「Bridges to Babylon」コンドルズメンバー座談会&ワークショップレポート|やりたいことやって生きようぜ!180人のユニゾンと共に架ける“橋”

見どころは、180人のユニゾン

──今回は豊島区民はじめ一般の方々が出演するということが大きな見どころです。当初の予定より大人数が出演することになったそうですね。

左から勝山康晴、近藤良平、香取直登。

近藤 最初はね、30人くらいの予定だったんですけど、どこかのタイミングで人が増えてきて、180人になって。でもよく考えると落とす理由もないので、それなら全員参加しない手はないだろうと。参加者の中には、純粋にこけら落としに賛同している人もいると思うけど冷やかしの人もいるだろうし、でも両方OKだと思うんですよね。で、これまで何回か一緒に練習をしてるんですけど、意外とみんな、この出来事を純粋に面白がってくれてて。「本番が待ち遠しいなあ」と思ってくれているので、やっぱりいっぱい受け入れてよかったなと思ってます。

勝山 一応、「We are Open」っていうのが結成のポリシーなので(笑)。ただ博多座で市民参加型の作品をやった経験はデカいですね。2018年に「FLY AGAIN」、今年「WE ARE THE CHAMPIONS!」をやったんですけど、今年の参加者は140人だったんですよ! 140人のユニゾン、意外とできたなって実績があったので、良平さんの視点とは別に、運営的にも180人ならできそう、と思ったところがあります。

──一般の方と踊るということについては、皆さんどんな気持ちですか?

香取 オープニングアクトだけじゃなくて、本編にも出てもらうことになって……。

近藤 そう、実は本編にも出演してもらうんですよ。

香取 それは想像がつかないので楽しみですね。180人と一緒にこけら落としに出るって最高だなって。

勝山 第九みたいだよね(笑)。

左から香取直登、ぎたろー。

ぎたろー 僕は博多座で140人のユニゾンを経験したんですけど、140人で難しい振りをやろうとなると、みんな個人練習をすごくやるんですよ。自分たちで稽古場を取って、1人踊れる人を連れてきて4人ぐらいのグループでそれぞれに練習している。そこで僕が踊れなかったら……と思うと、こちらにもプレッシャーがかかる。僕ぐらいだと、みんなライバル視してくるんですよね。

一同 あははは!

ぎたろー 直登が踊ってるときはみんな羨望の眼差しで見ているんです。好きすぎて「カッコいい」って泣き出す子までいたりして。でも僕には、(市民参加者が)ダメ出ししてきたりする。「ちょっと違いますよ」とか(笑)。でもそういうところがコンドルズのよさだと思うんですよね。みんながすごすぎると、みんなちょっと凹んじゃうから(笑)。あとなんせすごいのは、良平さんが絶妙に優しくて絶妙に怖いところ。たまに見捨てる瞬間があるんです。「そこまでしかやれないならいいや。後列に下げます」ってあっさり言うんですけど、そのときのみんなの愕然とした目が……! 同時に「やらなきゃ!」って燃えるんです。決して怒りはしないんだけど、良平さんは優しさと厳しさを持っている。博多座も結局、誰1人欠けずに公演できたんですよね。そういう切磋琢磨があると作品がよりよくなるので、今回も楽しみです。

黒須 僕は博多座も静岡も行かせてもらったんですけど、参加者の中にはダンスをやったことがない人もたくさんいるはずなのに、振付がえげつないと言うか(笑)、すごく難しいんですよ。でも140人で踊るってなると、そのうち80人が踊り始めたら「できない」って言えなくなって、「やらなきゃ!」って感じになる。さらにそれなりに踊れるようになってくると、今度は列の並びが気になってきて(笑)、「もっと前に行きたい!」って気持ちが相乗効果になって、日に日によくなっていくんです。

香取 自然とそうなるのが面白いよね。

左から黒須育海、勝山康晴。

黒須 あとね、さっきの話じゃないですけど、僕の場合は参加者の方々になぜか、「黒須さん、聞きやすいですー」とよく言われます(笑)。

勝山 コンドルズのメッセージは常にクリアで、ステージ上から「みんなやりたいことをやって生きていけばいい」ってことなんですよ。それを言い続けるのが僕らの大事な役割なんだけど、いつもはステージの上から一方的に言ってることを、今回は同じ舞台に立つ人たちにダイレクトに伝えられるし、その人たちが周りの友達や家族に「やりたいことやって生きようぜ!」って広めてくれるといいですよね。いつもより浸透力が高いはずです。

一同 あははは!

