祝!25周年 ヨーロッパ企画の“奇跡的な軌跡”を上田誠×諏訪雅×永野宗典が振り返る / メンバーがお気に入り作品をセレクト (3/3)

メンバーがお気に入り作品をセレクト

ヨーロッパ企画の歴史を共に作ってきたヨーロッパ企画メンバーたち。ここでは新作「切り裂かないけど攫(さら)いはするジャック」に出演する石田剛太、酒井善史、角田貴志、土佐和成、中川晴樹、藤谷理子と、メンバーの西村直子、大歳倫弘、山口淳太に「25周年を感じること」「ヨーロッパ企画の作品で最も好きな作品」を教えてもらった。

石田剛太

石田剛太

──「ヨーロッパ企画25周年」をどんなとき、どんなことに感じますか?

年齢を聞いてその人が25歳だったとき、この人くらい劇団やってるんだあとしみじみ思います。
あと、いま稽古してますが、あと25年くらいはこのメンバーで稽古したいなあと思います。

──これまでのヨーロッパ企画の作品で最も好きな作品、思い入れのある作品は?

「出てこようとしてるトロンプルイユ」はとても好きな作品の1つです。繰り返しが始まるところで演じている自分もこれいつまで続くんだろうと不安になっていきます。不思議な劇で大好きです。

プロフィール

石田剛太(イシダゴウタ)

1979年、愛媛県生まれ。1999年、第2回公演よりヨーロッパ企画に参加。外部の舞台や映像作品にも数多く出演するほか、KBS「ヨーロッパ企画の暗い旅」ではメインMCを務める。LOVE FM「こちらヨーロッパ企画福岡支部」ではパーソナリティを担当しながら、ラジオドラマ「イシダカクテル」を執筆。

酒井善史

酒井善史

──「ヨーロッパ企画25周年」をどんなとき、どんなことに感じますか?

「ヨーロッパ企画25周年カフェ」の初日に、開店時間前からお客様が大勢詰めかけてくれたのを見たとき。劇団25年続けると、こんな幸せな光景が見られるんだあと……。じーんとしました。
それと、永野さんが3か月かけて制作したという、25年間の公演に出てくる全キャラクターが描かれた25周年ポスター。これがもうほんとにいつまででも見ていられること。25周年が見事に具現化されてました。

──これまでのヨーロッパ企画の作品で最も好きな作品、思い入れのある作品は?

正直どれも好きですが、「来てけつかるべき新世界」。今と地続きの暮らしの中にどんどん新しいガジェットが入り込んでくる様子が大変にエキサイティングで、近未来ファン垂涎の作品です。
個人的にはアバターで登場したり、ロボット作って操縦したり、一緒に演技したり、なかなか演劇でできないことをやらせてもらえました。そして「シンギュラリティ(技術的特異点)」というワードをセリフで言えたのは、僥倖でした……!

プロフィール

酒井善史(サカイヨシフミ)

1981年、京都府まれ。2000年、第5回公演よりヨーロッパ企画に参加。小道具製作をすることも多く、得意の工作を生かした発明品や電子工作、SFやファンタジー風アイテムの造形もする。日テレ「所さんの目がテン!」では実験プレゼンターを務める。KBS「ヨーロッパ企画の暗い旅」ではメインMCを務める。テレビドラマや映像の脚本も数多い。

角田貴志

角田貴志

──「ヨーロッパ企画25周年」をどんなとき、どんなことに感じますか?

台本をiPadで読んでいる人が現れたときに、ずいぶん遠くまで来たのだなと感じます。まずiPadを買えるほどの経済力を持つ人が現れたことに驚きを禁じえません。25年を経て貯金がたまったのでしょうか。もう1つはペーパーレスの時代がやってくるとは25年前は考えもしなかったです。あとそもそも私は途中参加なので25周年にピンときていません。

──これまでのヨーロッパ企画の作品で最も好きな作品、思い入れのある作品は?

「囲むフォーメーション」。
ある一つの出来事を9つの部屋分見せていくという構成で、見ている人が頭の中で完成させる劇になっているのが、なんだかゲームやパズルみたいで面白くて好きです。でも実際に観客として観たらどうかはわかりません。「囲」の形をした部屋を舞台にした劇があったんだよ、って風のうわさで聞いて面白そう!と思うくらいがちょうどよいのかもしれません。

プロフィール

角田貴志(スミタタカシ)

1978年、大阪府生まれ。2004年の第16回公演よりヨーロッパ企画に参加。以降、ほとんどの本公演に出演。俳優業の傍らイラストも手掛け、さまざまな映像作品やグッズ、広告などにイラストやキャラクターデザインを提供。映画「すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ」(2019年)では脚本を、Eテレ「銀河銭湯パンタくん」では、脚本と人形デザインを担当。11月には映画「すみっコぐらし ツギハギ工場のふしぎなコ」が公開予定。

土佐和成

土佐和成

──「ヨーロッパ企画25周年」をどんなとき、どんなことに感じますか?

