影の主役としての居方が、3作目にしてわかってきた
──古川さんも、「リコリス」の際のインタビュー(参照:ミュージカル「黒執事」特集、セバスチャン役・古川雄大インタビュー)では原作を大切にされているとおっしゃっていましたが。
そうですね。大切にしなきゃいけないなと思いながら、今回はベースを作ったうえで自由に動きたいなと思っていて。例えば決めポーズだったり、決めゼリフだったり、「ここはグッとくるな」というところは原作のまま表現することを意識しました。
──例えば、どういったシーンでしょうか?
ロナルドの胸に足を当てるシーンで、手を組んで「この野郎」みたいなことやったり。普通に演技しててこういうことはあまりやらないんですけど。
──マンガっぽい表現ですもんね。
あ、でもちゃんとDVD収録(福岡大千秋楽公演)のときにやってたかな……。開幕したばかりの頃はやっていたんですよ(笑)。
──「リコリス」「サーカス編」「豪華客船編」と3作を演じてきて、原作を参考にベースを作ってきたセバスが当初と比べて変わってきた部分はありますか?
より深まったとは思っているのですが、変わった部分はあまりないですね。もちろん作品をやるうえで余裕が出てきた部分もありますし、座長としてこのカンパニーにいる自信もついてきました。そういった部分での見え方も、きっとあるとは思うんですけど。あと、このセバスチャンという役は主役と言いつつも、最後にバーッと歌い上げるとき、シエルより後ろにいるんです。そういう影の主役としての居方というのも、3作目にして理解してきたのかなというのもありました。
執事になりきれていないセバスの心情をどう表現するか
──今作での見せ場はやはり、葬儀屋がセバスとシエルが出会った頃の記憶を覗くシネマティックレコードのシーンだと思うのですが、演技について意識していたことがあれば教えてください。
より誇張して演じた部分があるかもしれません。それこそ、原作より大げさになっちゃうかもしれないですけど、そこは舞台の面白さなのかなと思いながら。
──誇張する、というと?
執事になりきれていないセバスの心情をどう表現するか、ということですね。
──なるほど。確かに「かしこまりました」の言い方一つとっても、今のセバスからは考えられないくらい乱暴な言い方をしているシーンもありました。
そうですね。同時にシエルに対して「なんだこの茶番」という怒りも感じているんです。このときはまだシエルに対してひざまずく前のセバスなので、「裏ではどんな表情をしてるんだろう?」「どんな態度なんだろう?」といった気持ちを表現するなら、これは絶対に「ミュージカル『黒執事』」ならではのものにしたいなと思いました。
──ちなみに「豪華客船編」は2017年1月に劇場アニメ化もされましたが、アニメはご覧になられましたか? 前は原作だけを参考にしていて、アニメは一切見ていないとおっしゃっていましたが。
変わらず、アニメは見ていなくて。ただ、「1回も見ないぞ」と決めて作品に挑んだんですけど、「豪華客船編」の最後のセバスのセリフのニュアンスがどうしてもわからなくて。
──「この後 嵐なんてごめんです」というセリフ?
