ダンスの配信は、“生っぽさ”がキー?
──今回は配信も行われます。7月にライブ配信された、近藤良平(コンドルズ)×永積崇(ハナレグミ)「great journey 4th - online」の映像も手掛けた須藤崇規さんがスタッフに名を連ねています(参照:テーマはジャズ、近藤良平×永積崇「great journey」がオンラインで新展開)。
近藤 「great journey」は3月に公演する予定だったのがコロナの影響でできず、7月に配信することになったんですね。あのときは赤レンガの会場内や通路など、移動しながら撮影するとか、できるだけ生っぽさを感じられるように意識してやりました。面白かったですね。
──北尾さんも、7月にBunkamuraシアターコクーンからライブ配信された「プレイタイム」に参加された(参照:シアターコクーン初のライブ配信、森山未來×黒木華「プレイタイム」まもなく開幕)ほか、積極的にアクションを起こしていました。
北尾 やっぱり劇場で生で観る臨場感と配信では受け取り方が全然違うものになるとは思いますが、映像って時間とお金をかければいくらでもできることがあるし、配信はまだまだ掘りがいがあるなと思います。ただ、僕も生っぽさはキーになるのかなと思うので、どれだけ“同時性”を演出できるかはもっと模索していきたいです。
──お二人をはじめ、自粛期間中、ダンサーたちはネットを通じて本当に積極的にアクションを起こしていました。コンドルズでは新作ビデオダンス「I Want To Hold Your Hand」の配信(参照:コンドルズの“新作ビデオダンス”がYouTubeで期間限定配信)をされ、近藤さんご自身もTwitterで「こんどうさんのたいそう」(参照:近藤良平と一緒に!お家で実践“こんどうさんのたいそう”)を発信されたり、BaoBabはフルリモート公演「○○階から望む〜空想住宅編〜」の配信(参照:BaobabがWSから立ち上げるフルリモート公演「○○階から望む~空想住宅編~」)やオンラインレッスン(参照:Baobab・北尾亘がオンラインレッスン&創作ワークショップをスタート)をされたりと、積極的に取り組まれていました。
近藤 配信は、例えばカメラに向かって1人で踊るのと公演を収録するのとではかなり違うから、毎回そのことに左右される自分がいます。3月か4月頃に初めてZoomでワークショップをやったときはものすごく緊張しちゃって、普段対面だとほとんど緊張しないのに、「なぜこんなに震えてるんだ!」ってくらい、映像を通して何を伝えていいのか分からなくて不安になって。その思いは今でもありますけど、映像自体は好きでいろいろ撮り方を試してみたいので、もう少し勉強しないとなって。それと今、うちの娘のほうが映像が得意で教えてもらってるような感じで、映像から観る世界も、僕たちと若い子では捉え方がどんどん離れているような気もします。
北尾 僕は今桜美林大学で講師をしていて、その関係でオンライン授業の制作をすぐ始めたので、リモートでワークショップをやることに早い段階から好奇心を持って臨めたとは思います。その一方で、若い世代と接すると、YouTubeやTikTokの映像を観て振りを完コピすることにすごくなじみがあるようなんですが、僕は昭和生まれなので、そこにはちょっと抵抗感もあって(笑)。生身の身体がやることのカッコよさも知ってほしいなと思います。また映像に関して今僕がやってみたいと思っているのは、舞台の配信をもう一捻りできないかなってことなんです。例えばダンサーのライブの視点みたいなものを映像を通して共有できないかなと考えていて。
──それは、例えばダンサーがカメラを付けて踊る、というようなことですか?
北尾 ということなのか、あるいはダンサーがカメラをパスしながら踊っていて、それがもう振付の一部になっているとか……そういうシナリオや演出が浮かべばいいなって。今ドローンなどを使えばいろいろな視点からものを見せられるので、「視覚も踊れたらいいんじゃないかな」「踊ってる視点を描けないかな」と妄想してるんです。
近藤 面白いね、それ。今、映像を扱いながら思うのは、スイッチャーのセンスが問われるなってこと。視聴者がどこを観るのかはスイッチャーにかかってるし、逆に言えばスイッチャーがリズムをうまく拾ったりできれば、スイッチャーの視点が振付の一部と考えられるようになるんじゃないかなと。カメラマンももちろんだけどスイッチャーも大事ですよね。
北尾 そうですね。
「できない」を「できた!」に
──今回の「青空ダンス in 横浜赤レンガ倉庫」では、実際に会場で観る方と、配信でご覧になる方といらっしゃると思いますが、それぞれどんなところを楽しんでいただきたいですか?
北尾 生活の中で今、一緒に食事できない、マスクを外せないとか「できない」ことがあふれていますが、会場で、あるいはオンラインで「青空ダンス」を“観られた”“一緒に踊れた”という体験をしていただき、それが感動や楽しさにつながるといいなと思います。
近藤 そうだね。今回の「青空ダンス」では、こういう時期に人が集うとどれだけの力が持てるか、どのくらいの広がりが持てるかを面白がれたらいいなと思っていて。そういう意味では、リアルにダンスと遭遇することにすごく価値があると思うし、同時に「なかなか赤レンガ倉庫までは足が運べないな」って方にはぜひ配信を通して、ダンスと遭遇してもらえたら。会場に来てくれる方は、とにかく寒いと思うので、ぜひカイロを持って来よう!(笑)