インタビューから生まれるダンス、「ダンステレポーテーション」
──「つくる、そだてる、あつまる、むすぶ」をベースに各プロジェクトが立ち上がっていったというお話でしたが、現在発表されている8・9月の12個のプロジェクトを、その4つに分類していただき、それぞれお話いただけますか? 実は分類シートをご用意したのですが……。
わ、本当だ(笑)。各プロジェクトを4つのカテゴリーに分けていくんですね? (作業しながら)でも、カテゴリーを跨ぐものも多いんですよね……。
──ありがとうございます。ではまず「つくる」から教えてください。「つくる」には「『ダンステレポーテーション』展 ~時空を超える振付、浮遊する言葉と身体~」が入りました。
「ダンステレポーテーション」は山﨑広太さんとの新たなプロジェクトです。もともとはオープニング企画として、山﨑さんが振付ディレクションを務める「都市のなかの身体遊園地」を上演予定で、“都市を振り付ける”をテーマに、オーディションで選出したダンサーたちとサイトスペシフィックな作品を創作するつもりだったんです。いわゆる、街の中で行われることの多い祝祭的なパフォーマンスではなく、身体と都市との対話を試みることでダンスを拡張するプロジェクトでした。ただコロナによって山﨑さんがアメリカから日本に来ることができなくなってしまったため、どうしたらクリエーションを継続できるか、オンラインでみんなで話し合いました。その結果、山﨑さんが各ダンサーにインタビューを行い、そこから生まれたテキストにダンサーが身体で応答する、というやり方をとることになって。
山﨑さんのテキストは、インタビューから受けた各ダンサーのイメージをつづったもので、具体的な振りが書いてあるわけではないんですけど、11人のダンサーはテキストに映像や写真、音などで返答していて、それぞれとても面白いものになりました。そのやり取りを、例えば1本の動画にして公開するという方法もあるとは思いますが、場所と時間を超越した、オンラインという場で作られたダンス作品をDaBYに戻すという意味とそのプロセスを一緒に感じられるように展覧会形式で見せたいなと思ったんです。しかも当初はDaBYの中だけを予定していたのが、1階のエントランスや隣の棟の別スペースにも展示スペースを設けることになりました。さらに「パフォーマンスもやりたいね」という話も持ち上がっていて、ダンサーたちが作品を送ってくれてからわずか3週間くらいのうちに、どんどんプロジェクトが展開されています(笑)。
──本当ですね(笑)。展覧会の前夜祭として8月6日に開催されたTRIAD INTERMISSION vol.1「『ダンステレポーテーション』展 ~時空を超える振付、浮遊する言葉と身体~」オープニングトークは、「つくる」と「あつまる」の境界線に置かれました。
展覧会は、このプロジェクトの複雑なプロセスが一見してわかるように、DaBYの空間設計をしていただいた建築家であるオンデザインの一色ヒロタカさんに展覧会の空間構成もお願いして、一緒に展示方法を考えていきました。時空を超えた創作活動はそれぞれの自宅で大変孤独に行われていったので、それぞれのアーティストが何に触発されて、どのようにして創作を行っていたのか話を伺う場としてトークイベントを実施しました。
そしてさらに、山﨑さんの言葉による振付が、ダンスアーティストの作品へとテレポーテーションしたように、次にその作品へのリアクションとして、身体的な応答のインスタレーションパフォーマンスの場を作ることにしました。
このようにしてこのプロジェクトは当初の意図を超え、常に現在進行形で進行しており、最終到達点がどこにあるのか、私も山﨑さんにもわからず……(笑)。すでに個人の表現という範疇を超えて、匿名性さえ帯びてきていますし、ここからさらにまた別の誰かと身体との対話が生まれていくとよいなと思ってます。
TRIAD INTERMISSION vol.1「『ダンステレポーテーション』展 ~時空を超える振付、浮遊する言葉と身体~」
2020年8月7日(金)~9月13日(日)10:00~18:00
休館日:日曜日・月曜日
※最終日の9月13日(日)は開館
振付ディレクター:山﨑広太
ダンスアーティスト:岩渕貞太、小暮香帆、小野彩加、金子愛帆、木原萌花、久保田舞、栗朱音、ながやこうた、幅田彩加、望月寛斗、横山千穂
オープニングトーク
2020年8月6日(木)※開催終了
登壇者:山﨑広太 / 小暮香帆、金子愛帆、木原萌花、久保田舞、幅田彩加、望月寛斗、横山千穂 / 唐津絵理
ファシリテーター:吉田拓
インスタレーションパフォーマンス
2020年8月16日(日)※開催終了
出演:小暮香帆
2020年8月28日(金)
出演:小暮香帆、久保田舞、栗朱音、望月寛斗
プロダンサーを多角的に支え、育てる
──続けて「そだてる」には、「個別法律相談会」のほか、プロのダンサーを対象にした「ProLab」を冠したプログラムが並びました。さらに「そだてる」と「むすぶ」の境界線上には、先ほどお話に上がった鈴木竜さんを中心とした「DaBYコレクティブダンスプロジェクト新作トライアウト」が入っています。
竜さんとのプロジェクトには、音楽、建築、ドラマトゥルク、映像などの、ダンス以外のさまざまなジャンルの若手がクリエイターとして携わっていて、実は半年以上前からコンセプトワークなど、一緒にリサーチ活動を行ってきています。そうした状況の中で、コロナの問題が発生して、テーマについてももちろん影響されることは少なくないでしょうね。
狭いダンス界を開いていくには、ダンスの世界が、他ジャンルの若い方に興味をもってもらえるような存在になる必要があると思っています。バレエ・リュスでピカソ、ストラヴィンスキーやシャネルがバレエに傾倒して、惜しみなく共に創造活動を行っていたように。またクリエーションを行うだけでなく、ここで生まれた作品が、例えば、私の勤める愛知県芸術劇場などのほかの劇場で上演されるといった形で、連携していきたいと思っています。さらに「ProLab」受講者の若いダンサーの中から、小㞍さんや竜さん、あるいはここでレジデンスするさまざまなアーティストの作品に出演するような方が出てくれたらいいなと思います。
「個別法律相談会vol.1」
2020年7月31日(金)※開催終了
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DaBYを開放し、ダンスファンを集める