朝夏まなと&野口幸作の初タッグが実現!21年の時間を旅し、今、そして未来の“輝き”を約束する「MANA-TRIP」

宝塚歌劇団の元宙組トップスターで、2017年の退団後も歌唱力・演技力・ダンス力を武器にミュージカル界の最前線で活躍する朝夏まなとの、芸能生活21周年を記念するコンサート「MANATO ASAKA 20th+1st Anniversary Concert『MANA-TRIP』」が、10月に開催される。1日限りのぜいたくなコンサートとなる今回、朝夏が構成・演出に招いたのは、宝塚歌劇団の座付き演出家・野口幸作だ。さらに、出演者にはかつて宙組での日々を共にしたメンバーが駆け付け、朝夏の“20th+1st”をお祝いする。

ステージナタリーでは、朝夏と野口の対談を実施。在団時代に野口の作品に出演することがかなわず、その作品世界に飛び込むことが「念願だった」と瞳を輝かせる朝夏と、宝塚歌劇への愛にあふれ、実は朝夏と縁が深い野口が、初タッグとなるコンサートへの思いを明かした。

取材・文 / 大滝知里撮影 / 秋倉康介

「先生の世界に入ってみたい」けど、もう私は帰れない

──「MANA-TRIP」は、朝夏まなとさんのデビュー21周年を記念するコンサートです。朝夏さんたっての希望で野口幸作さんを構成・演出に呼ばれたそうですね。

朝夏まなと そうなんです。在団中、野口先生は演出助手として公演に入られていたのですが、私は先生の作品とはご縁がなくて。卒業したあとに、作品をバリバリ作られているのを拝見して、「私も先生の世界に入ってみたい」と思っていました。でも、もう宝塚歌劇団には帰れないので(笑)、コンサートでご依頼したところ、引き受けてくださったので夢がかないます。

野口幸作 ありがとうございます!

左から野口幸作、朝夏まなと。

左から野口幸作、朝夏まなと。

朝夏 卒業後、宙組の公演は毎回観に行くようにしているのですが、野口先生の舞台はセンスがあって品も良く、宝塚歌劇の古き良き面と現代のエッセンスが融合されていて、すごく素敵で……偉そうにすみません。どれも「また観たい」と思わせてくれる作品なんです。私が一足先に卒業してしまったものだから、悔しさが募っていたんですよ!

野口 うれしいです(笑)。最初にお声がけいただいたときは、私もびっくりして。朝夏さんが出演されているミュージカル「天使にラブ・ソングを~シスター・アクト~」を拝見していたら、休憩時間に朝夏さんのマネージャーさんが声をかけてくださったんです。

朝夏 「野口先生、今日観に来られるみたい!」ってね(笑)。どうにかしてお願いしたいな、と思っていたら先生が来てくださって。これもタイミングだなと思いました。

野口 朝夏さんって、退団されてからもたまに劇団や劇場にいらっしゃったときに、通りがかりに見つけてくださると、すぐにお声がけしてくださるんです。普通の人なら見過ごしてしまうようなことでも、気付いてくださる。そういう視野の広さは現役時代から感じていました。自分にこのようなお話が来るとは全然思わなかったので、お声がけいただいてうれしかったです。

朝夏まなとは物覚えが良い完璧な人、野口幸作はミステリアス?

──宝塚歌劇団在団中の朝夏さんの表現者としての印象を、野口さんはどのように捉えていましたか?

野口 朝夏さんが花組にいらっしゃったときに「愛と死のアラビア」「アデュー・マルセイユ」「ラブ・シンフォニー」などに演出助手として付いていたのですが、朝夏さんはその頃、新人公演の主演をされていて。望海風斗さんと一緒にすごく楽しそうにされていたのを覚えています。望海さんと朝夏さんのお二人が若手として花組を引っ張っていっているような印象がありましたが、朝夏さんは特に、自分の意志を持って、周りも見つつ、きっちりとやるべきことをされているという感じがしましたね。例えば、宙組でトップスターになられてから演出助手で付かせていただいた「エリザベート -愛と死の輪舞(ロンド)-」のトートは、せり上がりで自分の足で椅子を回したり、出方が難しい場面(シシィの居室)があったりと、段取りが多くてややこしい役なのですが、朝夏さんは物覚えが良くて、言われたことを即座に、手を抜くことなく何度でもやってくださるんです。余計な感情を出さずに完璧に。舞台に誠実に向き合っていらっしゃるんだなと思いました。

朝夏 私、そんな感じでした? まあ、物覚えは年々劣化していますけど(笑)、当時は覚えることがいっぱいあったので必死でした。

朝夏まなと

朝夏まなと

──朝夏さんから見た、野口さんの印象というのは?

