明治座創業150周年|明治座が“愛される”理由に迫る 荒牧慶彦が人形町を街歩き

荒牧慶彦×三田光政、明治座の今と未来を語る

左から三田光政、荒牧慶彦。

明治座と商店の素敵な関係

──本日は、人形町・甘酒横丁にあるにんぎょう町草加屋、森乃園、そしてブラザーズを訪れました。荒牧さんは煎餅焼きにも挑戦されましたが、いかがでしたか?

荒牧慶彦 煎餅焼きは、単純な作業に見えて実に奥深かったです。網の前はとても熱いですし、身体のいろいろな部分に負担をかけながら継続してこられた店主の方を尊敬します。焼肉のように、「そろそろかな?」と待つ時間がないんですよね(笑)。常に手を動かしていかなければならないので、大変でした。

三田光政 あれは炭起こしが難しいんですよ。炭は調節できるものではないので、均等に焼くには技術が必要。僕は20歳まで人形町で育ち、草加屋さんも常連ですが、最初の頃こそ先代のおじいさんがいらしたけれど、もう長い間、今日お店にいらした当主が焼いています。すごいことです。

荒牧 森乃園のソフトクリームはほうじ茶の味が濃厚で、甘すぎず、食べやすかったですね。

三田 あれもおいしかった! ダイエットをしているのを忘れてしまいそうになりました(笑)。また、最後に訪れたブラザーズのバーガーは、冷めてもおいしいんですよ。

ジューシーなパティとシャキシャキの野菜がたっぷり入ったロットバーガー。

ジューシーなパティとシャキシャキの野菜がたっぷり入ったロットバーガー。

あーん!とロットバーガーを口に運ぶ荒牧慶彦。

あーん!とロットバーガーを口に運ぶ荒牧慶彦。

荒牧 (一口食べながら)確かに! この大きさにはびっくりしますけど、肉のうまみがぎゅっと詰まっていて、おいしいです。僕は今回、人形町を一緒に回らせていただいて、三田さんがどのお店でも顔見知りだったのに驚きました。お店の方が「三田さんが来てるの?」とサッとあいさつに出てこられるのを見て、明治座さんが街の人たちと築いてきた良い関係性を、肌で感じることができました。

三田 あの辺は芳町といって、湿原だったんです。江戸時代には、葦やヨシの原っぱだから吉原という名前の遊郭があって、吉原が浅草に移転してからは、芝居街になりました。明治座のルーツである喜昇座もここにあって、門前町がお寺さんと共に在るように、商店が芝居小屋と共に在るという、街と小屋の距離が近いエリアなんですね。なので、ほかの劇場とは少し違う雰囲気があると感じます。

荒牧 確かにそうですね。いろいろな劇場に立たせてもらっていますが、僕は、劇場は独立した場所で、お芝居を観るためにお客さんが来て、帰っていくという認識だったから、“街と共にある劇場”って素敵だなと思いました。

左から三田光政、荒牧慶彦。

左から三田光政、荒牧慶彦。

革新が日常、それが明治座の魅力

──明治座は4月28日に創業150周年を迎えます。昨年6月から来年2月まで、150周年のアニバーサリープロジェクトとして座長公演や、若い世代の俳優を起用した舞台作品など、多彩な作品がラインナップされています。三田さんは150年目の明治座は今、どのような状態であると思いますか?

三田 “変わりつつある”のではないでしょうか。ただ、常に革新的なことをしてきた劇場ですので、そういう意味ではいつも通りなのかもしれません(笑)。明治座には團菊左時代(編集注:九世市川團十郎、五世尾上菊五郎、初世市川左團次が“團菊左”と称され、芸を競い合い、歌舞伎が盛り上がった)に、歌舞伎俳優の初世市川左團次さんがオーナープレイヤーだった時期があって、左團次さんは当時はお茶屋さんがしていたチケットの販売を初めて劇場で行いました。また、これは中村芝翫さんに教わったのですが、観客を劇場に初めて土足で入れるようにしたのが明治座だったそうです。

