“つながる演劇祭”から“ひろがる演劇祭”へ、板尾創路・3時のヒロイン福田麻貴が語る「関西演劇祭2024」

2019年にスタートした関西発の演劇祭「関西演劇祭」が2024年で6年目に突入。関西を中心に“つながる演劇祭”を目指してきた「関西演劇祭」は、今回、“ひろがる演劇祭”へと進化する。「関西演劇祭2024」には全国から集まった個性豊かな10劇団が登場。そのうちの1つ、吉本興業所属の7人組アイドル・つぼみ大革命の公演に、つぼみ大革命(編集注:2019年まではつぼみ名義で活動)の元メンバーであり、現在はお笑いトリオ・3時のヒロインとして活動する福田麻貴が作・演出で参加する。

ステージナタリーでは、2019年の「関西演劇祭」発足当初からフェスティバル・ディレクターを務めてきた板尾創路、本格的な演劇作品の作・演出に初挑戦する福田にインタビュー。芸人、俳優、クリエイターといったさまざまな分野で活躍する2人に、“演じること”について語ってもらった。

取材・文 / 興野汐里撮影 / 前田立
スタイリスト / 高堂のりこ(板尾創路)、曽我一平(福田麻貴)
ヘアメイク / 中山伸二衣裳協力(福田麻貴) / STACCATO(バロックジャパンリミテッド TEL.03-6730-9191)

「関西演劇祭」とは?
「関西演劇祭」ロゴ

「関西演劇祭」ロゴ

「関西演劇祭」は、新たな才能を関西から送り出すことを目指し、2019年にスタートした演劇祭。公演期間中、10劇団がそれぞれ45分の作品を発表し、作品上演後、俳優やクリエイターが観客からの質問にその場で答えるティーチインが行われる。

6年目となる今回の「関西演劇祭2024」には、坂元恭平によるライブプロジェクトユニット・暁月-AKATSUKI-、外輪能隆が代表を務めるEVKK/エレベーター企画、お笑いコンビ・クレオパトラの長谷川優貴が主宰するエンニュイ、前田茉羽が座長を務める劇団☆kocho、明治大学劇団活劇工房出身の劇団さいおうば、鮒田直也が代表を務めるThe Stone Age ヘンドリックス、Azukiを中心としたteamキーチェーン、吉本興業所属の7人組“新感覚コミックアイドル”つぼみ大革命、仙洞田志織が劇長、福井しゅんやが副劇長を担うfukui劇、磯部宗潤率いるWAO!エンターテイメントが参加する。

「関西演劇祭2024」の参加団体。上段左から暁月-AKATSUKI-、EVKK/エレベーター企画、エンニュイ。中段左から劇団☆kocho、劇団さいおうば、The Stone Age ヘンドリックス、teamキーチェーン。下段左からつぼみ大革命、fukui劇、WAO!エンターテイメント。

「関西演劇祭2024」の参加団体。上段左から暁月-AKATSUKI-、EVKK/エレベーター企画、エンニュイ。中段左から劇団☆kocho、劇団さいおうば、The Stone Age ヘンドリックス、teamキーチェーン。下段左からつぼみ大革命、fukui劇、WAO!エンターテイメント。

板尾創路(「関西演劇祭」フェスティバル・ディレクター)
3時のヒロイン福田麻貴(つぼみ大革命 作・演出)が語る
「関西演劇祭2024」
左から板尾創路、福田麻貴(3時のヒロイン)。

左から板尾創路、福田麻貴(3時のヒロイン)。

試行錯誤を続けた5年

──2019年の発足時から板尾さんがフェスティバル・ディレクターを務める「関西演劇祭」が、今年で6回目を迎えます。今回の「関西演劇祭2024」には、“つながる演劇祭”から“ひろがる演劇祭”へ、というキャッチコピーが付けられていますが、改めて「関西演劇祭」の歩みを振り返っていただき、今後よりアップデートしていきたいと考えている点があれば教えてください。

板尾創路 「関西演劇祭」を立ち上げた当初は、僕たち運営側もどういったやり方がベストなのかをわかっていないところがあったのですが、まず2つの劇団の公演を同じ日に実施し、公演終了後にティーチインを行うという仕組みを作りました。それを踏襲しながら、毎年試行錯誤してやってきた感じですね。今はもう6年目に突入したので、システムが完成されつつありますけど、もっと良いやり方があるんじゃないかと検討しています。たとえば、「関西演劇祭」を立ち上げたときは関西にゆかりのある劇団を対象にしていたんですが、今では全国の劇団が参加できるようになりました。そのことによって演劇祭としての幅がだいぶ広がって、どんどん参加劇団も増えてきましたし、「関西演劇祭」自体の知名度が上がったと思います。でも、関西で公演をやり、関西から演劇を発信することに意味があると思っているので、そこにはこだわっていますね。今回の「関西演劇祭2024」にも、個性的でワクワクするような10団体が集まってくれて、すごく楽しみなラインナップになったと思います。

板尾創路

板尾創路

──福田さんはかつてご自身が所属していたつぼみ大革命(当時はつぼみ)の公演で作・演出を手がけます。今回はどういった経緯で「関西演劇祭2024」に参加することになったのでしょうか?

