黒田育世×菅原小春×奥山ばらば「ラストパイ」Dance New Air 2018 ダンスの明日|いよいよダンスの時代がやって来た

東京・青山を中心に、国内外の旬なアーティストたちが多彩な作品を繰り広げるダンスの祭典「Dance New Air」。8回目となる今回は、“身体を透してみえてくるもの”をキーワードに、7つの作品とワークショップ、展覧会やレクチャーなど約20のプログラムが実施される。そのオープニングを飾る「ラストパイ」は、2005年にBATIKの黒田育世が、金森穣率いるNoismに提供した伝説的な作品だ。黒田が「人間動物園を目指した」と語る今回は、世界の注目を集める菅原小春、舞踏をベースに幅広く活動する奥山ばらばなど、多彩な顔ぶれが出演。本インタビューでは黒田、菅原、奥山の3人に、稽古の様子や作品に賭ける思いを語ってもらった。

取材・文 / 熊井玲 撮影 / 平岩享

「Dance New Air 2018 - ダンスの明日」2018年10月3日(水)~14日(日)
  • 黒田育世「ラストパイ」
    黒田育世
    「ラストパイ」

    2018年10月3日(水)~5日(金)
    東京都 草月ホール

    振付・演出:黒田育世

    音楽・演奏:松本じろ

    出演:菅原小春、小出顕太郎、加賀谷香、熊谷拓明、樋浦瞳、北村成美、奥山ばらば、関なみこ、BATIK(伊佐千明、大江麻美子、大熊聡美、政岡由衣子)

  • ルーシー・ゲリン「SPLIT」
    ルーシー・ゲリン
    「SPLIT」

    2018年10月3日(水)・4日(木)
    東京都 スパイラルホール

    振付:Lucy GUERIN

    音楽:SCANNER

    出演:Melanie Lane、Lilian Steiner

  • ラシッド・ウランダン「TORDRE(ねじる)」
    ラシッド・ウランダン
    「TORDRE(ねじる)」

    2018年10月6日(土)・7日(日)
    東京都 スパイラルホール

    コンセプト・振付:Rachid OURAMDANE

    音楽・演奏:松本じろ

    出演:Annie HANAUER & Lora JUODKAITE

  • 木野彩子 レクチャーパフォーマンス「ダンスハ體育ナリ?」(「其ノ一 体育教師トシテノ大野一雄ヲ通シテ」「其ノ二 建国体操ヲ踊ッテミタ」)
    木野彩子 レクチャーパフォーマンス
    「ダンスハ體育ナリ?」(「其ノ一 体育教師トシテノ大野一雄ヲ通シテ」「其ノ二 建国体操ヲ踊ッテミタ」)

    2018年10月6日(土)・7日(日)
    東京都 ゲーテ・インスティトゥート 東京

    「其ノ一 体育教師トシテノ大野一雄ヲ通シテ」

    構成:木野彩子

    出演:林洋子、木野彩子

    「其ノ二 建国体操ヲ踊ッテミタ」

    構成・出演:木野彩子

  • 小林勇輝「Chromosome」
    小林勇輝
    「Chromosome」

    2018年10月8日(月・祝)~10日(水)
    東京都 VACANT

    構成・出演:小林勇輝

  • BLUE TOKYO「DNAスペシャルパフォーマンス」
    BLUE TOKYO
    「DNAスペシャルパフォーマンス」

    2018年10月11日(木)・12日(金)
    東京都 草月プラザ

    振付・演出・出演:BLUE TOKYO

    インスタレーション:山田幸泉(いけばな草月流作家)

  • パウラ・ロソレン「Aerobics!- A Ballet in 3 Acts」
    パウラ・ロソレン
    「Aerobics!- A Ballet in 3 Acts」

    2018年10月13日(土)・14日(日)
    東京都 スパイラルホール

    コンセプト・振付:Paula ROSOLEN

  • 関連展覧会 山田幸泉
    「見えるもの・見えないもの」
    2018年10月3日(水)~14日(日)
    東京都 草月プラザ
  • 関連展覧会 草月アートコレクションと名作花器のいけばな展示
    「珠玉の赤と花の旋律」
    2018年10月3日(水)~5日(金)、10月10日(水)~12日(金)
    東京都 草月会館 2階談話室
  • 関連展覧会 小林勇輝
    「Life of Athletics」
    2018年10月7日(日)~14日(日)
    東京都 VACANT
  • ダンスフィルム
    2018年9月29日(土)~10月13日(土)
    東京都 シアター・イメージフォーラム
  • ダンスブックフェア
    2018年10月3日(水)~14日(日)
    東京都 青山ブックセンター本店
  • レクチャー+ダンス
    「『INTRODUCTION』―スタジオアーキタンツ アーティスト・サポート・プログラム―」
    2018年10月4日(木)、13日(土)
    東京都 港区立男女平等参画センター リーブラホール

    2018年10月4日(木)

