中村米吉の#カワイイは世界を救う? 第23回 [バックナンバー]
“藤”娘だけに藤まみれ!大役に挑む中村米吉、可愛すぎる衣裳を紹介
着物好き垂涎、米吉×藤娘ならではの帯も
2024年11月24日 19:00 8
「明治座 十一月花形歌舞伎」にて、昼の部「藤娘」にて藤の精、夜の部「鎌倉三代記」で時姫を勤めている
このコラムは、とろけるようにカワイイ米吉に、カワイイものを紹介してもらい、カワイイ×カワイイの相乗効果で、世界を救うことを目指している。明治座から藤の香りが漂う今月は、“藤娘カワイイ”! 「藤娘」では、米吉の無垢な雰囲気が際立つ、麗しく鮮やかな舞いはもちろん、早替りで魅せる、色とりどりの衣裳チェンジも見どころの1つ。そして米吉を支える“嫁吉”の、米吉×藤娘ならではの帯も登場する。
題字:中村米吉
歌舞伎独特の色使いで鮮やかに描かれた藤のカワイイこと!
優しく迎え入れ、恋に酔って決して離れない……。
何とも色っぽい雰囲気で始めてみましたが、これは藤の花の花言葉を1つの文章にしてみたものです。
正確には“優しさ”、“歓迎”、“恋に酔う”、“決して離れない”というのが藤の花言葉。
絡まるツルに、風に揺れる花弁の優しい色味をよく表した花言葉たちですよね。
季節外れな藤の花のお話をしたのは、現在私がその“藤”だから!
ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、私は今月は明治座において女方舞踊の名作「藤娘」を勤めさせていただいております。
“藤”娘だけに藤まみれのこの作品。
舞台中央の大きな松に絡むように、たくさんの藤の花が咲き乱れています。
衣裳にもたくさんの藤が。
着物も帯もみーんな藤! 歌舞伎独特の色使いで鮮やかに描かれた藤のカワイイこと!
この黒地に藤の衣裳から裏で引抜いて、朱色と鶸色の片身替りへ。
その後は藤色の衣裳へと着替えますが、その時の帯がこちら。
“ふじ”という文字を藤の花に見立てたおしゃれ可愛い意匠!
黒地にこのポップな色使いがビビットですね。
長唄の詞章にも「いとしと書いて藤の花」という文句があります。
これは“い”を“十(とお)”書いて、間に“し”を通すと藤の花のようになるという何とも洒落た言葉遊びですが、形がデザインしやすい上にそれが可愛らしいというのが藤の花の大きな魅力なんでしょうね。
最後は諸肌を脱ぎ、中のこれまた藤の刺繍がふんだんにあしらわれた襦袢をお目にかけて、幕となります。
衣裳だけでなく、鬘にも藤が。
目につく簪だけでなく櫛にまで藤があしらわれています。
客席からは見えないかもしれないのにこんな細部に至るまで藤でトータルコーディネートされているわけです!
こんなたくさんの愛らしい藤に囲まれまして、どうにか力をもらって日々勤めている「藤娘」芝居の外にも藤が……。
我が妻の後ろ姿です。
この帯は、今回のためにご縁ある呉服屋さんで誂えた品物です。
藤の中を蝶が舞っているのが可愛らしいですよね。
生地の色、藤の色味、下絵の段階から相談して作っていただきました。
季節外れではありますが、こうしてお芝居に因んだ着物姿を楽しめるのも歌舞伎見物の醍醐味かもしれません。
そういえば、藤の花言葉にはもう1つ“忠実”というのもありました。
是非、うちの妻にも“忠実”でいていたただきたいもので……。
え? こっちの台詞?
ひえー!
ごめんなさい!!!
プロフィール
中村米吉(ナカムラヨネキチ)
1993年、東京都生まれ。播磨屋。中村歌六の長男。2000年に中村米吉の名を襲名して初舞台。2011年から女方を志し、「鬼一法眼三略巻 菊畑」で皆鶴姫、「与話情浮名横櫛」でお富、「松浦の太鼓」でお縫、「仮名手本忠臣蔵 七段目」で遊女お軽、「絵本太功記」で初菊などを勤める。またアメリカ・ラスベガスで行われた歌舞伎興行では、2015年に「鯉つかみ」小桜姫役、2016年に新作歌舞伎「獅子王」白縫姫役で出演。2015年には「鳴神」の雲の絶間姫役の演技で十三夜会奨励賞、2021年には第42回松尾芸能賞で新人賞を受賞した。現在、東京・明治座での
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