荒牧 へえ! そうなんですね。

三田 そのくらい新しさがある劇場なんです。例えば伝統芸能の守り手である劇場や、ミュージカルを主軸とする劇場ならば、上演されるジャンルが決まってきますが、明治座はお客様に喜んでいただくことを第一に、さまざまなジャンルの新しいものを見つけていこうという姿勢でいます。もしかしたら、荒牧さんも明治座を変える人になるかもしれないですよね(笑)。

荒牧 いやいや! おこがましいです。

荒牧慶彦

荒牧慶彦

──まさにそれが、明治座が荒牧さんを「大祝祭」にキャスティングしたり(参照:荒牧慶彦・コロッケ・中川晃教・七海ひろき・藤原紀香が創業150周年の明治座で「大祝祭」)、明治座プレミアム倶楽部のナビゲーターに抜擢されたり(参照:明治座が1月に配信サービス開始、ナビゲーターは染谷俊之・荒牧慶彦・玉城裕規)して、期待されている部分なのかと思っていました。荒牧さんは明治座で俳優デビュー10周年記念公演「殺陣まつり~和風三国志~」を上演されましたが(参照:こんなに大きなものに…荒牧慶彦が感慨、俳優デビュー10周年記念公演「殺陣まつり」開幕)、節目となる公演になぜ明治座を選ばれたのですか?

荒牧 あの公演は最初、“僕の個人イベント”だという感覚だったんです。でも、思わぬご縁で明治座さんにご協力いただけることになり、僕はびっくりしたんですよ。「“僕の個人イベント”を明治座さんでやって良いの?」と(笑)。というのも、明治座の板の上に立つことは、俳優として格が1つ上であることと同義だから。その思いは僕だけでなく、ほとんどの若手俳優、そして経験を重ねられた俳優さんたちも持っていると思います。俳優として身が引き締まる思いがする劇場で、個人イベントをするなんてもってのほかだ!と、少しでも公演らしくできないかと考えたときに、「殺陣まつり」をすることになりました。

三田 こちらこそ大切な節目に明治座で公演をしてくださってありがとうございます。ゲストに鈴木拡樹さんや和田雅成さんが来られて、出演者も豪華でね。お客さんも喜んでいて、盛り上がって良かったです。

良い俳優を明治座のお客様にも広げていきたい

──2.5次元舞台というジャンルを牽引する存在である荒牧さんの明治座でのご活躍を、“三銃士企画”のプロデューサー(参照:明治座×東宝×ヴィレッヂが再タッグ、三銃士企画第2弾は倉持裕の新作音楽劇)でもある目利きの三田さんはどのように捉えていますか?

三田 僕らとしてはありがたいですよ。荒牧さんがずっとやってきた2.5次元舞台は、1つのジャンルとしてもっとしっかりと演劇業界に評価されるべきですし、僕はきちんと応援したいんです。舞台「ゲゲゲの鬼太郎」で主演を務めていただいたり(参照:妖怪たちが勢ぞろい!舞台「ゲゲゲの鬼太郎」開幕に荒牧慶彦「今表現できる鬼太郎を」)、舞台「サザエさん」でカツオ役を演じていただいたり(参照:舞台「サザエさん」開幕、藤原紀香「最高の家族になりました」)していますが、日本の演劇界のシーンを背負っていってもらいたいという思いから、「大祝祭」では普段はあまり共演の機会がないようなコロッケさんや中川晃教さんとご一緒していただきました。荒牧さんにとって、明治座での経験が良い広がりとなるように、という思いでオファーしたんです。コロッケさんとの共演に、荒牧さんのご家族が喜ばれていましたよね。

三田光政

三田光政

荒牧 母や姉が来てくれたのですが、僕というより、コロッケさんを観に来た感じで(笑)。楽しんだみたいです。

三田 その話をコロッケさんに伝えたら、1ネタ増えて、しかもそれが一番お客様にウケたんですよね。

荒牧 すごく優しい方なんです(笑)。

──愛が感じられるエピソードですね。荒牧さんは明治座での舞台経験が増えることによって、何かが広がったという実感はありますか?

