“結束バンドらしい”4人が熱くライブ!守乃まも×大竹美希×小山内花凜×大森未来衣×山崎彬が語る、LIVE STAGE「ぼっち・ざ・ろっく!」

「まんがタイムきららMAX」(芳文社)で連載中の、はまじあきによる4コママンガ「ぼっち・ざ・ろっく!」と、そのテレビアニメを原作としたLIVE STAGE「ぼっち・ざ・ろっく!」が、8月に上演される。主人公は、話し始めるとき必ず「あっ」と言ってしまうほど人見知りで陰キャの高校生、“ぼっちちゃん”こと後藤ひとり。友達が1人もできないまま高校生になった彼女が、バンド「結束バンド」のメンバーになり、ひとりぼっちだった日常から大きく変化していく……。

ステージナタリーでは、舞台版で脚本・演出を担う山崎彬と、オーディションで選ばれた結束バンド役のキャスト4名の座談会を行った。引っ込み思案で妄想の世界に入り込みがちなギターの後藤ひとり(守乃まも)、結束バンドの頼れるリーダーにしてドラムの伊地知虹夏(大竹美希)、常に金欠で少し浮世離れしたベースの山田リョウ(小山内花凜)、笑顔が“キターン!”と輝く陽キャのギターボーカル、喜多郁代(大森未来衣)。「キャラクターと重なる面がある」として選ばれたキャストは、山崎と共に本作にどのように取り組んでいるのか? 彼女たちの楽器演奏の原点や、音楽を通じて感じた人とのつながりについても聞いた。

なお特集後半には、LIVE STAGE「ぼっち・ざ・ろっく!」の音楽監督を務める楠瀬拓哉、音楽コーディネートを手がけるKubotyからのコメントも掲載している。

取材・文 / 中川朋子撮影 / 玉井美世子

守乃まも×大竹美希×小山内花凜×大森未来衣×山崎彬
座談会

オーディションで出会えた、“結束バンドらしさ”を持つ4人

──LIVE STAGE「ぼっち・ざ・ろっく!」では、キャストオーディションが行われました。山崎さんは、結束バンドを演じるキャストの皆さんのどういうところに、キャラクターの要素を感じていますか?

山崎彬 舞台化のお話をいただいたときから、「結束バンドのメンバーはオーディションで決めたい」と製作側の方から伺っていました。僕も初期からキャストの選考に参加し、本当にたくさんの方にお会いして。キャラクターの印象が強い作品なので、キャストを選ぶには楽器の演奏スキルだけではなく、ご本人とキャラクターがどれくらいリンクしているかが大切だと思いました。当然演技をするわけですから、キャラクターとまったく違う素顔を持つ人でも演じられるとは思います。でも結束バンドらしい個性を出すために、そのキャラクターっぽさがどれほど素で感じられるかも重視しました。そうしたらたまたま、見事にキャラクターと重なる一面を持つ4人に会うことができたんです。

(守乃)まもちゃんはシャイで、こちらの目を見ないけど見ようとはしてくれていて、でもやっぱり目は合わなくて……というところにぼっちちゃんらしさがあります(笑)。虹夏役の(大竹)美希ちゃんはドラムの演奏技術がすごい。それにお姉さんの影響でドラムを始めたという経緯や、明るくみんなを見守る雰囲気が虹夏のようだなと思います。(大森)未来衣ちゃんはすごく明るい子なんですけど、コンプレックスをちゃんと抱えてそうなところが喜多ちゃんっぽいなと感じました。(小山内)花凜ちゃんは……初めて話したときはクールなふりをなさっていて(笑)。でも打ち解けてくると、ちょっと抜けていたり、天然なところが見えてくる。その意外性がリョウみたいで面白いです。こういう風に、僕がイメージしていたキャラクター像と近い雰囲気を持つ皆さんと出会えた。必ずしも演技経験があるキャストばかりではありませんが、むしろキャラクターとリンクしているところさえあれば大丈夫だなと思って、「ぜひ出演してほしい」とお願いしました。

