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“朗読×音楽”をテーマにした「季節と朗読」は、俳優の
劇場に入るとまず、ステージ後方の壁に下げられた白い幕が目に飛び込んできた。舞台の上手側にはレトロな雰囲気の木製テーブルとイスが置かれている。また中央から下手側には楽器や周辺機器が設置され、ミゾベと森山の演奏スペースとなっていた。
開演すると、森山がポーン、ポーンと一定のリズムでピアノを鳴らし始める。すると舞台に藤原が姿を現し、静かに「斜陽」の物語を語り出した。没落貴族の娘・かず子が蛇の卵を燃やそうとする序盤のシーンでは、背後の白い幕にオレンジ色の照明が丸く当てられる。照明は夕日や、かず子が火に入れた卵を彷彿とさせ、かず子たちがこれから運命に翻弄されていくことを予感させた。
“朗読”と銘打たれている本公演で藤原は、台本を持たず、イスをテーブルの上に載せたり、テーブルを抱えて歩いたりと、時に身体を大きく動かしながらストーリーを紡いだ。藤原は劇中に登場するすべての役柄を、声色や立ち姿を変えながら1人で巧みに演じ分ける。はかない雰囲気を持つ母、「人間は、恋と革命のために生れて来たのだ」と、作家・上原への恋に焦がれるかず子、貴族として生まれたことに苦悩する直治、破滅的な生活を送る上原など、藤原は役柄によってまったく異なる表情を見せ、観客をグッと惹き付けた。
また、美しい演奏でキャラクターの感情をより色濃く浮かび上がらせる、ミゾベと森山のパフォーマンスにもぜひ注目しよう。ストーリーの区切りとなるシーンでは、ミゾベがギターを手に姿を現し、情感豊かに歌声を響かせる。また森山はピアノで、登場人物たちの心情に寄り添うかのように寂しげな音色を奏でた。
このたび出演者からのコメントが到着。藤原は「世界が急速に変わっていって、食べるものも欲望を刺激するものも捨てるほど溢れているのに、海の向こうでは戦争が起こっていて、何も変えることが出来ず『自分には何もない』と無力感に苛まれる現代において、物語が持つ役割とは何でしょう。恋するとは、革命とは、一体なんでしょう。没落する貴族の家庭において、たとえ全てを失っても負けずに闘うかず子の姿を、言葉を、今こそ蘇生させて届けたいと思います」と話す。
ミゾベは「4公演とも違った公演になるんだろうな。会場でお会いする皆さん、よろしくお願いします」、森山は「目の前で藤原季節さんの生の身体から発せられる『斜陽』の物語とのセッションを楽しみたいと思います。是非、この場で体験してください」とそれぞれ観客にメッセージを送った。
上演時間は約1時間30分。公演は明日11月21日まで行われる。
藤原季節 コメント
いよいよ「景秋」が開幕します。
今回は黄昏の秋の物語「斜陽」をお届けします。この数ヶ月「斜陽」と、そして太宰治と向き合ってきました。戦後世の中が変わっていく中で、古い道徳を押しのけ強く生きていこうとする娘・かず子に、強さを与えていただきました。反対に、世の中と闘う手段としてお酒ばかり飲んで、生きる悲しみに負けてゆく弟・直治や、小説家・上原にも僕自身の影を重ねて恥ずかしくなることもありました。
世界が急速に変わっていって、食べるものも欲望を刺激するものも捨てるほど溢れているのに、海の向こうでは戦争が起こっていて、何も変えることが出来ず「自分には何もない」と無力感に苛まれる現代において、物語が持つ役割とは何でしょう。恋するとは、革命とは、一体なんでしょう。没落する貴族の家庭において、たとえ全てを失っても負けずに闘うかず子の姿を、言葉を、今こそ蘇生させて届けたいと思います。
ミゾベリョウ コメント
初めて出演のお話をいただいたとき、一体どんな公演になるのか想像もつかなかったこの“季節と朗読”。
リハーサルや、それ以外の時間での季節さんとの会話。それらを通してこれは朗読でもあるけれど会場に来てくださったみなさんとの対話でもあるなと腑に落ちました。
それは僕たちが普段ライブハウスでの演奏を通してやろうとしていることと同じような気がします。
4公演とも違った公演になるんだろうな。
会場でお会いする皆さん、よろしくお願いします。
森山公稀 コメント
会場で通しのリハーサルを経て、「季節と朗読」とはこれほどまでに他のどこにもなく新しい体験なのだという驚きがありました。
目の前で藤原季節さんの生の身体から発せられる「斜陽」の物語とのセッションを楽しみたいと思います。是非、この場で体験してください。
皆さまのこれからの日々に、かすかに残り続けるような時間になれば嬉しいです。
「景秋」季節と朗読 byライブナタリー
2024年11月20日(水)・21日(木) ※公演終了
東京都 めぐろパーシモンホール 小ホール
スタッフ
企画・構成:
出演
藤原季節 / ミゾベリョウ(
児玉美月 Mizuki Kodama ・*☽:゚・⋆ @tal0408mi
藤原季節さんの朗読劇「『景秋』季節と朗読」を観劇してきました。太宰治の小説「斜陽」がこの儚い季節に新たに生命を与えられて、橙色に染まる舞台で迸る言葉のひとつひとつが心の奥深くまで迫ってくるようでした。人間は恋と革命のために生れて来た。公演は明日までです。
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