    出演:青木尚哉、奥野美和

    2018年10月13日(土)

    出演:黒田育世、タシロリエ

  • 屋外パフォーマンス
    2018年10月7日(日)
    東京都 ワールド北青山ビル

    振付・演出:白神ももこ、岡本優

    出演:モモンガ・コンプレックス、TABATHA

  • 「ダンス保育園!!」
    2018年10月7日(日)
    東京都 ワールド北青山ビル エントランスホール

    講師・振付:篠崎芽美、SARO

    空間構成:永山祐子(建築家・デザイナー)

    参加アーティスト:ダンス保育園!!ダンサーズ ほか

    歌と演奏:国広和毅、ヒデロー ほか

  • ダンスショウケース
    2018年10月13(土)・14日(日)
    東京都 ショウケース(スパイラル1F)

    出演:中村駿、佐藤有華、久保田舞×今枝星菜、浜田純平、亀頭可奈恵 / tantan、田村興一郎

  • ワークショップ
    2018年10月5日(金)・2018年10月6日(土)
    東京都 スタジオアーキタンツ

    2018年10月5日(金)

    講師:ルーシー・ゲリン

    2018年10月6日(土)

    出演:ラシッド・ウランダン

  • ワークショップ
    「日常から離れて、自分の身体に向き合うボディエクササイズ」
    2018年10月12日(金)・13日(土)
    東京都 THREE AOYAMA

    講師:尾形直子、楠美奈生

  • トーク
    「振付家 ラシッド・ウランダンを迎えて」
    2018年10月4日(木)
    東京都 アンスティチュ・フランセ東京 エスパス・イマージュ

    登壇:ラシッド・ウランダン ほか

  • トーク
    「アフォーダンスの効用(ききめ)第1部 イントロダクション・トーク」
    2018年10月13日(土)
    東京都 VACANT

    登壇:杉山至(舞台美術家)、白井剛(振付家・ダンサー)、小林勇輝(芸術家・パフォーマンスアーティスト)

菅原小春×黒田育世×奥山ばらば
左から菅原小春、黒田育世、奥山ばらば。

ダンスそのものを作品にした「ラストパイ」

──「ラストパイ」の初演は2005年。02年にBATIKが旗揚げされ、「ラストパイ」は黒田さんが初めて外部に振り付けた作品として注目を集めました。当時、どのような思いを込めて作られたのでしょう?

黒田育世 「ラストパイ」の前に「SIDE B」(02年)、「SHOKU」「花は流れて時は固まる」(04年)があり、旗揚げからダダッと3作品作ったんですね。踊りたくてしようがなくてダンスをやってきたのに、その3作品を作ったところで意味に縛られて、踊れなくなってしまって。例えば上手から下手へ横切るにも意味がないとできないと思ってしまったんです。その縛りから解放されたい、意味から距離を置きたいと思い、ダンスそのものを作品にしたいと思って作ったのが「ラストパイ」でした。

──「ラストパイ」の直前には、松本じろさんの音楽で黒田さんが一心不乱に踊り続ける「モニカモニカ」(05年)もありました。

黒田 「モニカモニカ」は「ラストパイ」を作るために作った、松本じろとのセッションですね。

──あまりの激しさに、途中で黒田さんが倒れてしまうのではないかと思い、観ながら涙が湧き出したことを覚えています。その「モニカモニカ」が「ラストパイ」という新たな作品へと展開したわけですが、Noismで上演されたのちしばらくはレパートリーワークショップという形で上演され、本公演の機会はありませんでした。そこには何かこだわりが?

黒田 まったくなくて、まず初演から5年間は私に著作権がなかったんです。10年に戻ってきて、再演できればしたかったんですけど、なかなか日本のこういうジャンルのダンスでは資金を集めることが大変で、また(女性ダンサーだけの)BATIKでやるには男性ダンサーを呼んで来なければいけなかったので、それらが現実的に難しかったというのが正直なところですね。

──では再演への思いはずっと持っていらしたんですね。

黒田 理想ですね。「ラストパイ」に限らず、私は絶対に再演をしたいタイプなので、どんな形ならできるかを考えて考えて、その苦肉の策がレパートリーワークショップ(黒田のワークショップを数日間にわたり受講したメンバーでBATIKのレパートリー作品を踊るプロジェクト)という形態だったんです。でもやってみたら素晴らしい経験になりました。踊ったことがない方が異常な輝き方をしたりと毎回奇跡が起こって。本当にやってきてよかったです。

──上演を重ねる中で見えてきた作品の“核”はありますか?

黒田 私にとってこの作品は“ご褒美作品”で、2週間半くらいでできてしまった作品なんです。それと初演時に、それは金森穣さんのおかげですけれど、ある程度のものが掴み取れていた。作品が勝手にやってくれるようなところがあるので、上演を重ねる中で改めて、ということはなかったです。ただワークショップを重ねることで、こういう人がこんなふうに輝くのか、そんな能力を持った作品なんだ!ってことを感じました。