荒牧慶彦プロデュース「演劇ドラフトグランプリ」が、6月14日に東京・日本武道館で開催される。本プロジェクトでは、多くの場合、役に合わせてプロデューサーや劇作家、演出家に“選ばれる”俳優たちが、自ら座長となって出演者や演出家を選り抜き、人数や上演時間など、決められたルールの中で、オリジナル演劇を創作。当日は、川尻恵太の総合演出、尾上松也のMCのもと、4チームがグランプリを競って演劇作品をぶつけ合う。去る3月11日に行われた「演劇ドラフト会議」では、座長を務める荒牧慶彦、佐藤流司、高野洸、染谷俊之がそれぞれに思いを巡らせ、笑いあり涙ありの紆余曲折を経て、4チームを誕生させた(参照:荒牧慶彦の「演劇ドラフトグランプリ」佐藤流司・高野洸・染谷俊之も座長に)。
ステージナタリーでは企画の提案者であり、プロデューサーでもある荒牧に、「演劇ドラフトグランプリ」への思いを聞く。さらに、座長たちが公演に向けて意気込みを寄せた。俳優たちの、俳優たちによる、一夜限りの演劇の祭典を、彼らの言葉からひもといてみよう。
構成・文 / 大滝知里
あくまでも“お祭り”、プロデューサー荒牧はみんなに楽しんでもらいたい
──「演劇ドラフトグランプリ」では、俳優たちがドラフト形式でクリエイターや共演者を指名し、チームを結成。4チームがそれぞれのテーマにのっとって作品を立ち上げます。企画の発端は何ですか?
きっかけは昨年、コロナ禍でロックダウンされ、家にいることを余儀なくされているときに、シアターコンプレックスで(プロデューサーの)松田(誠)さんと1対1の対談を行ったことです。「何か面白いアイデアはないか」というテーマで話していたときに、ポンと思い浮かんだものでした。以前から、「俳優が、演出家も役者も、何もかも逆指名してみるのは面白いのではないか?」という考えはあったので、本当に軽い気持ちで言ってみたんです(笑)。そこから話がどんどん進み、いろいろとディスカッションしていくうちに、自分でプロデュースしてみようということになりました。
──荒牧さんは「舞台『刀剣乱舞』ジョ伝 三つら星刀語り」など、これまでも座長のご経験がありますが、演出家や出演者を自ら選ぶことには、また違う責任が生まれるのではないかと想像します。「演劇ドラフト会議」ではサッと決断されていたように見受けられましたが、どのようなところに“自分で選択する”面白さや難しさを感じましたか?
確かに、演出家やほかの俳優を選ぶというのはとても恐れ多く、責任もあるとは思ったのですが、事前の顔合わせで「『演劇ドラフトグランプリ』というお祭りを盛り上げるものの一環として捉えてほしい」という旨を、演出家の方や役者の皆に伝えていました。
「演劇ドラフト会議」の際にも言いましたが、誤解してほしくないのは“好き嫌い”で選んでいないということ。あくまでも「演劇ドラフトグランプリ」はお祭りで、僕は役者にも、ファンの人にもつらい思いはしてほしくないんです。ただ、“人が人を選ぶ”という行為は、どうしても見え方が気になってしまう部分でもありました。なので、“皆ができる限り傷つかない範囲でドラフト会議をする”ということをテーマに、それをどう見せるか、その調整がとても難しかったです。
でも、実際に選ぶときは、本当にその場の流れで「この人を採ったから、この人に合う人はあの人かな」みたいなテンションで採っていました。
チームの意外な共通点を逆手にとって…?
──座長という立場を共有する佐藤流司さん、高野洸さん、染谷俊之さんそれぞれに期待することは?
思う存分、自分らしさをぶつけてもらえればと思います。それぞれの色も、得意としているものも全然違うので、各座組での得手不得手を生かすことによって各チーム、最大のパフォーマンスをしていただきたいです。
──佐藤さんと指名が重なる場面もありましたが、できあがった荒牧さんのチーム、ID Checkersの強みは何でしょうか。
偶然なことに、ID Checkersは演出家も含めて童顔ぞろいなのです(笑)。そこは武器になるんじゃないかな。見た目のフレッシュさと、中身の玄人さをうまく合わせることができれば良いなと思っています。そこに萩野(崇)さんという、とても素敵なダンディおじ様がいらっしゃる。このメンツだけで、いくらでも想像が膨らみます。無限の可能性。それが強みです。
──荒牧さんは今年、俳優デビュー10周年を迎え、「演劇ドラフトグランプリ」や東京・明治座でのプロデュース公演(参照:荒牧慶彦が俳優デビュー10周年に明治座で「殺陣まつり」、新人俳優オーディションも)など、新しいことに着手されていますが、俳優としての目標や今後の広がりをどのように考えていますか?
俳優としては、常に“カメレオン俳優”と呼ばれる、何にでもなれる俳優を目指しています。そして僕自身、芝居で人を感動させたいし、ファンの人たちの活力になりたい。その思いがずっとあります。今の僕があるのは応援してくれているファンの方々がいるから。ファンの方々と一緒に、自分の人生もファンの方々の人生も彩ることができるような、そんな俳優を目指し続けたいです。
また、僕はいつも「何にでも挑戦してみたい。一度やってみなければわからない」という心持ちでやっています。だからこそこの企画が生まれ、ここまで来られたのかなとも思うんです。そういうチャレンジ精神を持ち続け、これからもいろいろな物事をプロデュースなり、やっていきたいです。もちろん、役者業を第一に。
プロフィール
荒牧慶彦(アラマキヨシヒコ)
東京都生まれ。2012年、「ミュージカル『テニスの王子様』」2ndシーズンで本格的に俳優デビュー。主な出演舞台に、「舞台『刀剣乱舞』」「MANKAI STAGE『A3!』」「『ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-』Rule the Stage」など。7・8月に明治座主演公演・舞台「ゲゲゲの鬼太郎」に鬼太郎役で出演するほか、12月に俳優デビュー10周年を記念した「荒牧慶彦俳優10周年記念公演『殺陣まつり ~和風三国志~』」をプロデュース。2023年10・11月には「舞台『刀剣乱舞』山姥切国広 単独行 -日本刀史」が控える。