朝夏 下級生の頃は演出助手の方と小道具のことや段取りといった事務的な相談をすることが多いのですが、上級生になると演出家と密にコミュニケーションを取るようになるんですね。私は野口先生より学年が4つ上なので、下級生時代にはあまり関わりは多くなかったんです。でも、藤井大介先生の「HOT EYES!!」や小池修一郎先生の「エリザベート -愛と死の輪舞(ロンド)-」のときにご一緒して……ミステリアスだなと思っていました。

野口 そうですか?(笑)

朝夏 どういう作品を作るかとか、(舞台で)発表していかないとわからないじゃないですか。でもわりとよく話していた印象はあります。この前、退団公演のときに一緒に撮った写真を発掘したんです(笑)。東京公演に行く前の最終稽古で、廊下でたまたまお会いしたんですよね。それくらいのご縁はあったんだなあって。

野口 私が「SUPER VOYAGER!」のお稽古をしていたんですよね。お辞めになるときも写真集かパンフレットにサインをいただいた気がします。朝夏さんって、宙組をお辞めになられて5年も経つのに、今でも宙組の人たちからリスペクトされているなと感じるんですよ。

朝夏 劇団を離れて、年に2回とか、3回とかしか観られなくなるので、下級生たちが、“ガッと伸びる瞬間”ってあるんだなと余計にわかるんですよ。この前それを瑠風(輝)に感じました。「HiGH&LOW -THE PREQUEL-」から変わってきていて、ピックアップされるメンバーになると、自覚が出てきてギュンと成長する。桜木(みなと)もそうです。この5年くらい、自分の新人公演をやってくれていた子たちがそうやって成長していくのを観られるのが楽しみです(笑)。

野口 あと、朝夏さんって在団中、娘役さんに「かわいいね」とおっしゃっていたイメージがすごくあって。人を喜ばせるのがお上手なんだなって……。

朝夏 あははは、言い方!(笑) それは花組の伝統で、さらっとそういうことを言う文化があったんです。なので、宙組でも普通にそうしていたら、「宙にチャラ男が降ってきた!」って言われて。わざとじゃないんです。

野口 なるほど(笑)。

退団から5年、“ちょっと懐かしくなってきた”朝夏まなととおしゃれな旅に出る

──今回のコンサートでは「MANA-TRIP」というタイトルが付けられていますが、“旅”をテーマにした内容になるのでしょうか。タイトルに込めた意味を教えていただけますか?

野口 今まで「MANA-ism」「MANA-HOLIC」と2回開催されてきて、それぞれ素敵なタイトルだったのですが、今回はMANA“と”まで入れたいなと思って。

朝夏 今までは「MANA」止まりだったので(笑)。

野口 それで、一緒に宝塚歌劇団時代の曲や退団後のミュージカル作品の曲を挙げて整理していったのですが、国ごとに分けて国めぐりのコンサートにしたら面白いんじゃないかと。コロナ禍も明けつつありますが、まだ旅行に行けない方もいらっしゃると思うので、朝夏さんと一緒におしゃれな旅、“TRIP”に出かけるような気分になっていただけたらなと思っています。

野口幸作

野口幸作

朝夏 アメリカやロシア、ドイツ、エジプトなど、演じた役や作品の舞台がうまいこと分かれていたんですよね。これまでのコンサートでも宝塚歌劇団時代の曲は何曲かやりましたが、今回はよりその色が濃くなるかなと。野口先生の演出もそうですし、出るメンバーが“オール元タカラジェンヌ”ですから。

──出演者は元相手役の実咲凜音さんをはじめ、愛月ひかるさん、風馬翔さん、伶美うららさん、秋音光さん、華妃まいあさんと、朝夏さんのトップ時代の元宙組メンバーで、とても豪華ですね。

朝夏 ここまでタカラヅカ色があるものは、辞めてからやっていませんでした。卒業後は、早く外の世界になじまなきゃという気持ちがあって、新たな道を行かなきゃいけないとか、男役ではない自分の新しい魅力を探していかなきゃということを意識していたんです。距離を置こうとしていたわけではないのですが、5年経った今、また触れてみるのも良いかなと(笑)。

野口 そうだったのですね。

朝夏 もちろん、自分の中には男役というものがいつもあったし、それがあったから新しい世界でもやっていけたことはたくさんあったのですが、なんかちょっと懐かしくなってきちゃって。女優になってから私のことを知ってくださった方々にも、男役っぽいものを生でお見せする機会はなかったので、楽しんでいただきたいなと思います。