過去の曲たちにスタンプを押すように、1つずつ確認していったライブ
──7月の「STREAM of TIME」では、1990年代をテーマにした楽曲が並びます。小泉さんは1990年代にアメリカに音楽留学をされ、杉田さんは1993年生まれなので、お二人とも当時の楽曲になじみがないかもしれませんが、真琴さんはいかがですか?
真琴 私も在団中一番忙しい時期で、責任が重かった時代でもあります。構成については当日のお楽しみということで、詳細は明かせないのですが、テレビドラマが全盛期の時代だったので、有名なテレビドラマの主題歌を取り入れてみるのも良いのかな。1990年代のテレビドラマの歌とトークで楽しませるような。私はどなたかのライブを観に行くときにも、歌だけではなくトークも楽しみにしているんですよ。だからこそ、小泉さんや杉田さんといったミュージシャンの顔・本質が見えてくることも大事だと思っていて。3人で1つの作品を作ることができたらうれしいですね。
小泉 「STREAM of TIME」は3つの公演で作る“シリーズ”である以上、ラストに向けて、お客さんの期待も高まっているはずなので、トークも含め、期待にお応えできる構成にしたいなと思います。
──「STREAM of TIME」で過去の楽曲を振り返るという作業は真琴さんにとってどのような意味がありましたか?
真琴 私はこんなふうに歩んできたんだという過去への確認作業だったかな。歌いながら1つひとつの曲での出来事を思い出し、スタンプラリーみたいにスタンプをポンと押していく。次の一歩を進めるために、“思い出す”ことが必要だったのかなと感じます。
“人生バラエティ”な生き方が、真琴つばさのライブに深みを出す
──11月24・25日にはCOTTON CLUBでバースデーライブが開催されます。真琴さんは「歌うシャイロック」で共演された福井晶一さんと2023年11月に「福井晶一&真琴つばさ PREMIUM BIRTHDAY ~二人だけのHARMONY~」(参照:福井晶一・真琴つばさが共演きっかけにバースデーライブ、“二人のハーモニー”をお届け)を行って以来、2度目のCOTTON CLUBとなりますが、どのようなライブを想像されていますか?
真琴 すごく悩んでいます。「STREAM of TIME」で自分の過去の楽曲を歌ってしまったから、60歳の節目の誕生日には自分が歌いたい曲を歌っても良いのかなと。これから小泉さんたちと相談しなくちゃならないんですが、今はまだそこまで頭が回らなくて(笑)。在団時代と退団後をハイブリッドにした形でうまく出せたらと思います。
小泉 COTTON CLUBはアメリカ・ニュークに本拠地があって、ミュージシャンにとっては格式高い場所なんです。日本にはCOTTON CLUBは東京にしかなく、昔は海外アーティストのライブがほとんどだったのですが、コロナ以降は日本のアーティストもオープンにライブをさせてもらえるようになって。僕らにとって“神”と言われるような人たちがCOTTON CLUBに立ってきたので、こちらも気が引き締まります。
真琴 だから、カジュアルな気分になれるLaDonnaとは違う雰囲気が出せたらと思いますよね。ワイングラスを片手に……中に入っているのは烏龍茶でも緑茶でも良いので、“心のドレスアップ”をしてお越しいただくようなライブにしたい。ドレッシーな真琴つばさ、コッテリした真琴つばさ、どちらもある60年間の私の姿をお見せできれば。
小泉 真琴つばさの歌って独特で確立しているように思っていたのですが、真琴さんと初めてご一緒したときに、「歌に対して恐怖心やコンプレックスがある」とおっしゃっていたんです。僕は自分のことを、いろいろなアーティストの悩み解消のお手伝いをする“歌の駆け込み寺”と呼んでいるのですが、真琴さんが歌うことが楽しくてしょうがないという状態になっていただけるのが一番うれしい。今後のライブでそういう姿が観られることを期待しています。
真琴 そうね。今後の目標は、怖がらずにもっと歌いたいと思える自分になることかな。
小泉 でも、この2年間がっつりと歌を見させてもらいましたが、出会った頃より歌を楽しいと思えるようになったんじゃない?
