日本総狂宴ステージ「KEREN」バーヨーク・リー×HIDEBOH|温故知新で型破り “New One”なエンタテインメントの作り方

髙平哲郎&Moment Factory マリアノ・レオッタからのメッセージ

“クールジャパン”を自由なアイデアで表現する「KEREN」を生み出した髙平哲郎と、その世界の具現化をクリエイティブな映像でサポートするデジタルアート集団・Moment Factory。既成概念にとらわれることなく、作品の根幹を担う両者に「KEREN」にかける思いを語ってもらった。

間違った日本でも構わない、これこそクールジャパンだ!という姿勢

「KEREN」脚本・演出 髙平哲郎

髙平哲郎

僕は「KEREN」がテーマとしている“クールジャパン”という言葉を、“日本人が思うカッコいい日本”という意味合いだけではなく、外国人から見た“まがい物の日本”と捉えています。それは日本人からすれば“間違った日本”かもしれないけど、観光客に日本の美しい風景ばかり見せたってつまらない。間違った日本でも構わない、これこそクールジャパンだ!という姿勢で「KEREN」を作っています。僕自身、アメリカ映画で描かれる日本がとても好きなんです。例えば、大阪を舞台としたハリウッド映画「ブラック・レイン」を観た日本人は、「あんな大阪ないよ!」と言うけれど、ないからこそ面白いわけで。

Moment Factoryのイメージボードを見ると、ありえない日本が描かれていたりするんです。例えば、“下手な翻訳”と書かれた看板があったり(笑)。彼らは「間違っていたら、直すから言ってくれ!」と言うけど、僕は「間違っているから面白い!」と、それを採用する心づもりでいる。いろんなことが渾然一体になっている状態が今の日本の姿だと思うし、「これが日本だ!」なんて押し付けがましく言うつもりもない。「これが日本だ!」と言って描かれる日本ほどつまらない日本はないと思います。

大阪という街は種々雑多にいろんなものが入り混じっているのが面白いですね。落語も歌舞伎も発祥はみんな関西ですし、「そんな日本はない!」というのも、「大阪ならあるかもしれない……」と思わせるパワーがある。COOL JAPAN PARK OSAKAは大阪城も近くて、なんとも誇らしげな劇場。3月21日からは「DOWNTOWN FOLLIES」というミュージカルレビューをTTホールで上演させてもらうので、それも楽しみです。

「KEREN」の発想はMoment Factoryのモットーにマッチしている

「KEREN」ビデオ コンテンツ クリエイター Moment Factory マリアノ・レオッタ

マリアノ・レオッタ

Moment Factoryはモントリオールを本拠地とした集団で、日本には東京・渋谷に拠点があります。私自身「KEREN」では、マルチメディアディレクターとして、ショー全体のアイデア、ビジュアルの方向性を決めていく役割を担っています。

「KEREN」のクリエーションは、まず日本の文化や伝統的な背景をリサーチすることから始まりました。我々が手がけた日本食をテーマにしたイベントや安室奈美恵さんのコンサートなど、日本でのプロジェクトもリソースにしています。髙平さんをはじめ、日本のスタッフとやりとりを進める中、映画「ブレードランナー」のような世界観と浮世絵や書道という日本のアートを掛け合わせたら面白くなりそうだ、という話になり、両極端なイメージを融合させることにしたんです。「KEREN」には大阪の街並みが出てくるので、チームで道頓堀界隈を歩きました。Moment Factoryは、ただ映像を制作するだけでなく、演者やほかのクリエイターと現場でコミュニケーションを取りながら作り上げていくことを大切にしています。

今回「KEREN」という言葉を多方面から勉強しましたが、一番面白いと思ったのは、観客を“いい意味でだます”ということ。その発想はMoment Factoryのモットーでもある“We do it in public.”とマッチしていました。私たちも多くの人に驚きを与えるもの作りを目指しているんです。「KEREN」には英語で言うところの「WOW!」という驚きのモーメント(瞬間)がたくさん登場します。また剣術とのコラボレーションは我々にとっても初めての経験なので、とても楽しみです。

COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール
オープニング公演「KEREN」
2019年2月25日(月)~ロングラン公演
大阪府 COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール
スタッフ

脚本・演出:髙平哲郎

振付:バーヨーク・リー

タップ振付:HIDEBOH

殺陣:島口哲朗

音楽:仙波清彦、久米大作

ステージング・演出助手:室町あかね

ビデオ コンテンツ クリエイター:Moment Factory

宣伝美術:横尾忠則

主催:吉本興業株式会社

企画・制作:よしもとクリエイティブ・エージェンシー

髙平哲郎(タカヒラテツオ)
編集者・演出家。1947年、東京都生まれ。一橋大学卒業後、マッキャン・エリクソン博報堂、雑誌「宝島」編集部を経て、75年に編集プロダクション・アイランズを設立。以降、「今夜は最高!」「笑っていいとも!」などのテレビ番組の構成、雑誌編集、映画評論、エッセイ執筆等のほかショーや舞台、ミュージカルなどの構成演出、翻訳訳詞を数多く手がける。2019年3月には「DOWNTOWN FOLLIES Vol.11~Four Fools Strike Back~」を上演する予定。
Moment Factory(モーメントファクトリー)
2001年、カナダ・モントリオールで発足されたマルチメディアスタジオ。アートディレクション、照明、デザイン、テクノロジー、建築、舞台装置など、その活動分野は多岐にわたる。ナイン・インチ・ネイルズ、マドンナといったアーティストのライブ演出に加え、スーパーボウルのハーフタイムショーでマドンナがパフォーマンスをした際の演出、安室奈美恵のコンサートのビデオコンテンツを担当。さらにロサンゼルス国際空港やバルセロナのサグラダ・ファミリアでのプロジェクションマッピングなどを手がけた。現在、東京を含め世界6都市に拠点を構え、400人ほどのスタッフを抱える。