第18回 AAF戯曲賞 篠田千明×鳴海康平×羊屋白玉×三浦基×やなぎみわ|5人の審査員が挑む「戯曲とは何か?」

愛知県芸術劇場プロデューサー…山本麦子インタビュー

2015年のリニューアルからAAF戯曲賞に携わり、審査会に立ち会ってきた愛知県芸術劇場プロデューサーの山本麦子。個性豊かな審査員たちの熱い議論を一番近くで目の当たりにしてきた山本に、AAF戯曲賞にかける思い、公開審査でのエピソードを語ってもらった。

愛知県芸術劇場プロデューサー・山本麦子

──山本さんは、AAF戯曲賞にどのような関わり方をされているのでしょうか?

事務全般を担当しています。応募作品を整理して、各審査員に送ったり、審査会の準備、当日は議事・進行などを行い、大賞受賞作品の冊子作成も行っていますね。また非公開の一次・二次審査会の後日レポートを作成してWebサイトに掲載するなど、記録を残すことも重要視しています。

──それまで14年続いてきたAAF戯曲賞をリニューアルするにあたり、大事にされたことを教えてください。

劇場が行う戯曲賞がどんな特徴を出せるのか?ということから、この戯曲賞は上演を前提としているので、上演に関わっている方、つまり演出的な視点で審査できる方にお願いしたかったんです。下読みなしで、100冊以上届くであろう戯曲を1から全部読んでいただきたい、とお願いして、OKしてくれたのが篠田千明さん、鳴海康平さん、羊屋白玉さん、三浦基さんでした。

──第18回からはアーティストのやなぎみわさんが審査員に加わりました。やなぎさんを招かれたのはなぜですか?

リニューアルした際に、まずは続けてみないとコンセプトが伝わらないのでは?という感覚で3年やってきて、新しい風が必要になってきたのかなと。やなぎさんは、写真、美術から演劇とボーダレスに活躍されていて、海外での活動も多いので、新たな視点を戯曲賞に持ち込んでくださるだろうと思いお願いしました。

──「戯曲とは何か?」というテーマは、リニューアル後に新たに掲げられたんですよね。

審査基準がどうしても曖昧なんですよね。話し合いながら賞を決める中で審査基準も見えてくることになる。そこで、そもそも「戯曲とは何か?」を掲げることで、一緒に考えたいという意思を打ち出しました。掲げてみたらいろいろな視点から「戯曲」が見えてきて、“最初は川だと思っていたら実は大海だった”くらい広くて深いものだということがようやくわかってきた、という感じです。

戯曲賞というのは、受賞者や受賞作品が注目されますし、それは重要な部分ではあるのですが、AAF戯曲賞は審査過程から上演までを1つのプロジェクトとして考えているんです。そのため、審査会での議論の過程をオープンにしたり、最終審査会を公開審査にし、インターネットでも生中継しています。議論や上演までの過程で生まれるもの、上演された作品が、どのように作家や関わったクリエイターにフィードバックされるのかなど、長い目で興味を持っていただけたらと考えています。

──山本さんご自身は、公開審査会をどのような場だと捉えていますか?

審査会は戯曲の優劣を決める場ではなく、演劇そのものについて、いろんな形で話し合える場だと思っています。

──これまでの公開審査会でスリリングだったエピソードを教えてください。

毎回がスリリングで、決まるのかな……どうなるのかしら?とハラハラしながら司会進行しています。第16回のときは篠田さんが印刷した戯曲を客席に配り始めて、お客さんを巻き込んで声を出して読んでいただいたこともありました(笑)。オーディエンスがいる公開審査だからできることを、審査員の方たちも考えてチャレンジしてくださっています。

──山本さんは“100年後も上演され続ける戯曲”とは、どのようなものだとお考えですか?

愛知県芸術劇場プロデューサー・山本麦子

誰かに「このテキストを上演したい」「するべき」と思わせる力を持っている戯曲が残っていくんだろうなと。上演ってものすごく労力がかかるので、それをしたくなるテキストを「上演したい」と思う人に届ける1つの手段が戯曲賞なのかなと思っています。

──AAF戯曲賞では、ワークショップや講座、受賞作上演後のシアターミーティングなど、観客が参加できる関連企画が豊富です。これらの企画はどういった狙いで催されているのでしょう?

あくまで劇場のプログラムとして考えているので、すべて戯曲賞のためだけに行っているわけではないのですが、戯曲賞やその公演を通して考えること、感じること、言葉にすることの機会になればうれしいなと。お客さんも含めていろんな形で一緒にクリエイトしていく場にしたい。劇場がそういう場であるために戯曲賞をやっているので、関連企画もいろいろな切り口で行うようにしています。

──最後に、AAF戯曲賞のこれからの展望をお聞かせください。

劇場のプログラムとして行われる戯曲賞に何ができるのか?を考えていきたいです。そして2020年がAAF戯曲賞の第20回目となるので、節目として何かできるといいなと思っています。

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