真琴 うん、ちょっとだけ。でも、進んだと思ったらまた退がるっていう、進退を繰り返すんですよ……嫌ねえ。人生振り子!
杉田 ふふ(笑)。
小泉 それが聞けたなら良かったです。
──2025年にデビュー40周年を迎える真琴さんが、これほど熱烈にパフォーマンスと向き合おうとする、思いの源泉は何でしょうか?
真琴 私は1つのことに集中できないんですよ、“人生バラエティ”だから(笑)。シャンソンのショーをするとなったら歌手のことを年表を作って調べ、越路吹雪さんはもちろんのこと、ピアフ、ミスタンゲット、グレタ・ガルボあたりの同時代のアーティストまで一覧にして突き詰めるんです。ジャズと言われたら、ジャズの起源から調べる。その作業は大変なんですけど、性に合っているし、曲を歌うときに背景を知っているのと知らないのでは、歌が与える印象が全然違うんですよね。こうやっていろいろなことを追求しながら終わっていくんだと思います。そんな面倒くさい私なので、今年はお二人の力を借りて、トライアングルになって音楽を作れたら良いなと。例えば久しぶりに会ってもすぐにフッと結束できるような強いつながりを作ることができたらと思っています。
真琴つばさが自身のデビュー39周年を記念して開催している“サンキューライブ”こと「MAKOTO TSUBASA Thank You Concert STREAM of TIME ~時の流れ~」が、いよいよ7月に最終章を迎える。ここでは、真琴の足跡を時系列でたどるライブ「STREAM of TIME」になぞらえて、真琴が思う自身を形成した39のものごとを、本人のコメントと写真で振り返る。
- 太郎
お腹にいる時、男の子と言われ命名された名前。
- 真面目
バカが付くほど真面目です。そして案外、雑です。
- LIVEとCDアルバム
Live Aliveから始まって、タイトルはアルファベット順。残すは“Z”のみ!
- 音楽の原点
子供時代から聴いている品川拍子(お神輿の大拍子と篠笛)。
- ときめきの原点
私に初めて“ときめき”を感じさせてくださったのは、麻実れいさん。
- 初男役!?
幼稚園の演劇で、兵隊さん役。
- 宝塚歌劇団
私の原点。不器用な私は、周りの皆様のお陰で無事卒業できました!
- 初舞台
ラインダンスで同じスタートラインに立った同期生とは、40年以上の仲!
- ラッピングバス
Liveの広告載せて、都バスが走る! 目の前で止まった時は、ドキドキでした。
- ミーちゃん(猫)
動物番組好き。抱っこ好き。気遣い満点。叔母の忘れ形見。
- 初セリフ
「所長~!○○です。」…○○が思い出せない。
- 新人公演初主役
本番中、ずっと幸せの霧がかかってて。今考えるとコンタクトかも…。
- 男役の基本
高汐巴さん、大浦みずきさん、安寿ミラさん、真矢ミキさん。
- スカーレット・オハラ
「風と共に去りぬ」で初女役。輪っかのドレスも初体験。
- エジンバラ
初MV撮影で。駅のホームで皮のコート着て…ちょっと恥ずかしかったです。
- 「EL DORADO」
主演お披露目公演。旧東京宝塚劇場前の大看板が懐かしい。
- 「ローン・ウルフ」
バウ主演作品。狼男に変身も! 初めてセリフ忘れて「ウ~!!」と唸る。
- 「LUNA」と「Blue Moon Blue」
横尾忠則さん作のポスターと、高見沢俊彦さん作の♪Endress Dream!
- 紅白歌合戦
第50回の記念でゲスト出演。背負い羽が、通路を邪魔してました。
- 「わが歌ブギウギ」
笠置シヅ子さんの物語。身長差18cm!?でも、ハートは笠置さん!