今回の稽古のはじめのほうにエチュードをしたんですが、それまで誰もしゃべってなかったのに、エチュードが始まった瞬間ワッーとしゃべり出すのをみたときに「ああ25年やってんな」と感じました。

──これまでのヨーロッパ企画の作品で最も好きな作品、思い入れのある作品は?

「出てこようとしてるトロンプルイユ」です。ヨーロッパ企画の作品の中でも特に密度が高く、「ホームランか三振か」みたいなフルスイング感がとてもかっこいい作品です。個人的にも2度とやらないような役を演じさせてもらうことができました。

プロフィール

土佐和成(トサカズナリ)

1977年、広島県出身。2004年、第16回公演よりヨーロッパ企画に参加、以降ほぼ全ての公演に出演。外部の舞台やテレビドラマ、映画にも多数出演。2020年、映画「ドロステロのはてで僕ら」では主演を務めた。

中川晴樹

中川晴樹

──「ヨーロッパ企画25周年」をどんなとき、どんなことに感じますか?

イベントや記念興行をやるので25周年か~と思ったりしますが、それ以外では全く感じません。
今年も本公演の稽古でエチュードしてますが、全員好き勝手にしゃべって、うるさくて、誰の言葉も聞き取れず、25年も一緒にやってるとは思えないくらい、まとまりがなかったです。 でも、そんな所が25年続いた秘訣なのかもしれません。

 

──これまでのヨーロッパ企画の作品で最も好きな作品、思い入れのある作品は?

20周年のときに同時上演した「サマータイムマシン・ブルース」、そしてその15年後の世界を描いた続編「サマータイムマシン・ワンスモア」です。
15年の時をかけて回収される伏線。あの頃から全く成長しない、でも年齢だけ重ねた等身大の僕ら。(ほぼ)同じメンバーでやり続けたからこそ作れた、劇団へのご褒美のような作品でした。

プロフィール

中川晴樹(ナカガワハルキ)

1977年、愛知県生まれ。2000年、第5回公演よりヨーロッパ企画に参加しほぼ全ての公演に出演。外部出演も多数。脚本と監督を務めた短編映画「恋する極道」が「那須国際映画祭・那須アワード2015」でグランプリを獲得。ラジオ番組の企画構成もなども手がける。

藤谷理子

藤谷理子

──「ヨーロッパ企画25周年」をどんなとき、どんなことに感じますか?

私は入団して2年なので昔を思い出してしみじみする、ということはないのですが、ことあるごとに「25周年かあ」とは思っています。特に稽古場で諏訪さんと永野さんが同じシーンにいて、上田さんが演出をつけているとき。「この人たちは25年前からこれをずっとやってきたんだ。ヨーロッパ企画の原始だ。」と感じずにはいられません。

──これまでのヨーロッパ企画の作品で最も好きな作品、思い入れのある作品は?

出演してないし、本公演でもないのですが、初めて観たヨーロッパ企画の劇、イエティの「さらばゴールドマウンテン」は思い入れのある作品のひとつです。家族で観に行って、弟と並んで最前列で観ました。夢中になって見終えて、しばらくは劇中のセリフをお茶の間で言い合っていたくらい印象的でした。本公演では劇団員になって初めて出た「九十九龍城」です。なんでも初めては特別なものですね。

プロフィール

藤谷理子(フジタニリコ)

1995年、京都府生まれ。2014年、ヨーロッパ企画・諏訪雅によるミュージカル「夢! 鴨川歌合戦」にオーディションを経て出演。以降、第35回公演「来てけつかるべき新世界」(2016年)では主演を務めたほか、本公演や舞台・映像作品への出演を経て、2021年、ヨーロッパ企画に入団。外部の舞台やミュージカル、映像作品への出演や、ナレーションも数多い。

西村直子

西村直子

──「ヨーロッパ企画25周年」をどんなとき、どんなことに感じますか? 

