2018年6月、「東京芸術劇場芸術監督 野田秀樹を囲む記者懇談会」にて、野田秀樹は若い演劇人を対象にしたプロジェクトを構想中であると発表した(参照:野田秀樹が「若い人とある程度まとまった時間を」12月ごろメンバーを募集)。そして9月、「東京演劇道場」の始動を正式に告知。12月に行われたオーディション / ワークショップによりメンバーが決定した。
野田は、今年1月の記者懇談会にて、8歳から七十代後半まで約1700名の応募があったこと、最終オーディションで60名が道場生となったことなどを明かした(参照:東京演劇道場始動に向け、野田秀樹が意気込み「演劇のプラットフォームに」)。彼らは年数回、不定期に開かれるワークショップに参加し、野田や、野田が信頼を置く国内外のアーティストのメソッドに触れる。野田は懇談会で「いわゆる演劇のプラットフォームと言うか、出会いの場所になってほしい」と語っており、今後どのような新たな展開が生まれてくるのか、注目だ。
東京芸術劇場が注目する、次代を担う若き才能を発掘するシリーズ「芸劇eyes」「芸劇eyes番外編」「eyes plus」。10年目となる今年は、「芸劇eyes」に玉田企画、「eyes plus」に贅沢貧乏、鳥公園、ワワフラミンゴ、てがみ座、烏丸ストロークロックがラインナップされた。このコーナーでは、同シリーズの企画立ち上げから関わっている演劇ジャーナリストの徳永京子が、シリーズ10年の歩みと今後について、3回にわたって語る。
2009年に野田秀樹さんが芸術監督になられたときに、私は東京芸術劇場(以下、芸劇)の運営委員の1人として参加することになりました。シアターイーストとシアターウエスト……リニューアル前は小ホール1、2という名前でしたが、当時から野田さんはここを才能ある若い人たちに使ってほしいとおっしゃっていて。で、はっきりそう言われたわけではないんですけど、私が委員に呼ばれたのは、そこを期待されてではないかと思い、「今注目すべき若い才能を紹介するシリーズを作りませんか」とご提案しました。それが「芸劇eyes」となるシリーズです。
選考にあたり芸劇からは、「せっかく劇場と劇団が提携するのだから、劇団公演よりもステップアップできる公演にしよう」という提案がありました。その基準として、まず動員1000人くらいの劇団を対象にしましょうと。その人たちが「芸劇eyes」に参加したことで動員が1500人くらいになる、そのために1週間の公演期間を2週間にするなど、劇団にとって成長とか飛躍のきっかけになる場にしたいと考えたんです。そこで1000人くらいの動員があって、確かなクオリティと個性を持ち、なおかつ私が「もっと知られるべきだ」と思っている人たちを、野田さんや芸劇の皆さんにプレゼンしたり、野田さんからもアイデアが出て、初年度はハイバイさん、五反田団さん、グリングさん、冨士山アネットさん、モダンスイマーズさんに決まりました。
ただ3・4年続ける中で、問題点も出てきました。「芸劇eyes」によってそれなりの動員や評価のようなものを得られても、その後も劇場との関係が続いていく劇団とそうではない劇団が出てしまう。「劇場が劇団に声をかける以上、できる限り、その後も関係が継続できるようにしたい」と考えて、「eyes plus」という枠が生まれました。「いつもと違うをプラスする」がコンセプトなのですが、劇団によって足りている部分と足りてない部分が違うので、何をプラスするかは相談しながら決めていく。劇場と劇団が創作を一緒に進めていく、幅をもたせたプログラムにしていこうと考えています。(続)
2019年秋から2020年3月までに上演される「芸劇eyes」&「eyes plus」を徳永のポイント解説付きで紹介する。
- 贅沢貧乏「ミクスチュア」
- 2019年9月20日(金)~29日(日)
- 徳永コメント
2年前にシアターイーストで上演された「フィクション・シティー」は第62回岸田國士戯曲賞の最終候補作に選ばれました。作・演出の山田由梨さんは、劇場で上演することをとても計画的に考えている方。このところ、また力をつけてきた感があるので、ぜひもう一度、シアターイーストで上演してもらいたいとお願いしました。
2020年2月21日更新