日本総狂宴ステージ「KEREN」バーヨーク・リー×HIDEBOH|温故知新で型破り “New One”なエンタテインメントの作り方

温故知新でありながら、従来の考えにとらわれない精神

──公演タイトルの「KEREN」は、“はったり”や“ごまかし”を意味する日本語の“外連(けれん)”から来ていて、これは歌舞伎だと、早替りや宙乗りといった“奇抜な演出”を指す用語です。お二人は「KEREN」というワードをどのように捉えていますか?

バーヨーク 私にとっての「KEREN」は、クリエイティブに制限をかけない自由さ。英語では「Think outside the box.」と言い替えられる、つまり“箱の中から飛び出す考え方”だと解釈しています。

HIDEBOH

HIDEBOH ジャズの世界にビバップというジャンルがあり、それは“型破り”を意味しますが、「KEREN」も“型破り”に近いのかなと。例えばタップの振付でも、お師匠さんから「そんなことしたらダメ! 邪道だよ!」と怒られたとして、僕はそれも正解だと思うんです。すでにある型からはみ出していかないと新しい世界は作れない。温故知新でありながら、従来の考えにとらわれない「KEREN」は「型を破ってやるぜ!」という精神を持つクリエイターが集結した作品だなと痛感しています。

──殺陣の島口哲朗さんとHIDEBOHさんが共同で手がける、剣舞とタップがコラボレートするシーンは、“型破り”な本作ならではの組み合わせですよね。

HIDEBOH まさにそうです! 「KEREN」のキャッチコピーは「ヤバい、なにこの舞台。どうしてこうなった。」ですから、できるだけ斬新なパフォーマンスを作りたかった。タップに関して言えば、普段は音楽やリズムの想定内で作ることが多いですが、これまであまり使ったことがない振りやリズムを意識的に取り入れて“New One”な振付を目指しました。

バーヨーク 「KEREN」では、ただショーを観て楽しむだけでなく、新しい発想に触れながら、今までにないパフォーマンスを体験できると思います。

Moment Factoryのプロジェクションマッピングと融合

──「KEREN」では、カナダ・モントリオールを本拠地とするマルチメディアスタジオ・Moment Factoryによるプロジェクションマッピングも大きな見どころです。彼らはマドンナのパフォーマンスや、安室奈美恵のファイナルツアーでの映像演出、さらにロサンゼルス国際空港やサグラダ・ファミリアでのプロジェクションマッピングなど、大規模空間を彩るデジタルアートを得意としていますから、今回のコラボレーションも楽しみです。

HIDEBOH 鍛え抜かれたパフォーマンスと彼らの独創的な映像の融合を、観客が体感できるようなステージを実現させたいですね。

バーヨーク ダンスと映像のコラボレーションは、今の時代に合った素晴らしい試みです。きっと、美しいと感じていただけると思います。

HIDEBOH 映像だけでなく、セットや衣装も日本の美、侘び寂びを取り入れた浮世絵のような世界観なので、奥深い作品になると期待しています。

「KEREN」制作発表記者会見より。Moment Factoryが手がけたデモ映像。

COOL JAPAN PARK OSAKAを“日本のブロードウェイ”に

バーヨーク・リー

──“関西発NIPPONオリジナルレビュー”と銘打たれた「KEREN」の劇中には、大阪や京都、奈良といった近畿地方の街並みが登場します。お二人は大阪にどんなイメージをお持ちですか?

バーヨーク 食べ物がおいしくて、特にたこ焼きが好きです。この間、街を歩いていたら看板に大きなカニがいてびっくりしたわ!(笑)

HIDEBOH あはは!(笑) 「KEREN」の作中にも、たこ焼きのお店や派手な看板が出てきますね。僕は父が京都の同志社大学出身でしたし、関西の親戚も多いので、大阪はとてもなじみ深い街です。みんなうっとうしいぐらい積極的で人懐っこい(笑)。人のエネルギーがニューヨークに近い気がします。

──バーヨークさんは日本のどんなところに“クールさ”を感じますか?

バーヨーク 個人的には高島屋のデパ地下が大好き(笑)。こういうものはニューヨークになかったので、とてもクールだと思いました。

HIDEBOH デパ地下ですか!(笑) ひとくちにクールと言ってもいろんな捉え方がありますよね。例えば日本には「武士は食わねど高楊枝」に象徴される“へっちゃらを装う”生き方や、古くから“粋”という言葉があります。また、喜怒哀楽はそこまで表に出さないけれど、胸の内に熱いものを秘めていたりする日本人の気質もひとつのクールな部分なのかなと。でも、バーヨークさんがデパ地下をクールとおっしゃるように、海外の方から見た日本のクールさって、日本人には測りきれないかもしれません。

──では最後に、間もなくオープンするCOOL JAPAN PARK OSAKAへの期待をお聞かせください。

HIDEBOH ニューヨークのブロードウェイは、ショーを観るためだけに世界中から人が集まってきます。COOL JAPAN PARK OSAKAも“日本のブロードウェイ”のような場所になってもらいたい。そして大阪には、なんばグランド花月という歴史的な喜劇の劇場があって、「お笑いを観よう!」と全国からお客さんが訪れています。COOL JAPAN PARK OSAKAもそんな観光地の1つになってほしい。その第1歩として「KEREN」をロングラン上演するわけです。

左からバーヨーク・リー、HIDEBOH。

バーヨーク この劇場で、一生「KEREN」が上演され続ければいいなと思います(笑)。

HIDEBOH それこそ「コーラスライン」のようにずっと上演され続けてほしいですよね。

バーヨーク その通りね(笑)。にぎやかな劇場になることを願っています。

COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール
オープニング公演「KEREN」
2019年2月25日(月)~ロングラン公演
大阪府 COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール
スタッフ

脚本・演出:髙平哲郎

振付:バーヨーク・リー

タップ振付:HIDEBOH

殺陣:島口哲朗

音楽:仙波清彦、久米大作

ステージング・演出助手:室町あかね

ビデオ コンテンツ クリエイター:Moment Factory

宣伝美術:横尾忠則

主催:吉本興業株式会社

企画・制作:よしもとクリエイティブ・エージェンシー

バーヨーク・リー
女優、演出家、振付師。1946年、ニューヨーク生まれ。51年、初演版「王様と私」に子役として出演しブロードウェイデビュー。ワークショップから参加した初演版「コーラスライン」では、のちにダンスキャプテンを務め、2006年のリバイバル版では振付の再構成を担当。現在も振付・演出を担っている。17年、トニー賞で功労者に贈られるイザベル・スティーヴンソン特別賞を受賞。
HIDEBOH(ヒデボウ)
タップダンサー。1967年、東京都生まれ。北野武監督作品「座頭市」のハイライト、農民のタップ&ストンプシーンに出演し、振付・総合演出を手がけた。音楽性の高いリズムタップを基調とし、パフォーミング性を高めたオリジナルスタイル“Funk-a-Step”を考案。ダンサー、アクター、シンガー、コレオグラファー、また、よしもと坂46のメンバーとして多方面で活動している。2019年3月には、髙平哲郎が構成・演出を手がける「DOWNTOWN FOLLIES Vol.11~Four Fools Strike Back~」に出演する。