切れているとは思えないし、ほかのお衣装以上に私の中でもこだわりがあって、その集大成をみんなと一緒に踊るってことがしたかったんです。黒燕尾のような踊りを私たちは“型物”って言うんですけれど、本当に形をキレイに見せないと歌劇の美しさが見えないので、今は下級生でも早いうちからやらせてもらえますが、きちっと踊れるようになってほしいと思っています。そうやって自分がOSKで向き合ってきたことを、いい意味で背中で見せることができたらなって思っています。

OSKの男役として、有終の美を

──OSKで男役を演じられることは、この公演で最後となります。

高世麻央

そうですね。これまで男役に憧れ続けてきて、ようやく劇団は96周年を迎えることができ、そしてみんなの成長も感じていて……今、本当にいろんな意味で充実してるんです。大変なことはありましたが、今卒業するにあたってこんなに幸せな気持ちになれるとは思わなかったですし、途中で諦めていたら今のような思いにはなっていなかったと思うので、OSKの歴史のバトンをきちんとした形で次に渡したいと思います。それと、男役として一番いいときを皆さんに覚えていてほしくて。これから先のことはまだわかりませんが、もしこれまでと同じようなことを男役としてするのであれば卒業する必要はないと思っているので、OSKの男役・高世麻央としてのピリオドをここでしっかり打たせていただき、有終の美を飾ることができたら。もちろん卒業してからもOSKのことはずっと違う形で応援していきたいですし、4年後にOSKが100周年を迎えるとき、自分が何をしているかはまだわかりませんが、OSKの良さを一番よく知っている1人として、育てていただいたことへのお返しをしたいと思います。

OSK日本歌劇団「レビュー夏のおどり」
2018年7月5日(木)~9日(月)
東京都 新橋演舞場
OSK日本歌劇団「レビュー夏のおどり」
スタッフ / キャスト

第1部「桜ごよみ 夢草紙」
構成・演出・振付:西川箕乃助

第2部「One Step to Tomorrow!」
作・演出・振付:名倉加代子

出演:高世麻央、桐生麻耶、楊琳、真麻里都、虹架路万、舞美りら、愛瀬光、白藤麗華、遥花ここ、華月奏、城月れい、麗羅リコ、実花もも、栞さな、穂香めぐみ、桃葉ひらり、由萌ななほ、朔矢しゅう、壱弥ゆう、椿りょう、りつき杏都、唯城ありす、結菜ほのり、雅晴日、羽那舞、凜華あい、琴海沙羅、紫咲心那 / 朝香櫻子(特別専科)、緋波亜紀(特別専科) / (94期初舞台生)叶望鈴、依吹圭夏、純果こころ、有絢まこ、水葉紗衣、瀧登有真、優奈澪、涼乃あゆ、せいら純翔、知颯かなで

高世麻央(タカセマオ)
5月25日生まれ、神奈川県出身。1996年にOSK日本歌劇団に男役として入団。2010年5月、自主公演「バンディッド!~雲隠才蔵外伝~」にて大阪文化祭賞グランプリを受賞。11年9月にはOSKとして8年ぶりとなる東京公演「桜NIPPON踊るOSK」を東京・三越劇場にて主演。以降、劇団が毎年東京公演を続ける基盤を作った。14年にトップスターに就任。16年12月には大阪の地域活性化の原動力である企業活動や文化的活動において活躍する女性を讃える「大阪サクヤヒメ賞」を受賞。18年1月にOSKからの卒業を発表。2月の「三銃士La seconde」がOSKとして最後のミュージカル出演となり、大阪は大阪松竹座「春のおどり」、東京は新橋演舞場「夏のおどり」でラストステージを迎える。

2018年7月3日更新