荒牧 2.5次元舞台というのは、昔からある言葉ではありませんし、新興勢力としてどうしても、偏見を持たれていると感じることが少なくありません。そこを僕は変えていきたいと思っているんですが、明治座さんが率先して僕を起用してくれることで、巨大な後ろ盾というか(笑)、背中を押してくださっているようなありがたさがあるんです。そういうこともあり、最近では徐々に業界関係者の方たちの見る目も変わってきているなと感じます。

三田 大切な役者さんとして対峙しているだけです。「大祝祭」で、荒牧さんには名作である「男の花道」を朗読していただきましたが、観にいらしていた片岡愛之助さんが「荒牧くんが良くて、僕、泣いたよ」と熱弁されていました。女形役者・加賀屋歌右衛門という役どころで、きちんと結果を出せる実力がある。それって俳優の出身云々は関係ないですから。荒牧さんのような良い役者さんを明治座のお客様に広げていくというのが、僕らの役目だと思っています。

荒牧 ありがたいです。僕としても、藤原紀香さんや松平健さんなど、共演の機会がなかった方たちと明治座さんを通してご一緒できて、とても勉強になります。また、明治座さんで観ていただいて、僕の存在を知ってもらえれば、僕が携わっている業界についても知っていただけるので、チャンスをもらえる場所だなと思っています。

荒牧慶彦

荒牧慶彦

150年後も人の心は変わらない、「大事なのはお客様」

──荒牧さんは社長として組織を導く立場でもありますが、明治座の革新を続ける姿に、どのような学びを得ていますか?

荒牧 いやあ、本当に明治座さんのやり方に追随しなきゃなと思っています。固定観念に縛られるのではなく、新しいものを取り入れて、そこから取捨選択し、淘汰して、良いものに昇華させていく。それができたからこそ、150年も愛される劇場であり続けたのは間違いないので。僕は33歳で、まだ若いほうですが、若い世代が育っていかないと業界全体が成熟しないと思っているので、明治座さんを見習って、新陳代謝を大事にしていきたいです。

──三田さんは次の150年に向けて、どのような明治座の姿を思い描いているのでしょうか。

三田 お客様を裏切らない劇場でありたいと思います。僕らはコンテンツのビジネスなので、劇場に来てくださったお客様の心を動かせないと意味がないと考えています。きっと150年後も人の心というのはあまり変わらないと思うんです。次の150年の間に、今で言うマンガやアニメとは別のメディアが誕生するかもしれませんが、そういった新しいものと流行の役者さんを掛け合わせながら、コンテンツを生み出していく。そこには“明治座はこうだから”という押し付けは必要なく、荒牧さんのように、ファンの方や観てくれる方を大事にするという根幹が揺るがなければ、大丈夫。僕らはほかの劇場に比べて規模が比較的小さいので、そのぶん機動力はあるんじゃないかなと。ダーウィンが言うように、変化していくしかないですよね(笑)。

荒牧 明治座が今後どうなっていくのか、僕自身、楽しみです。デジタル緞帳を観たときは興奮しましたし、明治座横丁のおもてなしの心に毎回感動して、明治座さんって本当にテーマパークのような楽しいところだなと思っています。それがどんどん進化していくとしたら……と考えるとワクワクしますよね。僕でよければですが、ぜひ、共に歩ませていただければうれしいです。