- 「愛のソナタ」
今の東京宝塚劇場の杮落とし公演。NHK初の元日演劇生放送。
- 退団
一つの人生のピリオド。そしてスタート。
- ドレス姿
ドレス姿もだいぶ様になってきたような…。着る機会が沢山ありました。
- 着物姿
いかり肩なので、着物は苦手だと思っていたら、案外…。
- 「七人の敵がいる」
初ドラマ主演作。「記録よりも記憶を」監督の言葉が印象的でした。
- 「アダムス・ファミリー」
低音ボイスがやっと日の目を見たミュージカル!?
- 「あさひなぐ」
カツラに苦労しましたが、尼僧姿はお気に入りに。薙刀にも初挑戦。
- 「邂逅~越路吹雪を歌う」
坂東玉三郎さんが自ら選ばれたドレスの生地は、本場イタリアで!
- 「愛と青春の宝塚」
私にとっての宝塚時代の総集編のようでした。たくさん涙しました。
- 第三の道
昔読んだ本の主人公のお父さんの言葉。解決の道はある。
- 漁港
漁港を訪れた宝塚OGとしては、ベスト3に入っているかも!?
- にんにくショウガ鍋
元気保ちたい時に作ります。
- パトリシア・カース
大好きなフランスの歌手。JAZZとシャンソンのMixした感じと声が素敵。
- JAZZコンサート
英語初級者ながら、3か月で覚えた英語の13曲。よくやった!
- Stand by me
落ち込んだときに、ウィスキー片手に夜ごと聴いていた曲。
- ウエディング・ドレス
今までに二度、お仕事で…。桂由美さんのAラインドレスは綺麗でした。
- スタッフの皆様
最強の共演者。月並みだけど、一人じゃステージに立てません。
- 応援してくださる皆様
私の太陽であり水!…なかったら枯れてます!
- Thank You~!
今まで出会った皆様に! そして今これを読んでくださっているアナタに!
プロフィール
真琴つばさ(マコトツバサ)
東京都生まれ。元宝塚歌劇団月組トップスター。2001年の退団以降、女優・歌手として舞台、テレビ、ラジオと多方面に活躍。バラエティ番組でのトーク力に定評がある。近年の舞台出演作にJ-CULTURE FEST presents「千年のたまゆら ~ソング&ダンス 装束新春コレクション~」、「プレミア音楽朗読劇『VOICARION IX 帝国声歌舞伎 信長の犬』」、舞台「あさひなぐ」、「行先不明」、「8人の女たち」、「歌うシャイロック」など。また、ビッグバンドを従えたジャズコンサートなども開催。8月7日ににっぽん丸「夏休み 館山クルーズ 3日間」横浜停泊中のエンターティナーを務める。9月5日に「岩谷時子メモリアルコンサート Forever Vol.5」に出演予定。
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真琴つばさオフィシャルブログ「MKT-air283便」Powered by Ameba
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小泉たかし(コイズミタカシ)
ピアニスト・音楽監督。桐朋学園附属高校音楽科入学、18歳で渡米し、23歳で帰国後プロ活動をスタート。歌伴奏を専門とし、シャンソン、カンツォーネといったヨーロッパ音楽のほか、歌謡曲、ポップス、ミュージカルなど幅広いジャンルでプレイヤー、アレンジャーとして活躍する。スペインのミュージカル俳優のジャパンツアー音楽監督、現地での公演の音楽監督、スペイン・アルコイで行われた国際ピアノフェスティバルに招致されるなど、活動は多岐に渡る。また、ボーカルディレクターとしてボーカリストのコーチングも担当。10月19日に「YOKA WAO Anniversary Encore Show」にピアニスト・音楽監督として出演。
小泉たかし (@piano_koizumi_takashi) | Instagram
杉田駿(スギタシュン)
神奈川県生まれ。バイオリニスト。3歳からバイオリンを始め、神奈川県立弥栄高等学校芸術科音楽専攻を卒業。在学中はクラシックを主にソロ、アンサンブルを学ぶ。ピアニスト小泉たかしを師にポピュラー音楽に触れ、ジャンルの垣根を超え、オールマイティに演奏できるバイオリニストとして活動。小泉が音楽監督を手がけるステージにバイオリン奏者として参加、2024年1月にはスペインでのコンサートに同行した。10月19日に「YOKA WAO Anniversary Encore Show」にバイオリニストとして出演。