久保田秀敏・佐々木喜英が刃を交わして“新しい伝説”を作る「ミュージカル『薄桜鬼 真改』土方歳三 篇」 (2/2)

初めて刃を受ける喜び

──「真改 土方歳三 篇」では、2012年の初演から「原田左之助 篇」(2018年)まで脚本・演出・作詞を担っていた毛利亘宏さんが、西田大輔さんからバトンを受け継ぎ、再び脚本・演出としてカムバックします。毛利さんバージョンでは登場人物の心の機微や、隊士たちと千鶴の恋愛模様が細やかに描かれ、西田さんバージョンでは新選組の隊士たちを軸にした熱い物語が展開しました。

久保田 僕が「ミュージカル『薄桜鬼』」に初参加した「真改 相馬主計 篇」では、すでに西田さんが演出・脚本を担当されていたので、毛利さんが担当する「ミュージカル『薄桜鬼』」に出演するのは今回が初めてなんです。「真改 土方歳三 篇」の台本には、ちょっとくすぐったいと感じるセリフがあって、自分の中に落とし込むまでに少し時間がかかりました。でも、だんだんセリフになじんでいくうちに、自分の中で新たな土方像が生まれて、すごくワクワクしています。恋愛要素があるからこそ、土方と風間の熱い魂のぶつかり合いが引き立つ気がしますし、今作の土方には特に久保田秀敏という人間の内面が色濃く反映されるんじゃないかと思います。それがうまくはまったら、土方と千鶴の愛を表現できるんじゃないかなって。

久保田秀敏

久保田秀敏

──「HAKU-MYU LIVE 3」の開催にあたって、久保田さんに取材をさせていただいた際(参照:「HAKU-MYU LIVE」6年ぶりに復活!久保田秀敏×輝馬が盛り上げる“お祭り騒ぎのステージ”)、「30歳を超えてから役者の楽しさがわかり始めた」とおっしゃっていたのが印象的でした。舞台上での久保田さんを拝見していると、これまで演じてきたさまざまなお役や経験を、ご自身の糧にしながらキャリアを積み重ねていると感じます。

久保田 そうですね。自分の信念を貫き通して新しい時代を切り拓き、最後は潔く散っていく土方の生き様が、単純に男としてカッコいいなって。それが自分自身の生き方に影響を及ぼしている部分もあるかもしれません。だからこそ、土方という役を演じることに心血を注ぎすぎて、「ミュージカル『薄桜鬼』」の現場が終わると、いつも何週間か抜けがらになっちゃうんですよ(笑)。でも、これだけ命をかけられる作品と出会えたことは役者として本当にうれしいことだし、今後もそうそう出会える機会はないんじゃないかと思います。

佐々木 風間は、土方ルート以外ではひと太刀も食らうことなく、涼しい顔をして戦っているんですけど、今回初めて土方から刃を受けるんです。それがすごく楽しみで! 「原田左之助 篇」から風間を演じてきて、やっと食らうことができる。あと、「ミュージカル『薄桜鬼』」といえば何と言っても素晴らしい楽曲群。僕は特に「ヤイサ!ヤイサ!ヤイサ!」が好きなんですが、今作ではどんなナンバーが登場するのかも楽しみです。

佐々木喜英

佐々木喜英

俺がこの作品を引っ張っていく

──「ミュージカル『薄桜鬼』」は、毛利さんの復帰以外にも、一度座組を離れたキャストが再度出演するなど、作品をアップデートするために常に前向きな“新陳代謝”を続けている稀有なシリーズだと思います。

久保田 シリーズものの宿命として、お客さんもキャストも初代キャストのイメージを引きずってしまいがちですけど、そこに囚われていては前に進めない。かの有名な言葉を借りれば、「憧れるのをやめましょう」ということでしょうか(笑)。

佐々木 ははは! 2.5次元の作品は一度物語が完結したらキャストが代替わりして、また一からスタートすることが多いと思うんですけど、その点「ミュージカル『薄桜鬼』」は特殊で、キャストがカムバックしたり、僕のように両極端な役を演じたりしている。これってなかなかないことだし、変化をいとわずに、進化を続けているのは「ミュージカル『薄桜鬼』」ならではだと思います。僕がいつか「ミュージカル『薄桜鬼』」を卒業する日が来て観客として観劇することがあったとしても、また新しい発見があると思いますし、シリーズが続く限りずっと楽しみな作品です。

久保田 わー、一度観客として「ミュージカル『薄桜鬼』」を観てみたいな。

──そのときはやはり土方役のキャストさんを目で追ってしまいそうですか?

久保田 きっとそうなるでしょうね。土方に限らず、どの役を演じるにあたっても、「この人にはかなわない!」「この人が演じたあとには絶対にその役をやりたくない!」と思われるぐらいまで極めたいから、そうならないと役者として負けだなと思っています。

──佐々木さんは土方から風間への役替わりを経験したほか、鈴木勝吾さんや中河内雅貴さんと同時期に風間役を演じています。

佐々木 今、くぼひでが言っていたように、僕も勝吾のあとを継いで風間を演じることにすごくプレッシャーを感じていました。勝吾が作り上げた風間のイメージをどうやって作り変えていくか。お客様に受け入れてもらえるか不安でしたし、でもそれを超えていかないといけないなって。今回、「ミュージカル『薄桜鬼』」に携わって9年目にして、ものすごく大きなチャンスをいただいたなと思っています。今まで内に秘めていた感情を土方とのぶつかり合いの中で爆発させて、毎公演汗だくになりながら思いを届けたいと思っているので、ぜひ楽しみにしていてください。

久保田 初代キャストの言葉を借りると、「ミュージカル『薄桜鬼』」は“新しい伝説”を作らないといけない時期に来ていると思います。今回の「真改 土方歳三 篇」に限らず、自分が土方を演じ続けている間は、「俺がこの作品を引っ張っていく」という気持ちでいるので、皆さん安心して観に来てください! まずは「真改 土方歳三 篇」を通して、皆さんの心に熱いものを届けられたら良いなと思います。

左から佐々木喜英、久保田秀敏。

左から佐々木喜英、久保田秀敏。

プロフィール

久保田秀敏(クボタヒデトシ)

1987年、福岡県生まれ。主な出演舞台に「ミュージカル『テニスの王子様』2ndシーズン」「ミュージカル『憂国のモリアーティ』」シリーズ、「舞台『血界戦線』」シリーズなどがある。5・6月に「女の友情と筋肉 THE MUSICAL -幸せの上腕二頭筋-」に出演予定。

佐々木喜英(ササキヨシヒデ)

1987年、東京都生まれ。俳優・アーティスト。主な出演舞台に「ミュージカル『テニスの王子様』」、「超歌劇(ウルトラミュージカル)『幕末Rock』」シリーズ、「舞台『刀剣乱舞』」シリーズ、「舞台『鬼滅の刃』」シリーズなどがある。3月にHomecoming Party「START」に出演予定。