左から小山内花凜、大竹美希、守乃まも、大森未来衣、山崎彬。

左から小山内花凜、大竹美希、守乃まも、大森未来衣、山崎彬。

──初舞台の守乃さん、同じく初舞台でモデル経験が長い小山内さん、ドラマーとして活動しつつ舞台経験もある大竹さん、そしてミュージカルを中心に出演している大森さんと、異なるバックグラウンドの4人が集結しましたね。先ほどの写真撮影では、皆さんとても和気あいあいとしていました。お稽古がスタートして1週間ほどだそうですが(編集注:取材は7月中旬に行われた)、稽古場の雰囲気はいかがですか?

小山内花凜 いつもすごく和やかで、笑いが絶えません。さっきの撮影もにぎやかでしたが、毎日ああいう感じ(笑)。私自身も楽しく稽古しています。みんなはどう?

大竹美希 同じくです! とても良い雰囲気で、皆さんが優しいので私ものびのびとしています。

大森未来衣 山崎さんもキャストの皆さんも一緒にいろいろ考えてくださるので、みんなで舞台を作れる感じが楽しいですね。

──守乃さんはいかがですか?

守乃まも あっ、えっと……もう、良い人しかいなくてありがたいです。人がたくさん集まると、1人くらい近付きがたくて怖い人がいるときがあると思うんですよ。私はそういう人がいると、憂鬱になってその場に行けなくなるタイプなんですけど……今回は全然そんなことがないので、「ありがとうございます」という感じです。

守乃まも

守乃まも

山崎 まもちゃんはキャラを作っているとかではなく(笑)、本当に普段からこういう感じなんですよ。まもちゃんの「あっ」とか「……」は、ぜひ原稿に残してくださいね!

一同 (笑)。

山崎 本格的に稽古が始まる前に、皆さんにはバンド練習や演技のワークショップ、ボイストレーニングに取り組んでもらいました。“結束”する時間があったから、4人にとっても自然に稽古が始まった感じがするんじゃない?

大森 わかります。リアルに結束バンドみたいだなと思ってみんなと接しています!

小山内 本当にそうだよね。こんなに素の自分でみんなと仲良くなれるとは思いませんでした。稽古前にバンド練習をみっちり4日間やったことで、すごく結束力が高まりましたね。あの時間はすごく大切だったなあと思います。まもちゃんも楽しかった?

守乃 はい、楽しかったです……!

山崎 良かった!

イマジナリーフレンド・ギタ男も登場、暴走するぼっちちゃんの妄想をアナログな手法で具現化

──「ぼっち・ざ・ろっく!」の原作は、可愛い絵柄の4コマの中に時折挟まれるカッコいい大ゴマが印象的です。またテレビアニメ版では、ぼっちちゃんの妄想が暴走したときに突然イマジナリーフレンドが現れたり、実写映像が使われたりするという、インパクトのある演出が用いられていました。山崎さんは、原作やアニメ版のエッセンスを舞台版にどう取り入れようと思われていますか?

山崎 舞台版のオファーをいただいたとき、スタッフの方からは「自由に作ってください」と言っていただきました。でも僕は原作ものを舞台化する際、原作やアニメファンの方々がその作品を観たときと同じ気持ちを、舞台版を観た方にも感じてもらえるように作りたいと思っています。僕が「ぼっち・ざ・ろっく!」の原作とアニメに触れて感じたのは、ぼっちちゃんを中心にみんなが成長する物語だということ。またライブシーンは本当にカッコいいですが、全体的にはコミカルです。原作とアニメから感じたものをそのまま舞台に乗せたいなと思いました。