福田麻貴 自分自身がつぼみ大革命のメンバーではなくなってからも、つぼみ大革命の公演の演出を担当したり、コントを提供していたんです。今は、年に3回ほどつぼみ大革命のワンマンライブの脚本を担当していて、歌とコントを織り交ぜたストーリー仕立てのライブを制作しています。コントとは呼んでいますが、前半部分は笑い、後半部分はお芝居に特化した90分の物語になっていて、つぼみ大革命の持ち歌の歌詞と物語がリンクしたミュージカルのような構成の作品というとわかりやすいかもしれません。あるとき、ワンマンライブを観に来てくださった方が「『関西演劇祭2024』というイベントがあるから参加してみたら?」と提案してくださって、そのご縁で参加することになりました。演劇の戯曲を描くのは今回が初めてですし、つぼみ大革命のメンバーたちもガッツリ演劇畑でやってきたわけではないので、不安要素もありますが、すごく楽しみですね。

──今回の「関西演劇祭2024」で上演される作品の構想を教えてください。

福田 まだ具体的なことをお話しできる段階ではないんですけど……これまでのワンマンライブでやってきたこととまったく違うことにチャレンジするというより、今まで培ってきたものを生かしつつ、メンバーが感情を乗せてセリフを言えるようなテーマ設定で、メンバーたちのキャラクターに合った登場人物が出てくる作品にしたいと思っています。つぼみ大革命はアイドルグループではありますが、みんなそれぞれ1人の女性なので、彼女たちが持っているバックボーンを描きながら、メンバーの魅力を引き出せたら良いと思います。

福田麻貴(3時のヒロイン)

福田麻貴(3時のヒロイン)

──福田さんは3時のヒロインでもネタ作りを担当されています。3時のヒロインの漫才やコントを書く際と、つぼみ大革命のコントを書く際とで、意識を変えている部分はありますか?

福田 完全に違う考え方で作っていますね。3時のヒロインのネタもつぼみ大革命のネタも“コント”と銘打っていますが、つぼみ大革命で上演する作品は90分くらいのもの。“問題提起”や“成長”など物語としての軸を設定し、後半部分ではメンバーの“ガチ芝居”にお客さんがもらい泣きする熱い展開になるように、構成を練ってから作っています。つぼみ大革命のワンマンライブの脚本を書くときは、全体の物語構成を決めてから、ディテールをコントで埋めていくのですが、真面目に物語構成を考えているときと、コントの展開やボケを考えているときでは、脳みその全然違う場所を使っている感じがします。また、長尺のコントの展開と、3時のヒロインでやっている短尺のコントの展開も、考え方が全然違いますね。でもどちらも楽しいです。

福田さんは“やってくれそう”

──「関西演劇祭」にはこれまでにもお笑い芸人の方々が参加してきました。板尾さんは、普段お笑いのフィールドで活動している芸人さんが作る演劇や彼らの演技に、どのような特徴があると考えていますか?

板尾 芸人は“そこにおる感じ”が強いというのかな。とにかく、ものすごい存在感があるんですよ。それは時に武器にもなるし、時にお芝居の邪魔になることもあるかもしれない。でもそのパワーこそが、芸人がお芝居をするときに放つ魅力かなと思います。福田さんもそうで、バラエティやドラマでの活躍はいつも観ていますから、芸人としての実力はもう十分わかっているんですけど、作家としての彼女は一体どんな作品を作るのか非常に楽しみです。でも、彼女を見ていたらほんまに“やってくれそう”ですよね。しかも、充実した年齢に差し掛かってきたし……。

板尾創路

板尾創路

福田麻貴(3時のヒロイン)

福田麻貴(3時のヒロイン)

福田 充実した年齢!?(笑)

板尾 やりたいことをやれる時期、という意味ね!(笑) 今までの経験を踏まえながら、将来に向けて動き出しているのを感じる。だから、今までやってこなかった演劇みたいなことにチャレンジするにはすごく良い時期だと思いますよ。忙しいやろうけど、忙しい中でやるからこそ良いものができるときがあるから。“クソぢから”って言うんかな(笑)。今回はそういう力が発揮できると思う。期待してます。

福田 ほんまにうれしいです。ありがとうございます。つぼみ大革命の公演って、観に来てくれた方はみんな、めっちゃ笑ってめっちゃ泣いて、「次の日からがんばろうと思えた」と言ってくださるんですよ。でも、なかなか認知が広がらないという悩みがあって。「こんなにおもろいことをやってるのにもったいない!」という悔しい思いをメンバーも私も抱えているので、今回の「関西演劇祭2024」を機に、いろいろな方々につぼみ大革命の活動を知ってもらえたらうれしいなと思います。