左から三田光政、荒牧慶彦。

左から三田光政、荒牧慶彦。

アイスにお土産、なんでもござれ!荒牧慶彦が“テーマパーク”な明治座を散策

明治座横丁には公演に合わせてさまざまなグッズが並ぶ。

明治座横丁には公演に合わせてさまざまなグッズが並ぶ。

チョコレート味のお土産を手に取る荒牧慶彦(右)。

チョコレート味のお土産を手に取る荒牧慶彦(右)。

明治座横丁には荒牧慶彦厳選のお土産も……。

明治座横丁には荒牧慶彦厳選のお土産も……。

明治座売店でまたしてもアイスクリームを食べる2人。日替わりで異なる味を楽しめる。

明治座売店でまたしてもアイスクリームを食べる2人。日替わりで異なる味を楽しめる。

劇場2階ロビーには写真と共に150年の歩みを紹介するパネルが展示中。

劇場2階ロビーには写真と共に150年の歩みを紹介するパネルが展示中。

おまけの耳ヨリ情報

① 明治座150周年×「明治座めーる倶楽部」新規入会キャンペーン

チケットの最速先行予約や、公演のお知らせをはじめとするお得な情報を配信するメールマガジン、お土産付きプランやセットプランなどの会員限定特典が受けられる「明治座めーる倶楽部」(入会金・年会費無料)にて、明治座創業150周年を記念した新規入会キャンペーンを実施中。

詳細・入会方法はこちら

詳細・入会方法はこちら

対象期間:2023年4月28日(金)~6月30日(金)

上記期間に新規入会した1000名を対象に、記念ボールペンがプレゼントされる。記念ボールペンは劇場切符売場にて先着順で配布。予定本数に達し次第、キャンペーンは予告なく終了することがある。なお、明治座150周年キャンペーンは今後も実施予定。詳細は公式サイトにて確認を。

② 日本橋浜町・人形町の街ガチャが登場

街ガチャロゴ

異例のヒットを続けるご当地ガチャの“日本橋浜町・日本橋人形町街ガチャ”が6月上旬より販売開始予定だ。街ガチャには明治座周辺のお店はもちろん、今回、荒牧慶彦が訪れたお店も登場する。レアアイテムのシークレットアイテムにはなんと……!?

荒牧慶彦が訪れた3つの店もガチャに登場する。

荒牧慶彦が訪れた3つの店もガチャに登場する。

のぼりを手にするシークレットアイテムはどなた?

のぼりを手にするシークレットアイテムはどなた?

※初出時、キャプションに誤りがありました。訂正してお詫びいたします。

プロフィール

荒牧慶彦(アラマキヨシヒコ)

東京都生まれ。2012年、「ミュージカル『テニスの王子様』」2ndシーズンで本格的に俳優デビュー。主な出演舞台に、「舞台『刀剣乱舞』」「『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』Rule the Stage」など。明治座では2022年に主演公演・舞台「ゲゲゲの鬼太郎」に鬼太郎役で出演したほか、「荒牧慶彦俳優10周年記念公演『殺陣まつり ~和風三国志~』」をプロデュース。4月には「明治座創業150周年記念 大祝祭」に出演した。「映画刀剣乱舞-黎明-」、映画「ゲネプロ★7」が公開中。ドラマ「あいつが上手で下手が僕で」シーズン2(日本テレビ / 読売テレビ)が放送中。6月に「ACTORS☆LEAGUE in Games 2023」、6・7月にプロデュース・出演するミュージカル「I'm donut ?」、8月に「舞台『刀剣乱舞』七周年感謝祭 -夢語刀宴會-」、10・11月に「舞台『刀剣乱舞』山姥切国広 単独行 -日本刀史」が控える。

三田光政(ミタミツマサ)

1980年、東京都生まれ。明治座専務取締役。2003年に慶應義塾大学経済学部を卒業後、電通に入社。2012年、明治座へ入社し、取締役総務部長、取締役制作部長、取締役興行事業本部長などを経て、現在は専務取締役を務める。東宝の鈴木隆介プロデューサー、ヴィレッヂの浅生博一プロデューサーと共に三銃士企画を立ち上げ、2020年に第1弾「両国花錦闘士」、2022年に音楽劇「歌妖曲~中川大志之丞変化~」を上演。


2023年4月30日更新