舞台では、ぼっちちゃんという主人公を中心に、ほかの結束バンドのメンバーや、作中のいろいろなキャラクターを演じる“ぼっち~ず”の皆さんを総動員し、ぼっちちゃんが見ている世界をステージ上にどんどん物理的に出したいです。作中ではキャラクターが学校、ライブハウスなどいろいろな場所に移動します。LIVE STAGE「ぼっち・ざ・ろっく!」では、ぼっちちゃんがギターを弾いていた押し入れの中から何も移動していないように見えて、実は世界が広がっていて……という見せ方を、映像ではなくアナログな手法で行えたらなと。アニメの演出を人力で再現したり、生演奏と生歌唱を披露したりできるのは舞台ならではの強み。ラストのライブシーンに向けてボルテージを高め、最後はお客様に、本当に結束バンドのライブを観に来たような気持ちになってもらえたらうれしいですね。

山崎彬

山崎彬

──舞台の登場キャラクター欄を観ると、ぼっちちゃんの妄想の中のイマジナリーフレンド・ギタ男の名前もありますね。

山崎 今回はぼっちちゃんのイマジナリーフレンドや、妄想の中の人物を演じる“ぼっち~ず”キャストのほうが多いくらいです(笑)。“ぼっち~ず”には、僕が過去にお仕事でご一緒した方や、舞台で弾けてくれそうな方に集まってもらいました。稽古場では、結束バンドのメンバーを大人たちが「自由にやれよ」って見守ってくれている感じ。リョウはクールキャラなので笑っちゃいけないんですが、本当は見えないはずのイマジナリーフレンドが見えたようで、笑いすぎてシーンが止まったことがあって……。

小山内 皆さん、本当に面白くて!(笑) 今のうちに慣れておかないといけないなと思っています。

山崎 “ぼっち~ず”には「特にセリフはないけど、ご自由にどうぞ」みたいなシーンもあります。そこも見どころですね(笑)。

ガールズバンド、憧れの姉たち、「サウンド・オブ・ミュージック」、THE BLUE HEARTS…四者四様の原点

──山崎さんのお話にあったように、今回は結束バンドの生演奏、生歌唱も楽しみです。皆さんはキャラクターのどういうところを大切にしながら、役を演じ、かつ演奏しようと思っていますか?

守乃 私は……あの、普段からあまりぼっちちゃんと変わらないので……。

一同 (笑)。

守乃 だから特に意識することはなさそうですが、ぼっちちゃんがカッコいいところはカッコよくやりたいなと思っています。ぼっちちゃんはギターなので演奏中にあまり動かないですし、私もギターを弾きながら身体を動かしたり、モニターや機材に足をかけたりするタイプの人ではないので……ありがたく演じさせていただきます(笑)。

大森 喜多ちゃんは、アニメ8話のライブシーンのときはギターを始めたばかりの初心者で、一生懸命がんばっています。私自身もそんなにギターが上手なわけではないし、そういうところが喜多ちゃんとリンクしています。あのとき喜多ちゃんの中では「演奏が楽しい、がんばりたい!」という気持ちと、「でもちゃんと弾けるか不安だな」という気持ちが入り混じっていたはず。その感情は私と同じなので、そこを思い切り出しながらお芝居も演奏もやっていきたいです。

大森未来衣

大森未来衣

小山内 リョウは気持ちが表情に出にくいキャラクターですが、内面にはベースや音楽に対する熱さがあるなと感じます。実際に曲を聴いてみると、ベースラインの動きがなんだか楽しそうで。顔には出ないけど、リョウのそういう心を大切にしながら演奏したいですね。

大竹 私は普段ドラムを叩くときは音だけに集中しているので、見た目は気にせずずっと下を向いていることが多いです(笑)。実際に結束バンドのライブシーンをみんなで練習してみたら、演じながら叩くのはすごく難しくて、「見られている」と思うと神経を使います。でもそのライブシーンこそが見どころなのでがんばりたいですね。アニメ版のライブシーンでは虹夏が焦ってドラムのリズムが走ったり、ヨレたりします。そこまで再現するかわかりませんが、虹夏の心境の変化を、表情とドラムの音に乗せられたら良いなと思います。

──アニメ「ぼっち・ざ・ろっく!」の冒頭では、中学生のぼっちちゃんがテレビのインタビューで「バンドは陰キャでも輝ける」と聞き、父親のギターを借りたことで物語が始まります。キャストの皆さんが楽器の演奏を始めることになったきっかけは何ですか?