そうです。このセリフは嫌味で言っているのか、それとも本心でポロっと出ちゃった言葉なのか。表情もちょっと笑ってるふうにも見えるけど、影になっててよくわからない。ここのニュアンスを確認したいなと思って、蓮生に「ちょっとアニメ見せて」とお願いして、映像を見せてもらったんです。そしたら、そのシーンだけなくて、ギリギリのところで終わっていて。これはもう見るなっていうメッセージだと受け取りました(笑)。なので結局アニメは1回も観ていないんです。
葬儀屋の殺陣は圧巻
──「黒執事」は毎回アクションも見応えがありますが、今作はセバスに加えて、グレル・サトクリフ、ロナルド・ノックス、葬儀屋と“四つ巴”のシーンも見どころですね。
はい。今回のアクションの見どころと言えばもう、和泉宗兵さんの葬儀屋ですね。重い衣装を着て、長い爪を付けて、首にもジャラジャラ飾りを付けて、あの格好で大鎌を振るって相当大変なんですよ。
──葬儀屋は今までアクションがなかったぶん、驚きもありました。
そうですよね。葬儀屋の華麗な殺陣は圧巻です。
──ほかにも今作から登場したキャストさんの印象をお伺いしたいのですが。
エリザベス(・ミッドフォード)役の岡崎百々子さんは、今作が初ミュージカルだったそうなのですが、稽古を重ねるごとに「こんなに変化があるの?」っていうくらいに変わるんですよ。誰かが稽古場にひっそり付いてアドバイスしているのかなって思うくらい。それからロナルド役の味方(良介)くん。彼が主演した「熱海殺人事件」を3回くらい観に行ったんですけど、あの作品のハードさを知っているので、何かやってくれるだろうと思っていましたし、実際やってくれたのでさすがだなと思いました。
──「熱海」はすごいセリフ量で、とてもハードな舞台ですよね。
ええ。しかも味方くんは声が魅力的で、すごくよく通るんです。
──では最後に、Blu-ray / DVDならではの注目ポイントを教えてください。原作者の枢やな先生は、以前Twitterで「生執事のライビュやBD・DVDって本当にセリフの有無でなく感情線でキャラ(役者さん)や照明効果などを抜いて下さるんですよね」とおっしゃっていました。
確かにそうかもしれないですね。カメラリハーサルまでやっていますし。「ここをどう抜くか」「どのアングルを使うか」ということも、入念に考えられています。「ミュージカル『黒執事』」は、キャスト・スタッフの作品愛がすごく強いカンパニーなんです。また「ミュージカル『黒執事』」シリーズが今年10周年を迎えることもあって、キャスト・スタッフ共に、かなり力を入れて作り上げた作品なので、ぜひ映像で何度も楽しんでいただけたらうれしいです。
- 「ミュージカル『黒執事』-Tango on the Campania-」
- 2018年6月27日発売 / アニプレックス
-
完全生産限定版 [Blu-ray+DVD]
8640円 / ANZX-10091~2完全生産限定版 [DVD2枚組]
7560円 / ANZB-10091~2アニメイト限定版
[Blu-ray+DVD] 9180円アニメイト限定版
[DVD2枚組] 8100円
- 本編ディスク(BD/DVD)
-
2018年2月12日に行われた福岡大千秋楽公演の模様を収録。
- 特典映像ディスク(DVD)
-
メイキング映像、アバーライン&ハンクスの事件簿「カンパニア号見聞録」を収録。
- アニメイト限定版特典映像ディスク(DVD)
-
日替わり映像集 ほかを収録。
- 特典内容
-
<完全生産限定版特典>
三方背ケース、デジジャケット仕様、特製ブックレット<アニメイト限定版特典>
枢やな描き下ろしメッセージポストカード
- 公演情報
-
原作:枢やな(掲載 月刊「Gファンタジー」スクウェア・エニックス刊)
脚本:Two hats Ltd.
演出:児玉明子 - キャスト
-
セバスチャン・ミカエリス:古川雄大
シエル・ファントムハイヴ:内川蓮生グレル・サトクリフ:植原卓也
ロナルド・ノックス:味方良介
スネーク:原嶋元久エリザベス・ミッドフォード:岡崎百々子
フレッド・アバーライン:髙木俊
シャープ・ハンクス:寺山武志エドワード・ミッドフォード:内海啓貴
フランシス・ミッドフォード:秋園美緒
アレクシス・ミッドフォード:那須幸蔵リアン・ストーカー:河合龍之介
葬儀屋:和泉宗兵
ドルイット子爵:佐々木喜英
ほか
©2017 枢やな/ミュージカル黒執事プロジェクト
- 古川雄大(フルカワユウタ)
- 1987年長野県出身。2007年、テレビドラマ「風魔の小次郎」霧風役でデビューし、「ミュージカル『テニスの王子様』」不二周助役で人気を博す。その後、ミュージカル「エリザベート」、ミュージカル「1789 -バスティーユの恋人たち-」、ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」、ミュージカル「レディ・ベス」など話題作に多数出演。また歌手としても活動しており、15年には「Love me」をリリースした。現在上演中のミュージカル「モーツァルト!」では、主人公・ヴォルフガング・モーツァルト役を山崎育三郎とWキャストで演じる。