中村隼人、晴明神社へ。宮司から聞く“安倍晴明”像 4月は歌舞伎座で会いましょう (2/2)

市川猿之助が出演者9人の思いを込めた絵馬を奉納

晴明神社に絵馬奉納する市川猿之助(左)。

晴明神社に絵馬奉納する市川猿之助(左)。

3月、猿之助が出演者・スタッフを代表して晴明神社を訪れ、公演の成功祈願と絵馬奉納を行った。猿之助は出演者の坂東巳之助、中村壱太郎、尾上右近、中村隼人、中村児太郎、中村福之助、中村鷹之資、市川染五郎が書いた絵馬を奉納。彼らはどんな思いを絵馬に込めたのか? それぞれの扮装姿と共に紹介する。

中村隼人(安倍晴明)

都で評判の若い陰陽師。

市川染五郎(源博雅)

安倍晴明の友人で笛の名手。

坂東巳之助(平将門 / 村上帝)

平将門は朝廷に反旗を翻した武士。村上帝は晴明が仕えていた帝。

中村壱太郎(滝夜叉姫 / 如月姫)

滝夜叉姫は平将門の妹。如月姫は関白家の姫君。

尾上右近(興世王)

平将門と共に蜂起し、将門の蘇生を企む。

中村児太郎(桔梗の前)

帝の愛妾だが、俵藤太の想い人。

中村福之助(俵藤太)

平将門の旧友だが、勅命により将門を討伐した。

中村鷹之資(大蛇丸)

俵藤太たちに加勢する修験者。

市川猿之助(蘆屋道満)

妖術遣いの陰陽師。


「新・陰陽師 滝夜叉姫」特別ポスター

「新・陰陽師 滝夜叉姫」特別ポスター

今月の黙阿弥

黙阿弥と如皐

豊原国周による「大当楽屋寿語六」の浮世絵。中央下に河竹新七(河竹黙阿弥)と瀬川如皐の姿が。

豊原国周による「大当楽屋寿語六」の浮世絵。中央下に河竹新七(河竹黙阿弥)と瀬川如皐の姿が。

以前、河竹新七(黙阿弥)が時代の波に翻弄される様を描いた戯曲「黙阿弥オペラ」(井上ひさし作)を観ていたとき、劇中の新七が瀬川如皐(三世)を“後輩”と言っていて、二人が同時代の狂言作者だったと知った。2人とも五世鶴屋南北門下。嘉永6(1853)年に如皐の「与話情浮名横櫛(よわなさけうきなのよこぐし)」(通称「切られ与三」)」が大ヒットし、黙阿弥は後輩に先を越され、「いっそ身投げしようか」と隅田川河畔をウロウロさまよった……なんてエピソードも残る。如皐の作劇法は黙阿弥に影響を与えたと考えられ、のちに黙阿弥が「處女翫浮名横櫛(むすめごのみうきなのよこぐし)」(通称「切られお富」)を書いたことにも、如皐へのライバル心が伝わる。黙阿弥は後年当時を振り返り「はじめのうちは如皐さんに負けまい、負けまいと出精した」としみじみ語ったとか。

ここでちょっとした逸話を。若き修行時代、黙阿弥たちはいたずらで、師匠南北の家に「幽霊が出る」と噂を流した。師匠がこれに怒ったことから、連名の詫び状をしたためた文章が残っており、最後には黙阿弥(当時勝諺蔵)と如皐(当時絞吉平)らの名前が列記してある。「亡者幽霊お化の三通りに御座候て怨霊の儀は我々手際に防ぎ……」などと、かなり随所にシャレの効いた文章となっており、狂言作者たちの遊び心に笑ってしまう。河竹繁俊著「河竹黙阿彌」(1940年刊行 / 創元社)に全文が写してあるので、ご興味ある向きは、ぜひ古書店で探していただきたい(歌舞伎座ご観劇前後なら、すぐ側にある松竹大谷図書館へ!要予約)。

4月の歌舞伎座夜の部は、「切られ与三」と黙阿弥作詞の人気舞踊「連獅子」が仲良く並ぶ。ぜひ、かつてのライバル関係に思いを馳せてのご観劇を。

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