入団した当初は高校を卒業したばかりで、右も左も分からないまま、現事務所であるヨーロッパハウスに居候させてもらっていたのですが、部室みたいな感じで何となくみんな集まってきては夜中にホラービデオを観たり、明け方までゲームをして朝ごはんを食べに行く、なんて青春を共に過ごしてきました。そんな我々も今では季節行事に家族ぐるみで集まり、劇団員の子供たちと息を切らしながら追いかけっこをして遊んでいるのは不思議な感じです。

──これまでのヨーロッパ企画の作品で最も好きな作品、思い入れのある作品は?

「ビルのゲーツ」。カードをかざしてゲートを開けていくだけっていう話のシンプルさと、舞台セットや小道具のゲームっぽい感じも好きで。出ずっぱりのメンバーは大変だったと思うんですけど、裏ではそのシーンに出演していない役者が裏方に徹していて、楽しませようっていうチーム感や、話が進むにつれてお客さんも参加している様な一体感があって、それが新鮮な公演でした。

プロフィール

西村直子(ニシムラナオコ)

1985年、奈良県出身。2004年、第16回公演よりヨーロッパ企画に参加しほぼ全ての公演に出演。映像作品への出演のほか、「西村ブックセンター」の店長として、ハンドメイドな本や雑貨を集めた書店を不定期で開催。京都トランスポップギャラリーで開催される「アンザイさいだぁプラス」では、ヨーロッパ企画メンバーのアート作品のキュレーションも務める。

大歳倫弘

大歳倫弘

──「ヨーロッパ企画25周年」をどんなとき、どんなことに感じますか?

誰かの悪口を散々言いあった後に、「まあ、人それぞれやけどな」や、「いろいろあるけどな」など、ごく簡単なエクスキューズを入れているのを見たとき。昔は全っ然、そんなことなくて、ロクでもないこと言いっ放しの無法状態。「俺は飲み会では、面白いやつとしかしゃべらない」とか、よくわからない“かまし“をする人がいたし、心ないこと平気で言う人たちの集団だった。

──これまでのヨーロッパ企画の作品で最も好きな作品、思い入れのある作品は?

「ブルーバーズ・ブリーダーズ」。初めて作劇の助手として関わった公演で、“作る”ことの裏側をしっかりと見られた。夜中、メンバーで延々と話し合ってもまとまらなかった話が、言い合うのにも疲れきった明け方に、ポロっと冗談のように誰かが出したフレーズがキーとなり、また創作が少し前に進む。そんな瞬間に立ち会えたことが財産。3日に一度くらいの割合で今でも思い出して、自身の創作の指針にしている。

プロフィール

大歳倫弘(オオトシトモヒロ)

1985年、兵庫県生まれ。2005年、ヨーロッパ企画に参加。以降、作家として映画、テレビドラマの脚本、舞台の脚本・演出を多く手がける。2009年にヨーロッパ企画の劇団内ユニットとしてイエティを立ち上げ、プロデュース公演を上演。

山口淳太

山口淳太

──「ヨーロッパ企画25周年」をどんなとき、どんなことに感じますか?

今年は今までになく、全メンバー1人ひとりがフル稼働している印象があります。役者だけでなくスタッフもみんなです。京都の二条にある事務所(通称:ヨーロッパハウス)に行くといつも誰かが作業していて、ものすごく活気があって、今までとは違うなと。去年とも全然違うんです。あっ、25周年だと。ヨーロッパハウスにいる時に僕は感じます。

──これまでのヨーロッパ企画の作品で最も好きな作品、思い入れのある作品は?

映画「リバー、流れないでよ」です。
今年の作品ですが(汗)上田誠が原案・脚本。僕が監督したタイムループ映画です。ヨーロッパ企画は舞台だけでなく映像にも力を入れてきて、今までのノウハウすべて詰め込んだ25周年にふさわしい映画作品ができたと胸をはれるものになりました。経験したことがないほどのさまざまなトラブルにも見舞われましたが、新旧メンバーが意見を出し合いながらリカバリーし続けた日々も忘れられません。

プロフィール

山口淳太(ヤマグチジュンタ)

1985年、大阪府生まれ。2005年、ヨーロッパ企画に参加。映画やテレビドラマ、舞台公演、ドキュメンタリーなど映像コンテンツの演出、撮影、編集を行う。2020年に映画「ドロステのはてで僕ら」の監督を務め、海外の映画祭で多数受賞。2023年には映画「リバー、流れないでよ」の監督・編集も手がけた。またクリープハイプ「イト」MVや「あいつが上手で下手が僕で」「恋に無駄口」などの連続ドラマも手がけている。