松本幸四郎が艶やかなダークヒーローに!「朧の森に棲む鬼」開幕「今年一番の刺激を受けに来て」

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歌舞伎NEXT「朧の森に棲む鬼」が、明日11月30日に東京・新橋演舞場で開幕。これに先駆け、本日29日に公開舞台稽古と囲み取材が同劇場で行われた。

歌舞伎NEXT「朧の森に棲む鬼」より。

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歌舞伎NEXT「朧の森に棲む鬼」より。

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中島かずきが作劇、いのうえひでのりが演出を担う「朧の森に棲む鬼」は、2007年に松竹と劇団☆新感線のタッグにより、松本幸四郎(当時は七代目市川染五郎)主演で初演された作品。作中では、ウィリアム・シェイクスピア「リチャード三世」「マクベス」と、源頼光とその家臣・四天王が大江山に住む鬼神・酒呑童子を退治する「酒呑童子伝説」の世界を融合させた物語が展開する。今回は同作が、“歌舞伎の新たなるステージ”を目指す企画・歌舞伎NEXTの第2弾として11・12月に東京・新橋演舞場、来年2月に福岡・博多座で上演され、幸四郎と尾上松也がWキャストで主演を勤める。

歌舞伎NEXT「朧の森に棲む鬼」より。

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舞台稽古で公開された第1幕では、主人公の盗賊・ライが、オボロの森に棲む魔物と契約し、将軍まで上り詰めるまでが描かれる。この日、ライを演じたのは幸四郎。障子状の幕には、鬱蒼と茂る森を彷彿とさせる木々がデザインされ、幕が開くと、そこにはエイアン国とオーエ国の争いにより、死んだ落ち武者たちの姿が。花道から現れた幸四郎扮するライは、大喜びで死体から金品を奪おうとするが……。幸四郎は、舌先三寸で天下を獲ろうとするダークヒーロー・ライを、自信に満ちた男として艶やかに立ち上げる。また、ライが魔物に与えられた“オボロの剣”を、幸四郎は最初は不慣れな様子で振るうが、ライの出世に伴い、剣さばきは徐々に華麗になり、第1幕後半の市川猿弥扮するマダレとの立廻りでは、スピーディな身のこなしで観客を圧倒。音楽はロックミュージックに加えて竹本が入り、ライの心情が太夫の語りで表現される場面も。ライの身分が上がっていくごとに、豪華になる衣裳にも注目したい。

歌舞伎NEXT「朧の森に棲む鬼」より。

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歌舞伎NEXT「朧の森に棲む鬼」より。

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歌舞伎NEXT「朧の森に棲む鬼」より。

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尾上右近演じるライの弟分・キンタは、頭脳派のライとは対照的に肉体派なキャラクターだが、今回の上演版では“硬派”を自称し、恋愛に興味を持たない青年に。右近は、満面の笑みを浮かべながら行うダイナミックな立廻りで、キンタの身体能力の高さを体現。市川染五郎は、オーエ国を治めるシュテン党の党首・シュテンを勤める。もともと女性の設定だった同役は、初演版では真木よう子が演じたが、今回の上演版では男性という設定に変更された。染五郎は、うら若き党首であるシュテンを、持ち前の端正な佇まいを生かし、ミステリアスに演じる。中村時蔵は、ライが殺したエイアン国の武将ヤスマサの妻で、検非違使の長・ツナを、理知的でクールな雰囲気の美女として立ち上げた。

歌舞伎NEXT「朧の森に棲む鬼」より。

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歌舞伎NEXT「朧の森に棲む鬼」より。

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エイアン国の国王・イチノオオキミを、初演に続き勤めるのは坂東彌十郎。彌十郎は争いを好まない、おっとりとしたイチノオオキミをコミカルに演じ、緊迫感のあるドラマに笑いを足した。坂東新悟は、イチノオオキミの愛人・シキブを、コロコロと変わる表情で愛らしく表現。猿弥は、暗黒街のラジョウで盗賊たちを束ねる大悪党・マダレを、風格ある立ち居振る舞いで演じ上げた。また、この日エイアン国の武将・サダミツ役を勤めた松也は、派手に見得を切り、ライとは異なる悪の魅力を漂わせた。

歌舞伎NEXT「朧の森に棲む鬼」囲み取材より。

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中央左から尾上松也、松本幸四郎。

中央左から尾上松也、松本幸四郎。[拡大]

