日本文化の多様性に富んだ魅力を発信するためのプロジェクト「ジャポニスム2018:響きあう魂」。日仏友好160年を迎えた2018年7月から19年2月までの約8カ月にわたり、展覧会や舞台公演、映像や生活文化などさまざまな企画が実施されている。本特集ではその舞台公演の中でも、主に現代演劇に注目し、参加したアーティストの声を届けるほか、いくつかの公演の様子をレポートする。
[概要]文:熊井玲
[「Is it worth to save us?」レポート&インタビュー]取材・文:島貫泰介
[「ワレワレのモロモロ ジュヌビリエ編」レポート]取材・文:徳永京子
「ジャポニスム2018:響きあう魂」で
上演されたのはどんな作品?
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2018
6~7月「ジャポニスム2018:響きあう魂」舞台公演には、36のプログラムがラインナップされた。2018年6月にはまず、「池田亮司 | continuum」展の一環として池田亮司によるコンサートを開催。開会式が行われた7月には和太鼓の古立ケンジと津軽三味線の大野敬正による「邦楽ライブ 和太鼓×津軽三味線」がJapan Expoで行われ、世界各国で上演されている和太鼓集団DRUM TAOの「DRUM HEART」がフランスに初登場。さらに2.5次元ミュージカルの人気作品として、三日月宗近役の黒羽麻璃央、小狐丸役の北園涼、石切丸役の崎山つばさ、岩融役の佐伯大地、今剣役の大平峻也、加州清光役の佐藤流司らが活躍する「ミュージカル『刀剣乱舞』 ~阿津賀志山異聞2018 巴里~」がフランスに初上陸した。
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2018
9月9月には観世流能楽師出演・奥秀太郎による3D映像を駆使した「宮本亜門演出 能×3D映像『YUGEN 幽玄』」や、宮内庁式部職楽部の雅楽が披露された。国立シャイヨー劇場の「松竹大歌舞伎」では、中村獅童・中村七之助の出演により「色彩間苅豆(いろもようちょっとかりまめ) かさね」「鳴神(なるかみ)」が披露されたほか、パリ市立劇場 エスパス・カルダンの「野村万作・萬斎・裕基×杉本博司『ディヴァイン・ダンス 三番叟』」では、野村家親子三代の日替わりによる「三番叟」や、野村万作・萬斎らによる「月見座頭」が上演されるなど、日本の伝統芸能をベースとする作品が展開した。同月には、日本でも大きな評判を呼んだ野田秀樹率いるNODA・MAP「贋作 桜の森の満開の下」が国立シャイヨー劇場にて上演されたほか、現代演劇シリーズとして飴屋法水の第58回岸田國士戯曲賞受賞作「ブルーシート」とイキウメ・前川知大の代表作「散歩する侵略者」のフランス人俳優によるリーディング、庭劇団ペニノのタニノクロウが作・演出を手がける「ダークマスター」と第60回岸田國士戯曲賞受賞作「地獄谷温泉 無明ノ宿」が連続上演された。またTechnopolとのタイアップによるオールナイトイベント「TOKYO HIT vol.3 クラブ・イベント feat. 石野卓球」や世界でのエレクトロ・ミュージック・シーンの新しい可能性を追求しながら活動するミュージシャンが集結した「テクノ・コンサート」、東京ゲゲゲイを含む日仏ダンス共同制作「トリプルビル」のフランス国内各地でのツアー、国内外で活躍の場を広げるダンサーの島地保武が日本人として初参加した国立シャイヨー劇場による「ダンス創作のためのレジデンス・プログラム」なども実施された。
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2018
10月10月には川口隆夫が、日本を代表する舞踏家をオマージュしたコンテンポラリーダンス「大野一雄について」ソロ公演をパリ市立劇場 エスパス・カルダンで行った。フィルハーモニー・ド・パリでは伶楽舎と森山開次による雅楽とダンスの共演や太鼓奏者の林英哲と英哲風雲の会によるライブパフォーマンス、人間国宝の井上八千代、富山清琴らによる日本舞踊公演のほか、竹本千歳太夫、豊澤富助、吉田玉男らによる文楽公演「日高川入相花王~渡し場の段」「壺坂観音霊験記~沢市内より山の段」が披露され、多彩なラインナップがパリを彩った。また作家の辻仁成がミュージシャンのJINSEI TSUJIとして日仏の名曲をカバーした「JINSEI TSUJI CONCERT」や、現代演劇シリーズとしてサンプル・松井周の第55回岸田國士戯曲賞受賞作「自慢の息子」が片桐はいり、日髙啓介らの出演で上演されたほか、17年にチェルフィッチュ創立20周年を記念してリクリエーションされた、岡田利規の第49回岸田國士戯曲賞受賞作「三月の5日間」が90年代生まれの俳優たちによって上演された。
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2018
11月11月には、2010年の初演以来ブラッシュアップを重ねる木ノ下歌舞伎「勧進帳」と、15年に初演、18年に「寺山修司没後35年記念」として再演された藤田貴大演出「書を捨てよ町へ出よう」が登場。さらに岩井秀人がフランスに長期滞在し、プロフェッショナルおよびアマチュアのフランス人俳優たちと立ち上げた「ワレワレのモロモロ ジュヌビリエ編」は現地でも高い評価を得た。そのほか「美少女戦士セーラームーン」の魅力を生かした新たなパフォーマンスショー「"Pretty Guardian Sailor Moon" The Super Live」や、世界中で上演を重ねる宮城聰演出「マハーバーラタ~ナラ王の冒険~」といった幅広い演目が上演され、日本文化の多様さを強く印象付けた。
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2018
12月バーチャル・シンガー初音ミクのヨーロッパ初コンサートが開催された12月は、小曽根真率いるビッグ・バンド、No Name Horsesのジャズコンサートや、フランスを活動拠点とするダンサー・振付家の伊藤郁女と多彩な活躍を繰り広げる森山未來が秋に日本で初演したコンテンポラリーダンス「Is it worth to save us?」が上演された。岡田利規は日タイ国際共同制作プロジェクトとして18年にタイで初演された「プラータナー:憑依のポートレート」を発表した。
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2019
2月そして「ジャポニスム2018:響きあう魂」最終月である2月には、野村萬と梅若実、浅見真州らによる能楽公演として、能「翁」「葵上」「清経 恋之音取」「砧」、さらに狂言「木六駄」「二人袴」を上演。また村上春樹作品に故・蜷川幸雄が挑んだ「海辺のカフカ」が寺島しのぶ・岡本健一・古畑新之・柿沢勇人らの出演でパリ初演を迎えるほか、「2018ジャポン×フランス プロジェクト」と題し、知的障害者によるプロの和太鼓集団・瑞宝太鼓の公演を中心とした舞台芸術が披露される。
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伊藤郁女×森山未來対談&フランス公演レポート
2019年3月18日更新