勝山 僕らなんて市民から3歩くらい前を歩いているだけですから、ダンスに限らず、それぞれ自分たちの好きなジャンルで僕たちに追いついてほしい。

コンドルズは今、チームワークが抜群

──今回、老若男女180人と舞台に立つわけですが、コンドルズ自体もさまざまなバックボーンを持ち、さまざまな年齢のメンバーからなる集団です。コンドルズのメンバーは、それぞれどのような関係性でつながっているのでしょうか。

香取 先輩たちとはやっぱり知っていることが違ったりするので、教えてもらうことが多いです。逆に同世代は共通して知ってることがたくさんあるけれど、好きなこと、趣味が全然違う。それぞれ突出してて、やっぱり変な人ばっかりで面白いなって思います。

黒須 僕は一番新人なんですけど、最初の1年は何をどこまで聞いていいかわからなかったんです。でもそれぞれダンス以外の得意分野があって、僕自身はそもそも興味なかったようなことも突っ込んでいくとすごく面白いなって思うことがあって。例えば勝山さんのライブに行ったり、古賀(剛)さんの仕事に関わったりしたときに「この人はこんな一面もあるんだ」とわかって面白い。

ぎたろー 団体行動を無理にしなくていいのがコンドルズのよさだと思いますね。稽古の最初にサッカーやバレーボールすることは強制されますけど(笑)。

香取 そこですか!

一同 あははは!

ぎたろー 海外ツアーで衝撃だったのは、オフの日の過ごし方が本当にバラバラで、サッカーを観に行きたい人、ホテルでプールに入りたい人、買い物に行きたい人ってそれぞれがやりたいことをやるんです。だから「今日は良平さんと一緒に過ごそうかな、明日はオクダさん……」という感じで、なんの派閥もないのがコンドルズの気持ちよさ。世代間の違いとかはあまり感じたことがないです。

──理想的な関係ですね。

ぎたろー ……今はいいことしか言ってないです。

一同 あははは!

左から黒須育海、勝山康晴、近藤良平、香取直登、ぎたろー。

近藤 最初は6人くらいだったのがどんどんメンバーが増えていって、同時に、例えば前は全員バイクで移動してたのがそうじゃなくなったり、携帯を持つのが当たり前になったり、やっているスタンスは変わらないけど勝手に時代のほうが変わっていってる感覚があって。そういう状況の変化によって集団のあり方が変わってきているとは思う。でもこの歳になると、小学校や中学校のように1学年の違いってそんなにないし、僕の世代の人と僕が考えてることも違うんじゃないかと思うし(笑)、僕の中ではそこに苦労はないです。なので作品を作るときも「じゃあ、ちょっと若いアイデア出してよ」とは言わないし。

勝山 あははは! それ、ちょっと言ってみたいね! 2016年のNHKホール(「20周年記念超特別大感謝公演」)以降、この2・3年のチームの状態がすごくいいんですよ。NHKホールの前には、2005年に我々がレジェンドになった渋公公演(「JUPITER」)があったんだけど、それを経験してるやつとしてないやつがいて、ここにいる3人は経験してない、“アフター渋公”なんです。でもいつかそういう、デカい山に登る経験をさせたいと思っていたのでNHKホールに勝負をかけたんだけど、がんばってくれて超満員になり、追加公演までできた。そのとき何かが共有されたんです。そこからのチームワークが抜群ですね。あとはLINEでやり取りするってことが確立されたことも大きい。今や稽古日程も小道具の制作も全部LINEでやり取りするんですけど、そういったシステムの刷新とチームワークが合致するようになって、楽になりました。

近藤 LINEは本当に大きいよね。中には「絶対LINEを使わない」って言ってたメンバーもいたけど。

勝山 若手とベテラン組のやり取りがスムーズになって、より作品に集中できるようになりましたよね。あと個人的に心がけてるのは、若者に合ってる曲を用意すること。ベテランたちがそういう曲を聴いて、「なんか昔の○○みたいだな」って言うのを聞くと、自分の昔の価値観で聴くなって思う。似てるけど違うから今の若者にウケるんだし、アーティストならなぜそこを勉強しないのかと。そういうことが大事だと思うんですよね、僕の中では。

左から黒須育海、勝山康晴、近藤良平、香取直登、ぎたろー。

──アーティストではありませんが、耳が痛いです。やはり、そんなフラットな関係性のコンドルズだからこそ、さまざまな参加者とクリエーションができるんですね。さて、本番まであとわずかとなりました。どんな初日になりそうでしょうか?

近藤 今、チラシを見ていて、「バビロン」が「Babylon」になって(Babyが入って)いるの、いいなって思った。今回の出来事は、そのときその瞬間にしか生まれないことになると思うので、本番までやれることをどんどん積み重ねていって、まだまだ発見していきたいし、改めて「扉を開けていこう」と思います。