囲み取材には、幸四郎、松也、時蔵、新悟、右近、染五郎、アラドウジ役の澤村宗之助、ショウゲン役の大谷廣太郎、猿弥、ウラベ役の片岡亀蔵、そして彌十郎が出席。いずれも衣裳姿で現れた。幸四郎は「東京公演は、我々にとって今年最後の舞台となります。ぜひとも、今年一番の刺激を受けに、劇場に足を運んでいただければ」、松也は「憧れていた『朧の森に棲む鬼』のライを、幸四郎さんと一緒に勤めさせていただくことは本当にうれしい限りです。初日が近づいていくにつれて、気持ちも上がってきております。全力を尽くしますので、ぜひ熱気を感じに来ていただきたいです」とそれぞれあいさつをした。

中村時蔵(中央)。

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左から片岡亀蔵、坂東新悟、尾上松也。

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松本幸四郎と尾上松也による“冠攻撃”を受ける尾上右近(後方中央)。

松本幸四郎と尾上松也による“冠攻撃”を受ける尾上右近(後方中央)。[拡大]

松本幸四郎と尾上松也の冠で隠されてしまう尾上右近。

松本幸四郎と尾上松也の冠で隠されてしまう尾上右近。[拡大]

時蔵は「私は、普段はあまり稽古が好きではないのですが(笑)、1カ月という『朧の森に棲む鬼』の稽古期間はとても楽しく過ごさせていただきました。とても面白く、刺激的な作品になっております」、歌舞伎NEXTの第1作「阿弖流為〈アテルイ〉」に続いての出演となる新悟は「前回もとても楽しく、勉強になりましたので、今回も出させていただけることを本当にうれしく思っております。精一杯盛り上げていきたい」と意気込みを述べる。右近は、囲み取材時中央後方に立っており、幸四郎と松也がそれぞれ被っている冠により、報道陣から顔が見えない状況に。その状況を面白がった幸四郎と松也により、右近の顔はさらに2人の冠で隠されてしまい、困った右近が「被り気味なんですけども!」と悲鳴を上げ、会場の笑いを誘う一幕も。右近は、幸四郎と松也の“冠攻撃”をかわしながら、「『朧の森に棲む鬼』は、僕が劇団☆新感線を知った初めての作品で、阿部サダヲさんが演じていらっしゃったこのキンタ役は大好きな役。この憧れの役を一生懸命勤めたいです」と思いを語った。

市川染五郎(後方中央)

市川染五郎(後方中央)[拡大]

坂東彌十郎(右)

坂東彌十郎(右)[拡大]

染五郎は、本作が十代最後の出演作となる。その気持ちを記者から問われると「年齢は意識していないのですが、シュテンは、今の年齢じゃないと出会えなかったかもしれないお役。そのこと自体は、すごく意味のあることだと感じています。父が染五郎時代に演じた作品に、私が染五郎となって出演させていただけるということも、うれしく思っています」と真摯に話した。彌十郎は「私は、自分のことをまだまだ若手だと思っていましたが、稽古を観ていると、本当に皆さん若くて元気なんですよね。立廻りができないことが寂しいと思っていましたが、稽古を観ていて、あまりの激しさに、自分は(立廻りが)なくてよかったと思っています(笑)。今回が9年ぶりの歌舞伎NEXTということで、第3弾、第4弾にも出演できるよう、体力作りをがんばりたい」と茶目っ気たっぷりにコメントした。

東京公演は12月26日まで。また本作は、来年2月4日から25日まで福岡・博多座で行われる。福岡公演のチケット販売は12月14日10:00にスタート。

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歌舞伎NEXT「朧の森に棲む鬼」

2024年11月30日(土)~2024年12月26日(木)
東京都 新橋演舞場

2025年2月4日(火)~2025年2月25日(火)
福岡県 博多座

スタッフ

作:中島かずき
演出:いのうえひでのり

出演

ライ / サダミツ(交互出演):松本幸四郎 / 尾上松也
ツナ:中村時蔵
シキブ:坂東新悟
キンタ:尾上右近
シュテン:市川染五郎
アラドウジ:澤村宗之助
ショウゲン:大谷廣太郎
マダレ:市川猿弥
ウラベ:片岡亀蔵
イチノオオキミ:坂東彌十郎

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