いつかやりたかった「ジュリアス・シーザー」のキャシアス
──そして上演年が少しさかのぼり、2014年に上演された彩の国シェイクスピア・シリーズ第24弾「アントニーとクレオパトラ」も1日に放送されます。宝塚歌劇団で爆発的な人気を誇った安蘭けいさんが、歌劇団退団後、初めての蜷川演出、初めてのシェイクスピア作品に挑み、話題となりました。
この作品、珍しくDVDで見返したんですけど、俺が全然ダメ!(笑) でも安蘭さんはすごく素敵だったと思います。実はゲネプロで、彼女のシーンで芝居が止められたんですよ。「瞳子(安蘭)、そんなんじゃ幕が開かないぞ」って蜷川さんがおっしゃって。でもその言葉を初日に見事に跳ね返して、安蘭さんは堂々とクレオパトラを演じていました。という意味で、蜷川さんが本気になって安蘭けいを鍛えた作品でもありますね。あとは劇団☆新感線の橋本じゅんさんが蜷川作品初出演だったり、亡くなった文学座の坂口芳貞さんや中川安奈さんも出演されていて、そういう意味でもとても思い出深い、貴重な作品です。
──2日に放送される彩の国シェイクスピア・シリーズ第29弾「ジュリアス・シーザー」(2014年)も、稽古が大変だったそうですね。
そうですね。たださっきお話しした通り、阿部さんがブルータスとして中心に立ってくれていたし、僕はいつかやってみたいと思っていたキャシアスを、阿部さんと一緒にやれたのでとてもうれしかった。僕、このときのキャシアスを自画自賛してるんですよ。今まで僕がやった役の中でも5本指に入るくらい、「よくできた」と思ってます。
──キャシアスのどんなところに惹かれるのでしょうか?
キャシアスって直球な人なんです。でも直球な人を直球なやり方で突っ走って演じるということが、これからはできなくなるように感じていて。年を取ってくると体力的にも気を遣わないといけないし、直球な役に面白味も感じなくなるだろうと思ってて、だからキャシアスのような直情径行な役をやるのは今回が最後だろうと思いながらやりました。また蜷川さんの作品によく出てくる、セット全部が階段という舞台美術も、役者にとっては負荷がかかるし、毎日落ちるんじゃないかと心配でしたが、そういうことをやらせてくれる人が今はもういないので、もう二度とああいうことはできないのかな、やらせてもらえて良かったなと思います。
一年の計はシェイクスピアにあり!?
──3日は、ガラリと変わって、現代を舞台にした音楽劇「リタルダンド」(2011年)が放送されます。昨年死去した中島淳彦さん作、G2さん演出の作品で、若年性アルツハイマーを患う夫とその妻を軸に、さまざまな人たちの思いが描かれました。
これはね、すごくいい芝居ですよ。アルツハイマーがテーマと聞くと、重苦しい作品って思われるかもしれませんが、歌もあるし、ワイワイと和やかに観られる芝居で、でも最後はきっちり泣かせる。演じながら素敵な芝居だなと思いました。
──お正月、家族で観るのに良さそうですね。
その通り!(笑)
──今年はコロナの影響によってお正月を家で過ごす人も多いと思います。“100時間どっぷり”、自宅で舞台漬けになって迎える新年も楽しそうですね。
そうですね。見逃した芝居がある方も、お芝居をまだ観たことがない方も、こんな機会はそうそうないと思いますし、「一年の計は元旦にあり」って言いますから、元旦からシェイクスピアというのも新鮮でいいのでは。ぜひご覧いただければと思います!
吉田鋼太郎 関連作品はこちら!
- 「ヘンリー四世」
- 2021年1月1日(金・祝)17:15〜21:30
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作:ウィリアム・シェイクスピア
演出:蜷川幸雄
翻訳:松岡和子
構成:河合祥一郎
出演:吉田鋼太郎、松坂桃李 / 木場勝己、立石涼子、星智也、矢野聖人、冨樫真、磯部勉、たかお鷹、辻萬長、瑳川哲朗 ほか
- 「ヘンリー五世」
- 2021年1月1日(金・祝)21:30〜24:15
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作:ウィリアム・シェイクスピア
演出:吉田鋼太郎
翻訳:松岡和子
出演:松坂桃李 / 吉田鋼太郎、溝端淳平、横田栄司、中河内雅貴、河内大和 ほか
- 「ヘンリー八世」
- 2021年1月1日(金・祝)24:15〜27:30
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作:ウィリアム・シェイクスピア
演出:吉田鋼太郎
翻訳:松岡和子
出演:阿部寛、吉田鋼太郎、金子大地、宮本裕子、山谷花純、谷田歩、河内大和 ほか