小山内 私は2013年から2016年まで、事務所のメンバーと一緒にガールズバンドをやっていました。ベース担当になったのは、そのバンドを組むときに「身長が高いからベースが似合いそう」と周囲に言われたからです(笑)。その頃からガールズバンドやバンドサウンドがすごく好きだったので、楽しかったですね。でもバンドが解散してからは、糸が切れたみたいにあまり楽器を触らず……今回のオーディションのお話をいただいて、久しぶりに演奏しました。そしたらやっぱり楽しくて、「音楽って良いな」と改めて気付けた。すごく感謝しています。

小山内花凜

小山内花凜

大竹 私は末っ子で姉が2人いるのですが、1番上の姉がギターボーカル、2番目の姉がベースをやっていました。小さいときはずっと2人が出るライブを観ていましたし、私はお姉ちゃん大好きっ子で、小学生のとき「私がドラムを叩ければ、お姉ちゃんたちと一緒に演奏できるかも!」と思ってドラムを始めたんです(笑)。当時は3人で一緒に演奏することもあったのですが、あるとき姉たちがずっと続けていたバンドを辞めてしまいました。私は子供の頃、友達に自慢しちゃうくらいステージに立つ姉たちが大好きだったから、すごく寂しくて。虹夏にも元バンドマンのお姉さん・星歌がいますが、虹夏も星歌がバンドから引退してライブハウス・STARRYを始めたときもこういう気持ちだったのかなって。私も姉たちへの思いを大切に演じたいなと思っています。

大竹美希

大竹美希

大森 私がギターを始めたきっかけは、映画「サウンド・オブ・ミュージック」でマリア先生がアコースティックギターを弾くのを観たことでした。それにおじいちゃんがギター好きで、小さい頃からよく演奏を聴いていたのもあって。「アコギやってみたいな」と軽い気持ちで始めたのが小学生のときです。それからはずっと趣味でアコギを弾いていて、エレキギターは今回オーディションを受けるために初めて触ったので、「こんなに違うんだ!」と驚きでした。

守乃 私の実家には、日曜日に音楽を聴きながらみんなでご飯を食べる習慣があって、両親の好きな山下達郎さんやビートルズ、ジャック・ジョンソンとかがよく流れていました。お父さんはイーグルスっていうバンドも好きで、特に「ホテル・カリフォルニア」がしょっちゅうかかっていて。これは12弦ギターを使ったギターソロがめっちゃ長い曲で、いつも聴いているから家族みんな覚えちゃったんです。それで小学3年生のとき、なぜか親からその「ホテル・カリフォルニア」のタブ譜を渡されました。でも当時はギターを触ったこともなかったですし、弾けるわけないじゃないですか。そのときにアコギとエレキを初めて触ったけど、案の定できなくてそのときは「もういいや」と思って終わりでした(笑)。で、そのあとはお兄ちゃんの影響でいろいろ音楽に触れていたんですけど、小学6年生のときに兄がTSUTAYAでTHE BLUE HEARTSのアルバム「SUPER BEST」を借りてきたんです。「これは……エグい!」と思って大ファンになって、そこからはずっとTHE BLUE HEARTSの曲をコピーしてました。あの頃は毎日、朝起きたらギターを弾いて、家に帰ってきたらギターを弾いて、っていう繰り返しで、人生で一番ギターが上達した時期だったと思います。

一同 へえー!

──守乃さん、音楽の話題になるととても生き生きとされていますね!

守乃 あっ、ありがとうございます……なんかすみません……。

一同 あははは!